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日本:特定秘密保護法案 公益を守るため見直しが必須

2013年11月25日 22時59分 JST | 更新 2014年01月25日 19時12分 JST

秘密指定の権限や情報漏えいの処罰が広範囲過ぎる

安倍政権下のこの法案は、知る権利を制限し、公益のためになる情報を明らかにしたジャーナリストや内部告発者までも処罰する内容となっている。この法案が日本政府の国際的義務に適合するよう修正されないならば、国会は法案を否決すべきだ。

ブラッド・アダムズ、アジア局長

(東京)-日本政府は特定秘密保護法案を見直し、国際法が保障する国民の権利に沿った法案にすべきである。国際法の下で日本政府が負う義務を果たすために、法案は、内部告発者やジャーナリストに対する明示で保護し、人権条項を強化するとともに、「特定秘密」の定義を安全保障に著しい脅威となる情報に限定した上で、明確で制限的な秘密指摘の基準が確実に設定されるように措置をとる必要がある。

この「特定秘密の保護に関する法律案」は、現在国会で修正協議が行われており、今週前半に衆議院を通過すると見られている。現行法案は政府に対して、防衛、外交、「特定有害活動」とテロリズムに分類される、「その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがある」情報を「特定秘密」に指定する権限を与え、これらの秘密を漏らした者への罰則を強化する。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは「安倍政権下のこの法案は、知る権利を制限し、公益のためになる情報を明らかにしたジャーナリストや内部告発者までも処罰する内容となっている」と指摘。「この法案が日本政府の国際的義務に適合するよう修正されないならば、国会は法案を否決すべきだ。」

日本にはすでに、機密情報分類に関する一連の法体系が存在する。本法案が成立すれば、安全保障に「支障」をきたすに過ぎない情報の漏えいに対して、実際の危害を示し、民主主義社会に重要な知る権利とその危害を比較考量することを条件とすることもなく、現行法よりも重い罰則が適用されることになる。

日本も締約国である「市民的及び政治的権利に関する国際規約」によれば、知る権利の国家による制限が許されるのは、国の安全を保護するのに「必要な」ときに限られ、しかも、その措置は最小限にとどめ、民主主義国における他の権利の尊重と齟齬をきたさない形でなされなければならない。国家安全、表現の自由、情報へのアクセスの自由に関するヨハネスブルグ原則は、安全保障に関する情報への人権保護の適用について、1996年に国際法の専門家集団が定めた有力な原則であるが、このヨハネスブルグ原則は次のように定めている。「(......)規制が、正統な国家安全保障上の利害を保護するために必要なものであることを示すためには、政府は(a)当該の表現や情報が、正統な国家安全保障上の利害に対する深刻な脅威を生じさせることを証明する義務がある(......)。」

法案は、「特定秘密」を漏らした者を、最大10年以下の懲役及び1,000万円以下の罰金に処すると定める一方で、不正の証拠を明らかにする内部告発者の保護は盛り込まれていない。国際基準は、内部告発者が開示した情報の公益が危害を上回る場合、刑事責任を負わせないことを求めている。

現行の公益通報者保護法は、内部告発を行った労働者を解雇などの報復措置から守る法律であるが、刑事責任から守る規定はない。さらに、漏えいされた政府情報を単に受け取り、伝達し、あるいは開示したジャーナリストや出版関係者までもが刑事責任を負う可能性があり、これは表現の自由の重大な侵害といえる。日本政府は内部告発者と報道機関への保護策を、国家安全保障と情報への権利に関する国際原則(ツワネ原則、日本語訳はこちら)と最低限一致するかたちで定めるべきだ。同原則は、国際人権法の現行の解釈と国家のベストプラクティスに由来する。

特定秘密保護法案は第21条で、法律の適用にあたっては、国民の基本的人権と報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない、と定めている。しかし、出版又は報道の業務に従事する者の機密情報の収集については、「著しく不当な方法」によると認められないときに限って処罰しないとし、その定義はあいまいだ。また、第21条は公益のために情報を収集するそれ以外の人々(研究者、ブロガー、活動家、独立監視団体など)の保護に欠け、情報収集手段の適切性の判断を行政と司法の手に委ねることになる。

法案では、特定秘密の指定および解除の基準も明示されていない。言論および表現の自由の権利の保護・促進に関する国連特別報告者フランク・ラ・リュ氏と、健康の権利に関する国連特別報告者アナンド・グローバー氏は、日本の状況、とくに最近の福島原発事故と健康リスクに関する情報の非開示を踏まえて、同法案が情報の最大限の開示という原則を満たしていないことに、懸念を表明した。ラ・リュ特別報告者は9月、真実への権利についての報告を発表し、重大な人権侵害行為やそれにかかわる情報など、政府の情報非開示が許されない場合が存在すると強調している。

特定秘密の指定と解除の基準については修正議論が行われてはいるものの、公益との関係性や、審査の便宜のため、秘密指定と更新の際に行政機関が理由を書面で示す義務を負うかなどが基準に盛り込まれる様子はない。また、法案は、不正のもたらす困惑や不正の暴露からの政府の保護、政府機関の活動に関する情報の隠匿、特定のイデオロギーの確立、労働不安の鎮圧を目的としているに過ぎないのに安全保障を理由として秘密指定を行うことはできない、と明示すべきである。そして、秘密指定5年後の最初の見直しの後は、司法審査を可能とすべきである。

前出のアダムズ局長は「現在の法案では、日本政府の透明性は著しく低下し、日本が負う国際的人権上の義務に政府は背くことになる」と指摘。「政府は法案を再検討すべきだ。そして、公益ならびに知る権利と、政府の秘密保持とがしっかり均衡を保つことが重要と認めた法律を提案すべきだ。」

(この記事は、「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のサイトで11月25日に公開された記事の転載です)

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