成功者は用意万端と感じる前に走りだす

彼らから学べることは、「用意万端」を待っていては何もできない。自分がそのことにまだ充分に精通していないと思っても、どうしてもやりたい、やるべきだと感じたら、とにかく始めることが大切だ、ということかと思う。

難読症に悩まされ高校を中退。学生向けの雑誌を創刊し、中古レコードの通信販売をはじめて成功し、レコード会社を設立。セックス・ピストルズなどと契約しイギリスを代表するレーベルに。その後、ヴァージン・アトランティック航空を設立して小航空業界に参入、世界各国で25000人の従業員を要する企業グループに育てたリチャード・ブランソン氏。彼の有名なエピソードにこんなものがある。

まだ20代の後半のころ、ヴァージン諸島へ行こうとしたとき、予約していたフライトがキャンセルされてしまった。

素敵な女性が向こうで待っていたので、なんとしてでもヴァージン諸島へ行こうと決意した彼は、ヴァージン諸島へのフライトのチャーターを申し出た。もちろん、まだ若い彼にそんなお金はなかったのだけれど。

彼は小さな黒板に「ヴァージン航空 29ドル」と書いて、ヴァージン諸島へのフライトがキャンセルされて途方にくれている人たちのところへ行った。

チケットは瞬く間に売れて、そのお金でチャーター代を払うことができ、彼もその夜、無事ヴァージン諸島に行くことができた。

そして、この一件で、彼は航空業界への参入を決めた。

成功している起業家には、こういう話が多い。

たとえば、L.L.Beanの始まりもそうだ。この記事によると、あの有名なラバーとレザー一体型のアウトドアブーツは「用意万端」で売り出されたものではなく、急いで作らせたために、最初の出荷分はなんと90%の顧客が返品を申し出たそうである。

彼らから学べることは、「用意万端」を待っていては何もできない。

自分がそのことにまだ充分に精通していないと思っても、どうしてもやりたい、やるべきだと感じたら、とにかく始めることが大切だ、ということかと思う。

いっぽう、古くからある徒弟制度とか、暖簾分けみたいなことも、いまでも存在していて、ある一定レベルに達していなければビジネスとして公にしてはいけないというような考え方もあって、こちらの考え方も根強い。

中途半端な製品やサービスでお客様に迷惑をかけてはいけない、ということが主たる理由だが、そこには、既得権益を守ろうとする意図も見え隠れするし、どちらかと言えば、江戸時代の日本のように社会の変化の速度が遅い世界で有効な考え方のように思える。

L.L.Beanのブーツにしても、返品はすべて受け取り、ちゃんとしたものを作りなおしてお客様にお届けし、そのことでL.L.Beanはお客様から絶大な信頼を得て、その後の発展の基礎になっているのである。

僕の知人にもそういう人がいる。

ほかの人と何が違うというと、そのスピード感だ。

「用意万端」と言えない状態でも、躊躇せずに新しいことをはじめ、どんどん学んでいくので、事業の規模がみるみる大きくなっていく。

僕の5年もしくは10年が、彼の1年。

実感としてはそれぐらいの差がある。

この記事はJames Clear氏の人気記事:Successful People Start Before They Feel Ready(成功する人たちは準備が出来たと思う前に始めている)を自分の言葉で書いてみたものだ。

最後に、彼の素晴らしい記事から、胸に響く一文を紹介しておこう。

僕のために。

そして、ひょっとしたら、あたなのために。

We all start in the same place: no money, no resources, no contacts, no experience. The difference is that some people ― the winners ― choose to start anyway.

私達は同じところからスタートする。お金も、リソースも、人脈も、経験もないところから。とにかくすぐに始めることを選ぶところが、成功者がほかの人たちと違うところなのである。

photo by Jeff Sheldon

*2:ブランソン氏から直接話を聞いたClearさんのブログより

(2015年2月3日「ICHIROYAのブログ」より転載)