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シリア:学校への攻撃 生徒たちが危険に直面―子どもに対する尋問や逮捕

2013年06月20日 23時14分 JST | 更新 2013年08月20日 18時12分 JST

(この記事は、「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のサイトで6月6日に公開された記事の転載です)

(ロンドン)-シリア政府は生徒たちを尋問し、学生による抗議を暴力的に弾圧、さらには学校に軍事攻撃を加えている。政府軍と反体制派武装勢力の双方が、学校を軍事基地や兵舎、拘禁施設、狙撃拠点として使用している。これにより学びの場が軍事目標と化し、生徒たちが危険にさらされている。

報告書「もはや安全ではない:攻撃下にあるシリアの生徒と学校」(全33ページ)は、主にダルアー県、ホムス県、ダマスカス郊外県からシリア国外に脱出した生徒16人と教師11人を含む、70人超に対する聞き取り調査を基にしている。本報告書は、両陣営が学校を軍事利用している実態について調査し取りまとめたもの。加えて、教師と国の治安関係当局者が、反政府活動容疑をかけられた生徒たちを尋問したり暴行を加えた様子について、そして治安部隊と親政府民兵組織シャビーハが、いかに生徒たちの平和的抗議デモを襲撃したかについても詳述している。中には、軍事目的に利用されていなかった学校施設を政府軍が砲撃した事例も複数あった。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの子どもの権利局調査員で本報告書を執筆したプリヤンカ・モタパルシーは、「シリアの子どもたちは尋問され、標的とされ、そして攻撃を受けてきた。いかなる子どもも決して味わうべきではない戦争の恐怖に直面せざるを得ないのだ」と指摘。「学校は聖域であるべき場所。しかし、かつては学校教育を尊重していたシリアで、多くの子どもたちが基礎的教育さえも受けることができず、未来を失いつつある。」

シリアで残虐な内戦が始まって2年以上が経過し、子どもたちは数カ月から数年にわたる教育機会を逸している。国連児童基金(ユニセフ)によれば、シリアでは数千の学校が破壊・損傷を受け、暴力から逃れてきた人びとの避難所となっており、少なくとも5校に1校がもはや学校としての機能を果たしていない。さらに多くの学校が、戦闘員や軍の部隊のために場所を提供せざるを得なくなっている。

教師を含むシリア政府関係当局者が、ダルアー県、ホムス県、ダマスカス郊外県の6校で尋問や逮捕、一斉摘発を行った。これにより生徒たちは学校を恐れ、自宅を離れたがらない事態になってしまった。教師や学校職員が、生徒に政治的信条や反政府活動疑惑、さらには身内の反政府活動についても尋問。反政府活動に携わった生徒に暴行を加えた事例もいくつかあった。

2012年5月までホムスにある学校の4年生だったアブドゥは、父親が自宅で銃を保管しているかについてと、政府による人権侵害を報道するテレビ番組を家族が観ているかについて、数学教師から尋ねられたと話した。アブドゥの反政府デモ参加を知ったその教師は彼を校長の元に送り、校長はゴムホースで彼を5回殴ったという。

生徒や親、教師たちは、平和的なデモや行進に政府治安部隊と民兵組織が襲いかかり、時に発砲までしたのを目撃したと話した。中には生徒たちが負傷した事例も数件あった。「(デモが襲撃された時)地面に投げつけられたけど、何とか逃げられました」とダマスカス出身の少女ソマヤ(14歳)は話す。「私たちを撃ってきたんです。ある子は手を撃たれて・・・・・・。みんな走って逃げました。」

シリア軍は、戦闘地域で軍事目的として利用されていない学校に陸上・空中攻撃を加えるという、明らかな戦争法違反を犯している。2012年半ばには、生徒が学校内にいたにもかかわらず、政府軍と民兵組織がダルアー県にある複数校に攻撃を加えた。政府軍はまた、シリア北部の少なくとも2校を空爆した。

ダルアー県出身の少女サルマ(14歳)は、2012年半ばに、政府軍が2度も授業中に銃撃してきたと話す。「戦車が学校に入ってきて、機関銃で学校の壁を撃ったんです。だから生徒たちは(床に)伏せました。身を守るために。私たちは(帰宅できるようになるまで)30分か1時間くらい机の下に隠れていました。」当時学校に反体制派の戦闘員がいたという報告はない。

政府軍と反体制派武装勢力の双方が学校を占拠し、司令部や兵舎、拘禁施設ほかとして軍事利用しており、子どもの安全と教育を受ける権利が危機に面している。

政府は首都ダマスカスにある少なくとも2校の屋上に狙撃兵を配置。うち1校は学期中だった。両陣営とも、一部はまだ学校として使われている校舎に部隊を展開し、生徒と学校職員は危険にさらされている。

前出のモタパルシー調査員は、「政府軍と反体制派武装勢力の双方に、子どもの命と教育を受ける権利を保護する責任がある」と指摘する。「学校を軍事目的に使用することで、彼らは子どもたちを危険な状況に置き、未来の夢を破壊しているのだ。」

国連教育科学文化機関(ユネスコ)統計研究所によると、2011年3月に内戦が始まる以前は、同国の適齢期の全児童のうち約93%が初等教育に、67%が中等教育に在籍していた。識字率は15〜24歳までの人口で約95%にのぼる。

地方の民間評議会や活動家団体は、公立学校が破壊されたり、もはや通学が安全でない地域と反政府勢力の支配下にある地域で、簡易学校やコミュニティスクールを開始。複数のコミュニティがイスラム寺院(モスク)や民家にこうした学校を設置してきた。しかしながら学用品や教材、ならびに十分な能力を備えた教師も不足している。これらのプログラムを継続してカリキュラムを強化し、教師に給料を支払い、より多くの生徒たちに教育を施すには、数々の援助国と人道援助団体による一層の支援が求められる。

前出のモタパルシー調査員は、「武力紛争の際には、子どもたちが教育を継続できるよう、緊急・補習教育支援が不可欠である」と指摘する。「関係各国政府と国連安保理は、たとえそこがどこであっても、教育の援助を必要としているシリアの子供たちに確実に手を差し伸べるよう最善を尽くすべきだ。」