BLOG

国連:世界保健機関が「処女検査」を非難 女性の尊厳を損ない、差別的で非科学的な医療処置は禁じられるべき

2014年12月06日 00時06分 JST

WHOハンドブックは、『処女検査』は全く意味がないという広く一般的な医療見識を支持するものだ。世界の保健当局は、すべてのケースで『処女検査』を撤廃し、この差別的で尊厳をそこなう悪しき慣行を、医療関係者が続けることを禁ずるべきだ。

リーズル・ゲルントホルツ、女性の権利局 局長

(ニューヨーク) — 各国政府は世界保健機関(以下WHO)の新たな勧告を受け、差別的かつ非科学的なうえ、女性や少女の尊厳を損なう「処女検査」の廃絶を速やかに実施すべきだ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

WHOの ハンドブック「親しい関係のパートナーから暴力および性暴力を受けた女性のためのヘルスケア」(2014年11月発表)の勧告には、医療従事者が決して「処女検査」をすべきではないとある。更に、女性の権利そして気持ちの尊重が重要としたうえで、いかなる身体検査もインフォームドコンセント(同意に基づく医療)にのっとり、必要とされる治療法の決定に焦点を当てるべきだとしている。同ハンドブックは、人権を侵害しかつ尊厳を損なう「処女検査」あるいは「二本指検査」(一部の国でいまだ処女性を確認するのに用いられている)について、「何ら科学的根拠がない」と結論づけた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ女性の権利局局長リーズル・ゲルントホルツは、「WHOハンドブックは、『処女検査』は全く意味がないという広く一般的な医療見識を支持するものだ」と指摘する。「世界の保健当局は、すべてのケースで『処女検査』を撤廃し、この差別的で尊厳をそこなう悪しき慣行を、医療関係者が続けることを禁ずるべきだ。」

同ハンドブックは主に、性暴力や家庭内暴力後のヘルスケアに焦点を当てているものの、雇用差別や、婚外交渉に対する訴追など、「処女検査」が行われているそのほかの事例にも広く関連性のある内容となっている。

「処女検査」が実施されていることが世界各国で散見される。たとえばアフガニスタンでは、家出、婚外交渉またはその未遂などの「道徳犯罪」を告発された女性や少女に対し、関係当局が日常的に「処女検査」を行っている。こうした罪の被疑者とされた女性は、強制結婚を含む家庭内の暴力から逃れてきていることが多い。

この受け入れがたい処置は、1人の女性に何度も行なわれることがあり、これが方針である場合も、単なるミスの結果であることもある。時として強盗や暴行などの罪の被疑者となった女性たちに行なわれることもある。「処女検査」の結果を裁判官が重視し、多くの誤った有罪判決に結びついている可能性も否めない。レイプ被害者は、被害を告発したり支援を求めることを躊躇することが多い。それは婚外交渉と混同される危険があるからだが、関係当局者は「処女検査」でそれを裏づけられると信じている。

前出のゲルントホルツ局長は、「処女検査は性に基づく暴力および差別の一形態だ」と述べる。「関係当局は、この非科学的かつ尊厳を損なう『検査』で女性を搾取している。女性の性経歴は、仕事の適性をはかったり、レイプの有無を調べるのに全く関係のないことだ。」

中東と北アフリカ地域では、女性が様々な状況で「処女検査」の対象となりうるが、これは家族が希望する場合も含まれる。2011年後半、エジプトで逮捕されたデモの女性参加者たちが、軍属医師に「処女検査」をされたと証言。エジプト行政裁判所は女性の被拘禁者に処女検査を行うことは、「違法行為かつ女性の権利に対する違反、そして尊厳を傷つける」と判示した。しかしながら2012年3月、この「処女検査」事件で訴追されていた唯一の軍関係者が無罪となった。裁判所の判決にもかかわらず、違法行為はいまだエジプトの拘禁施設で続いておりリビアヨルダンも似たような状況だ。

インドネシアでは、女性の警察官候補生の採用過程に「処女検査」が組み込まれている。女性の警察幹部たちはこの慣行に反対し、禁止を求めているが状況は変わっていない。加えて女子生徒に「処女検査」を課す法案も、議会に繰り返し提出されている。

2014年、インドの保健相がレイプ後の医療処置をめぐる新たな規定を発表。レイプ被害者を治療・検査する医療従事者は、二本指検査を実施すべきではない旨をはっきりと示した。が、インド全土で組織的にこのやり方を広げるにはいたっていない。

「処女検査」は国際的には人権侵害として認定されている。とくに市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)の第7条の「残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い」や、拷問等禁止条約の第16条がこれを禁じており、インドネシアおよびインド両国はいずれの国際条約も批准している。

自由権規約の各国遵守状況を監督する国連専門機関である規約人権委員会は、一般的意見のなかで、第7条の目的は「個人の尊厳および肉体と精神のインテグリティを保護すること」としている。同条は被害者にとって肉体的苦痛の原因となる行動のみならず、精神的苦悩の原因ともなる行動に関連する。強制的処女検査は、女性の尊厳をないがしろにし、肉体と精神のインテグリティを侵すものである。

「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」などの人権関連諸条約は、女性に対する差別を禁じている。「処女検査」は、男性と同様の権利を女性に保障しない効果あるいは目的があることから、女性差別に該当する。

前出のゲルントホルツ局長は、「女性の処女性を検査できると誤って信じている多くの医師たちの手で、医学の名の下、女性や少女に対する偏見や負の固定観念が受け継がれている」と指摘する。「各国政府と医師たちはWHOハンドブックに従い、女性のプライバシーと尊厳を尊重すべく倫理的に医療処置を行うとともに、『処女検査』という苦しみを廃絶すべく同僚たちを教育する措置をとるべきだ。」

(2014年12月2日「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」より転載)