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シリア:化学兵器による攻撃の疑い――政府は国連調査団に即時のアクセスを与えるべき

2013年08月28日 17時47分 JST | 更新 2013年10月27日 18時12分 JST

(ニューヨーク)­-- 2013年8月21日のシリア政府軍による攻撃について、ダマスカス郊外の東・西ゴウタの目撃者は、神経ガスの使用と一致する攻撃方法および症状を訴えている。これにより、数百人が死亡し、その他数百人が負傷した。

最初の証言者である7人の住民と2人の医師がヒューマン・ライツ・ウォッチに語ったところによれば、多くの子どもを含む数百人が、8月21日早朝に始まった攻撃により窒息死したとみられる。1つの事件による民間人の大規模な殺害は、重大な犯罪が行われたとの懸念を提起する。シリア政府は、国営テレビ放送において、主に反政府派が掌握する東ゴウタにおける化学兵器の使用を否定した。

「膨大な数の人びとがゴウタにて死亡した。医師と目撃者は、化学兵器による攻撃と思われる恐ろしい詳細について述べているが、シリア政府は関与を否定している」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東局長代理 ジョー・ストークは述べる。「ゴウタで実際に起きたことを明らかにするためには、国連による調査が必要だ。」

化学兵器が使われたか否かに関わらず、攻撃により多くの民間人が死亡しており、違法な殺害に関わった者の責任が追及されるべきだ。シリア政府は、現在ダマスカスにいる国連の化学兵器調査団に、即時のアクセスを与えるべきである。

目撃者がヒューマン・ライツ・ウォッチに語ったところによると、いくつかの街の住民が、ダマスカスの政府管理区域から発射されたとみられるミサイルに搭載されていた化学兵器によって、被害を受けた模様。被害が及んだ街には、ザマルカ、アインタルマ、 およびモアダミヤが含まれる。

「巨大な噴煙が周辺を覆っていた」とアインタルマの活動家はヒューマン・ライツ・ウォッチに話した。「我々の多くは口を覆うためにマスクを着けていたけれど、目をまもることはできなかった。皆が咳込んでおり、中には呼吸困難に陥ってしまう人もいたよ。」

被害を受けた地域は主に住宅地で、周辺には倉庫や市場、また様々な商業施設が立ち並び、大通りに隣接していることが、衛星映像の分析で明らかになった。当該地域には、化学工場や電気工場その他の工業施設、および、大きな軍事基地や軍事施設はないとみられ、このような施設が通常の兵器の攻撃を受け、犠牲者が生じたとは考えにくい。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、Tameco Pharmaceutical製薬工場1棟の存在を確認しており、そこには圧縮ガスおよび圧縮液のために使用されていると思われる9つの小さな高圧貯蔵倉庫がある。しかしその工場は、アインタルマから2キロ以上南に位置している。よってこの工場が、大量の化学物質の放出源になったとは考え難い。

2人の医師がヒューマン・ライツ・ウォッチに伝えたところによれば、被害を受けた人びとには、一貫して、呼吸困難、締め付けられるような不規則な呼吸、筋肉のけいれん、吐き気、口から泡をふく、鼻や目から液体物質が流れ出る、身体の震え、めまい、視野狭窄、目の炎症や瞳孔の縮小などの症状がみられるという。これらの症状は、神経ガスの中毒症状と一致する。

医師等によると、これらの症状に苦しむ住民を治療するための医薬品(アトロピン、エピネフリン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾンなど)が底をつきかけているとのことである。

アメリカ疾病管理予防センターは、アトロピンおよび塩化プラリドキシムを神経ガスに対する解毒剤として挙げている。しかし、塩化プラリドキシムが効果を発揮するには、被害を受けてから数時間以内に処方される必要がある。神経ガスへの急な暴露は、極めて有害になる可能性があり、効果的な治療のためには迅速な処方が欠かせない。適切な防御用具が不足している場合には、緊急対応チームにも重大な危険が及ぶ。

シリア政府軍は、反政府派に掌握されているダマスカス郊外の東ゴウタを、2012年初めから包囲している。反政府系活動家によれば、当該地域の100万人近い住民は、長期にわたり、電気、水、燃料および食料の不足を耐え忍んでいる。シリア政府はただちに、食料、医薬品、訓練を受け装備が整った緊急対応チームが東・西ゴウタに入ることを認めるべきである。

オーケ・セルストロム氏が率いる国連のシリアでの化学兵器使用疑惑に関する調査団(国連調査団)は、8月19日から調査を開始した。シリア政府と合意した条件の中で、国連調査団は、アレッポのカーン・アラサルを含む、紛争中に化学兵器が用いられたと思われる3つの場所への立ち入りが認められている。

シリア政府は、化学兵器の使用に関する調査のため、東・西ゴウタへの調査団の立ち入りを認めるべきである。また当局は、パウロ・ピネイロ氏が率いる国連の調査委員会にもアクセスを認め、攻撃の責任の所在を特定するための調査に全面的に協力すべきだ。

シリアに関する緊急会合後、国連安全保障理事会は、シリア政府および反政府軍に対し、国連の調査団による即時の現場への立ち入りと、調査への全面的な協力を要求すべきだ。また、全ての戦争犯罪および人道に対する罪におけるアカウンタビリティ(真相究明・責任追及)確保のため、安保理はシリアの状況を国際刑事裁判所(ICC) に付託すべきである。

シリアは、1993年に採択された「化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約」の締結国である189カ国の中に含まれない。全ての化学兵器の使用は非良心的であり、化学兵器禁止条約に定められた基準に反する。使用者、使用場所、使用目的に関わらず、これらの凶悪な兵器の使用を正当化する理由は全くない。

「シリア政府に何も隠すものがないのであれば、同政府は、証拠の収集が可能なうちに、化学兵器による攻撃があったと報告されている場所への調査官の即時の訪問を認めるべきである」と前出のストークは述べた。

(この記事は、「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のサイトで8月21日に公開された記事の転載です)