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家政婦に「労働者」としての権利を認める気運が高まる

2013年11月03日 18時21分 JST | 更新 2014年01月02日 19時12分 JST

(モンテビデオ)-家事労働者のグローバルな労働組合である国際家事労働者組合総連合(International Domestic Workers Federation)が設立された。国際家事労働者ネットワーク(IDWN)、国際労働組合総連合(ITUC)、ヒューマン・ライツ・ウォッチの3団体は本日、長い間基本的な労働保護の適用外とされてきた家事労働者の権利を守る運動の高まりの結果であるとともに、これまでの進捗を評価する重要な時期に来たと述べてこれを歓迎した。世界の家事労働者人口は推計5千3百万人で、その大半は女性と少女。その多くは外国からの出稼ぎ労働者である。

過去2年間で25カ国が家事労働者の法的保護枠組みを改善した。改革が最も進んだのは中南米諸国。高齢者人口の増加で家事労働者に依存するEU諸国では大きな問題が残されたままであり、最も深刻な人権侵害が起きている中東・アジア諸国では問題解決が遅々として進んでいない。

国際家事労働者ネットワークのマートル・ウィットブーイ会長は「家事労働者は、料理や洗濯、子どもの世話といった欠かすことのできない重要な労働を提供している。にもかからず、私たちは何世代にもわたり差別と疎外に直面してきた」と指摘する。「これに終止符をうつべきだ。」

ウルグアイの首都モンテビデオで10月26から28日にかけて、世界40カ国以上の労働運動リーダーたちが結集。家事労働者の世界規模での組織化、地域を越えた戦略の共有、権利推進の提言活動を実現するため、国際家事労働者組合総連合を設立した。

国際家事労働者ネットワークと国際労働組合総連合、ヒューマン・ライツ・ウォッチの3団体は、共同で報告書「権利の主張:家事労働者の運動と世界で進む労働改革」(全33ページ)を発表する。本報告書は、国際労働機関(ILO)家事労働者条約の批准状況や各国現行労働法の改正状況、最近力を得てきた家事労働者の権利運動の影響力などについて解説するもの。

ILOによれば、世界の家事労働者のうち約30%は、労働法の保護対象から完全に除外される国々で労働に従事している。週休・労働時間制限・最低賃金・時間外手当などが認められていないのだ。家事労働者にも労働法の下での保護を一部認めている国であっても、雇用最低年齢・出産休暇・社会保障・労働衛生措置など、要となる保護策については適用外ということが多い。

2013年9月5日には家事労働者条約(Domestic Workers Convention)が発効された。2011年に採択されたこの画期的な条約は世界で初めて、家事労働の基準を定めた。新条約の下で家事労働者は、そのほかの労働者と同じ基本的な労働権を保障される。

家事労働者条約をこれまでに批准した国は、ウルグアイフィリピン、モーリシャス、ニカラグアイタリアボリビアパラグアイ南アフリカガイアナドイツ。ほか数カ国が批准手続きを完了しつつある。今年7月にはEU理事会が「(欧州)連合の利益に基づく」として、EU加盟国に家事労働者条約批准を承認する決議案を採択している。

国際労働組合総連合のシャラン・バロー書記長は、「中南米諸国を中心に条約批准と現行国内法改正の動きがでていることは、政府が家事労働者を保護することが可能であることを示すものだ」と指摘する。「この流れに遅れをとっている国々、特にアジア・中東の各国政府には即時の行動が求められる。」

いくつかの国々(報告書8ページの地図を参照のこと)で近年法制度改革が行われたにもかかわらず、多くの家事労働者はいまだ著しい低賃金で、週7日の長時間労働を強いられている。賃金不払いは共通してみられる問題だ。多くの女性や少女たちが職場である家庭を離れることを許されず、しかも精神的、身体的あるいは性的虐待の犠牲になることもある。

家事労働者の中でも特に人権を侵害されやすいのは、職場である家庭の中で寝泊まりして生活している家事労働者、未成年の家事労働者、移民の家事労働者など。ILOによる最近の調査によれば、2008から12年の間に児童による家事労働は9%増加したことが明らかになった。その他の分野では児童労働が減少したのと対照的だ。なかでも出稼ぎとして家事労働に就く外国人は、斡旋業者による搾取や、厳しい入国管理法、差別、救済措置へのアクセスの困難などの結果人権侵害の被害をうけやすい。

ILO、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、国際家事労働者ネットワーク、国際労働組合総連合などの調査は家事労働者が、人身売買などの強制労働の状態に陥ることも多いことを示している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ女性の権利局上級調査員のニーシャ・バリアは、「家事労働者たちが多くの人権侵害の犠牲になっている。よりよい法律をもっとしっかり執行するとともに、家事労働の価値に対する評価を劇的に変えることが緊急の課題だ」と述べる。「これらの人権侵害をしっかり予防し対処すれば、何百万もの人びとの生活を変えられる。」

本報告書は、ブラジルインド、イタリア、タンザニア米国などでの改革を多角的に検証するとともに、草の根・国内・地域など各レベルで家事労働者の権利運動がいかなる成功を収めているかを評価している。その実例が国際労働組合総連合の活動だ。同連合はほかの労働組合や市民社会団体と協力し、家事労働者条約を政府が批准するよう「12バイ12」キャンペーンの先頭に立っている。同キャンペーンは90カ国以上で、デモを行ったり、政府関係者との会合を持ったり、ソーシャルメディア上のキャンペーンや組合員を増やす宣伝活動、家事労働者と労働組合の連帯運動などを繰り広げてきた。

家事労働者の組織化には法律上の課題があるとともに、時間的にも移動の点でも家事労働者には制約が多いという現実問題もある。家事労働者(特に移民)に自ら組合を組織したり、ほかの組合に参加することを法律で禁じている国もある。たとえばバングラデシュタイ、米国は、家事労働者が自らの権利のために組合を組織する権利を認めていない。

主要な労働改革の例(本報告書より)

1.アルゼンチンは2013年3月、週48時間労働、週休制、時間外手当、年次長期休暇、療養休暇、母性保護を定め、職場である家庭で生活する家事労働者と子どもに対しても保護を拡大した。

2.ブラジルは2013年3月に憲法改正を行い、同国に650万人と推計される家事労働者に、時間外手当・失業保険・年金を受ける権利を認めるとともに、一日8時間労働・週44時間労働を明文化した。

3.ケニアでは2012年12月に画期的な判決が下され、家事労働にも労働法が適用されるとした。これにより、同国の定める最低賃金と社会保障給付が家事労働者に認められた。

4.フィリピンは2013年1月、家事労働者を雇用する際に契約を結ぶことを義務づけるとともに、最低賃金改定・社会保障・公的健康保険を推計190万人の家事労働者にも適用する法律を成立させた。新法は、就職斡旋業者と雇用主に対し、斡旋料の請求を禁じるとともに、給与と各種給付金の支払い責任を課した。

5.スペインは2011年11月、最低賃金や週休・年休、出産休暇、非労働時に呼び出しに応じることを求める「待機時間」への補償などの家事労働条件を定めるとともに、家事労働者も社会保険制度の対象とした。

6.ベネズエラは2012年、週40時間労働、週休2日、有給休暇、最低賃金に関する定めを家事労働者にも適用することとした。

(この記事は、「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のサイトで10月28日に公開された記事の転載です)