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人権ウォッチ:国連、アジアでのLGBTへのいじめに取り組む

2015年11月24日 22時05分 JST | 更新 2016年11月24日 19時12分 JST

「中学校ではよく、『女の子っぽくない』からという理由で、友だちからよってたかって紙を丸めた棒ではたかれていました。先生たちはいじめを何度も目撃していましたが、見て見ぬふりでした。同級生に助けを求めても、我慢しなよ、と言われるだけ。高校になったらよくなるよ、と言うのです。」

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"A 20-year-old Japanese woman who was bullied by her classmates in junior high school holds a notebook displaying the message: "It was common knowledge that I was being bullied. It was also common knowledge that my teachers would never help me." © 2015 Kyle Knight/Human Rights Watch

「私がいじめに遭っていることはみんな知っていました。そして先生たちが絶対に助けてくれないことも常識になっていました」と、この女性は振り返ります。

この体験は、いま20歳になる日本のバイセクシュアル女性から今週伺ったものですが、悲しいことにアジア地域全体で珍しくない実態です。今月19日発表のUNESCOの報告書は、こうした実態を明らかにしたものです。アジア太平洋地域全体で、学校での同性愛嫌悪とトランス嫌悪によるいじめが起きており、各地で対応の遅れも目立ちます。報告書発表に先だって、12の国連機関がレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー(LGBT)への暴力と差別の解消に向けた対策をすると約束しています。

この地域では前向きな変化も起きつつあります。たとえばフィリピンで2013年に成立した法律は、学校にいじめの対処を命じるもので、性的指向と性自認にはっきり言及しています。

しかし全体的な状況は芳しくありません。この地域の学校はLGBTの子どもたちにとって依然として極めて危険な場所となっています。2013年のタイでの調査では、対象となったLGBTの児童・生徒の56%がその前月にいじめを受けたと答えています。とくに対応が著しく後退したのは韓国です。政府は2015年初めに学校での性教育の時間に同性愛を扱うことを禁止しました。これはUNESCOの基準に反するものです。

報告書は、LGBTの人びとに広く影響を及ぼす法律が「LGBTの若者への暴力と差別に対応する際の大きな壁として立ちはだかり続けている」と正しい指摘を行っています。しかし差別的・処罰的法律がたとえなくても、LGBTの学生・生徒がほかの子どもたちからいじめを受け、それを教員が放置する場合があります。

私は日本の学校でのLGBTの子どもへのいじめについて調査を行っているところです。日本では同性愛行為が処罰の対象ではありませんが、LGBTの子どもや生徒は暴力と差別にさらされています。学校での同性愛嫌悪やトランス嫌悪は、その時点で本人がLGBTであると思っているかどうかにかかわらず、子どもたちに悪影響を及ぼしかねません。UNESCOはこう指摘しています。「LGBTという自己認識を持つ人だけがこうした暴力と差別の標的になるわけではない。異性愛的関係への社会的期待などのジェンダー規範にそぐわない人びとも、やはり狙われるのである。」

政府がいじめ対策を怠ることは、教育や情報、保健衛生、表現の自由の権利の侵害にもなりえます。国連の子どもの権利に関する委員会は、これまでも多くの機会を通じてLGBTの児童と生徒へのいじめについて懸念を表明しています。UNICEFも同様です。アジア太平洋地域の各国政府には、こうした人権侵害を終わらせる工程表があります。今こそそれを実行に移すべきです。

(2015年11月19日「Human Rights Watch」より転載)