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イラク:ISから逃れた人びと、組織的なレイプの様子を語る ヤジディ教徒の性暴力被害者へのケアが急務

2015年04月17日 15時54分 JST
2015 Samer Muscati/Human Rights Watch

IS部隊は組織的なレイプ、性的暴行などの恐ろしい犯罪行為をヤジディ教徒の成人女性と少女に行っている。運良く逃れることのできた女性たちには、そこで被った想像を絶するトラウマへのケアが必要だ。
リーズル・ゲルントホルツ、女性の権利局長

(ニューヨーク)過激派集団「イスラミックステート」(IS)はイラク北部で、ヤジディ教徒の成人女性と少女に組織的なレイプなどの性暴力を行っていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは2015年1月から2月にかけてドホーク市内で調査を行った。ISから逃れた成人女性と少女20人から話を聞き、この問題に関するISの声明を分析するなどした。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはIS部隊による組織的なレイプ、性的暴行、性奴隷、強制結婚のシステムを明らかにした。こうした行為は戦争犯罪だ。人道に対する罪に該当する可能性もある。被害に遭った成人女性と少女の多くは依然行方不明だ。しかし現在イラク・クルド人自治区にいる性暴力被害者(サバイバー)は、心理社会的支援などの援助を必要としている。

「IS部隊は組織的なレイプ、性的暴行などの恐ろしい犯罪行為をヤジディ教徒の成人女性と少女に行っている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの女性の権利局長リーズル・ゲルントホルツは述べた。「運良く逃れることのできた女性たちには、そこで被った想像を絶するトラウマへのケアが必要だ。」

IS部隊は、2014年8月にイラク北部のニーナワー県でヤジディ教徒の民間人数千人を拘束したと、クルド自治政府当局者とコミュニティの指導者は述べた。目撃証言によれば、兵士たちは若い成人女性と10代の少女を、捕虜にした家族などから組織的に隔離し、イラクとシリア領内を移動させた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが話を聞いた成人女性11人と少女9人は、2014年9月から2015年1月の間にISから逃れた。12歳の少女2人を含む半数が、複数のIS兵士によって何度もレイプされたと話している。ほぼ全員が強制結婚させられるか、場合によっては何度も売られるか、「贈り物」として誰かのもとに送られたと述べた。インタビューを受けた成人女性と少女は、自分たち以外が人権侵害を受けている場面を目撃もしている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは国際組織や現地のサービス提供者、医療スタッフ、クルド自治政府当局者、コミュニティの指導者、活動家10数人に話を聞いた。内容は彼女たちの証言を裏付けるものだった。ドホークで女性の性暴力被害者を診療したある地元の女性医師はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、診察した成人女性と少女105人のうち、70人がISに捕らわれている間にレイプされたと見られると述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが話を聞いた成人女性と少女全員に、感情面での激しい苦痛を示す兆候が認められた。多くが依然として家族の一部、あるいは全員と再会できていない。家族もまたISに殺されるか、依然としてISに捕らわれている。捕まっている間に自分で命を絶とうとしたことがあるか、レイプや強制結婚、強制改宗を逃れるために自殺しようとした人を目撃したことがあると述べた人が複数いた。

2014年10月、ISは自らの雑誌『ダビック』で、自軍の兵士がヤジディ教徒の成人女性と少女を捕らえた上で、「戦利品」として他の兵士に与えたことを認めた。ISは性暴力を正当化するため、イスラームは非ムスリムの少女を含む「奴隷」との性交渉だけでなく、そうした人びとを殴打し、売却することを認めていると主張する。こうした見解は、IS側がこうした行為を広範に実施しており、組織としての行動計画があることをいっそう裏付けるものだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

IS司令官は民間人の被拘禁者全員をただちに釈放し、子どもを家族の元に返し、強制結婚と強制改宗を停止するべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。また必要なあらゆる手段を講じて、IS兵士のレイプなどの性暴力を停止させるべきだ。ISに影響力を持つ国際および地元のアクターは、そうした行動を取るようISに圧力をかけるべきだ。

2014年にクルド自治政府は、ニーナワー県出身者だけで63万7千人を超す国内避難民を受け入れた。またISから逃れたヤジディ教徒の成人女性と少女に医療その他のサービスを提供するために多大な努力を払っている。しかし医療ケアには欠陥やギャップがあると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。ヒューマン・ライツ・ウォッチが話を聞いた人からは、検査を受けたものの目的も結果も伝えられなかったという声があがった。

ドホークの医療責任者はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、地元当局はISから逃れた成人女性と少女を150人も特定できておらず、うち治療を受けたのは100人程度に過ぎないと述べた。クルド自治政府のヤジディ教徒問題担当局長によると、2015年3月15日の時点でISから逃れたヤジディ教徒は974人で、うち成人女性が513人、子どもが304人だ。

こうした成人女性と少女にはトラウマに関する支援と継続的なカウンセリングが必要だと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。全員が傷の治療、緊急的な避妊措置、安全で合法な中絶手術、性と生殖に関する医療と心理社会的な支援をただちに受けられる状態にあるわけではない。

クルド自治政府当局は、ヤジディ教徒の成人女性と少女への医療ケアと心理社会的支援に関するギャップを埋めるとともに、医師が性暴力被害者に対し、本人が受診した検査の結果と利用可能なサービスに関する情報を、確実に提供するように務めるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。クルド自治政府はまた、レイプによって生まれた子どもへの支援計画を策定し、子どもと母親に対する十分なサービスと保護を提供すべきだ。さらにクルド自治政府は、女性の日常生活復帰支援のためと、雇用のための職業訓練を行い、生計維持策を提案すべきである。

「ISから逃れたヤジディ教徒の成人女性と少女は、一連の経験を通じて多大な困難に直面し、継続的なトラウマを抱えている」と、前出のゲルントホルツ局長は述べた。「健康を回復し、普通の生活を取り戻すには、ただちに援助と支援が必要だ。」

調査の詳細は以下をご覧下さい。
http://www.hrw.org/ja/news/2015/04/15

(2015年4月15日「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」より転載)