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ICC:弁護士選任でも 被害者支援を

ウガンダ「神の抵抗軍」の事案で問題が浮き彫りに

2017年09月04日 14時22分 JST | 更新 2017年09月04日 14時23分 JST

HUMAN RIGHTS WATCH

A community member in Lukodi stands next to a memorial of a May 19, 2004 massacre, one of the atrocities for which Dominic Ongwen is facing charges before the International Criminal Court. Over 4,000 victims are participating in the trial. ©2016 G. GT.

(アムステルダム) − 国際刑事裁判所(以下ICC)は、法廷で被害者を代理する弁護士を選ぶ際に、被害者の意見や望みを優先すべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。

報告書「誰が私たちに寄り添ってくれる?:国際刑事裁判所のオングウェン裁判ほかに関する被害者のための法的代理について」(全60ページ)は、現在進行中のある裁判における被害者のための弁護士選任方法と、法廷手続きをめぐるより広範な傾向を比較するもの。

ICCは被害者が裁判に参加する権利を認めており、弁護士が裁判で被害者を代理する。ICCの被害者参加制度は、国際刑事司法における重要な革新であり、残虐行為の影響を受けたコミュニティと法廷の間をつなぐ重要な役割を果たしている。

しかしICCの手続きは、被害者の法的代理を準備するか、するとしてどうするのかについて、被害者の意見が適切に考慮されることを保障するには十分でないことを、ヒューマン・ライツ・ウォッチの調べは明らかにしている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ国際司法プログラムのコロンビア大学法学院・公益および政府フェローのマイケル・アダムズは、「被害者がICCの裁判に参加できるという事実は、法の裁きが下されたと被害者たちが実感する一助になる」と指摘する。

「しかしICC関係者は、法廷で被害者を代理する弁護士を決定する際に、最善の被害者支援とは何かを今一度検討すべきだ。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、関連するコミュニティの人びと、NGOの代表者たち、ICC関係者に聞き取り調査を行い、係属中のドミニク・オングウェンの事案での弁護士選任についての諸決定など、ICCの判断を検証した。

オングウェン被告は、ウガンダの反政府武装組織「神の抵抗軍」(LRA)の元司令官で、2015年1月ICCに移送された。2016年12月から開始された裁判では、戦争犯罪および人道に対する罪で70の容疑が争われており、4,107人の被害者を2つの弁護団が代理している。

ICCの規定は被害者に弁護士を選ぶ権利を付与するものだが、裁判官は被害者団を代表する「共通法定代理人」1名を選ぶよう、被害者に求めることができる。被害者が弁護士を選任できない場合は、ICCがこうした法廷代理人を直接指名できる。

議論をよんだ2015年11月の判断では、オングウェンの事案を担当する予審裁判部が、ウガンダ北部の被害者の一部に指名された民間弁護団を裁判から外した。

その代わりに、ICCの主任弁護士が率いる弁護団を共通法定代理人として指名。その理由に、予算上の懸念と、民間弁護団の選任過程における透明性の欠如をあげた。

しかし、コミュニティが民間の弁護団を選んだ動機について言及することはなかった。ICCは民間弁護団が被害者を代理し続けることを認めた一方で、これら弁護士を代理にした被害者たちは、ICC指名の弁護士のみが弁護に適格と判断されたため、1年間、法的支援にアクセスがないままに取り残されてしまった。

近時にICCのその他の複数の事案で、被害者とのごく限られたコンサルテーションしかないまま、判事が共通法定代理人を指名した。効率的な代理ならびに時間や費用の節約の確保を目的とする2011年の方針が、弁護士選任過程で被害者の意見が軽視される理由の一つに少なくともあると思われる。

前出のアダムズ国際司法フェローは、「ICCの規定は、みずから選んだ弁護士への絶対的な権利を、被害者に与えるものではないかもしれない。しかし、その選択をかなりの程度まで保護するものではある」と述べる。「ICCは、被害者の選択に介入する際に、明確な正当性を示せるようなよりよい方針を必要としている。」

ICC締約国は予算削減に関して多大な圧力をかけており、かつ法的手続きの期間短縮も求めている。この圧力が法的手続きのデザインや、被害者の法的代理に関する方針、共通法定代理に関する判事の判断の要因となっているように見受けられる。ICCは現在、被害者支援を含むリーガルエイドの方針を見直している。

ICCの判事と事務局は、法的代理をめぐる決定が、被害者の選択を促進することを保障する明確な方針を定めるべきだ。弁護士を選任するための支援を被害者に提供する時期や、最後の手段として被害者の代わりに結論を出す時期についての基準を策定しなければならない。

各地域にある地元事務所を活用して、ICCの意思決定者が、被害者や影響を受けたコミュニティの懸念について必要な情報を確実に入手しているようにする必要がある。締約国は、ICCがこれらの政策を実施するために必要なリソースを有しているよう確保せねばならない。

アダムズ国際司法フェローは、「厳しい予算は、被害者との関係を損ない、かつICCの正当性を弱らせる危険のある決定にICCを追い込んでいる」と指摘する。「ICCと締約各国は、コミュニティでの地に足のついた関与と、被害者の法的援助を支えるのに十分なリソースの確保に努めなくてはならない。」

(2017年8月29日「Human Rights Watch」より転載)