スタートアップに大切なこと~「セレンディピティ」もしくは「やってみなけりゃわからない」

『セレンディピティ(serendipity)』という言葉を知っているだろうか。僕も今朝までこの言葉を知らなかったのだが、新しいビジネスを始める、起業するなどのときに、この言葉のもつ意味が、もっと意識されてもよいと常々思っていたので、紹介したい。

『セレンディピティ(serendipity)』という言葉を知っているだろうか。

僕も今朝までこの言葉を知らなかったのだが、新しいビジネスを始める、起業するなどのときに、この言葉のもつ意味が、もっと意識されてもよいと常々思っていたので、紹介したい。

セレンディピティ(英: serendipity)は、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値あるものを見つける能力・才能を指す言葉である。何かを発見したという「現象」ではなく、何かを発見する「能力」を指す。平たく言えば、ふとした偶然をきっかけにひらめきを得、幸運をつかみ取る能力のことである。 (wikiより引用)

この言葉は、『セレンディップの3人の王子(The Three Princes of Serendip)』という童話にちなんで、ホレス・ウォルボールというイギリスの政治家・小説家がつくった造語であるという。

この物語も示唆に富んでいるけれど、僕の体験を例に出すと、こういうことだ。

僕がいまのビジネスの原点(ネットで海外にアンティークの着物を売る)に出会ったのは、露天で商材を探している時だった。

そのときの僕は、小さなワゴンでできる商売のネタを探しており、アクセサリーや小さな雑貨をイメージしていた。

それなら、ワゴン1台である程度の量を展開できるし、売れるアイテム、見せ方、仕組みを作り上げれば、台数を増やすことでビジネスの規模も拡大できるだろうと思っていた。

必要な資本も少なく、何度か失敗しても、全部を失うまでに離陸できるだろう。

なんだそんなことか、と言われても、それは、突然会社を辞めて何を始めようかと長い時間をかけて『論理的に』考えて導き出した、ひとつの答えだった。

しかし、僕がたまたま露天で見つけたのは、アンティークの着物であり、その素晴らしさと安さであり、それを外国人が喜んで購入している姿だった。

ワゴンでやる商売のネタを探していて、偶然、別の商売のネタをみつけたのである。

このときのことは、たんに『幸運』ということもできるだろう。

だけど、それを見過ごさなかったということを、幸運以上の何かで説明しようとすると『セレンディピティ』という言葉が近いかもしれないと思うのだ。

大企業が新規事業を始める。だが、たいてい失敗する。

その理由は、色々とあるだろう。

たとえば、トライアルの回数が少ない、意思決定までに時間がかかりすぎる、トップマネジメントが新しいビジネスや顧客の新しいライフスタイルを理解できない、などなど。

そして、ひとつには、『セレンディピティ』が活かされていない、ことがあると思う。

つまり、組織で新しいビジネスを始めるときは、論理的に考え抜いて、100%説明しなければならない。

しかし、この、「論理的に考えぬいて組み上げた100%のビジネスモデル」というものは、食わせもので、それが「論理的に」成功することは稀だ。

その理由は簡単で、論理的に考えて100%構築できるものは、すでに誰かが試してしまっている。あるいは、すぐに競合が現れて、激烈な消耗戦になるから、収益を得るのが難しいのだ。

多くの新規ビジネスやスタートアップは、当初、「論理的に考えぬいて始めた」ことが上手く行かず、トライアルエラーを繰り返しているうちに、たまたま見つけた幸運や別の価値あるものに辿り着き、そこに予想もしていなかった花を咲かせることが多い。

それを調べれば、数えきれない実例が出てくるだろう。

僕の同業の小売業のなかで有名な話をひとつだけ上げると、ドンキホーテが夜間営業に大きなチャンスがあると見つけたのは、「論理的に導きだした」のではなく、たまたま、営業終了後の時間、電気を点けたまま商品を入れ替えしていたら、お客さんがどんどん入ってきたことからだった。

もちろん、僕が今書いたようなことは、起業家の皆さんや起業経営者はよく知っている話で、目新しい内容ではない。

だけど、案外、起業を目指しているようなひとは、この『セレンディピティ』の重要さを知らない。

論理的思考やアイディアの素晴らしさだけで、『論理的に』新しいビジネスを生み出すことができると思っている人が多いような気がする。

『セレンディピティ』

いい言葉だと思う。

言い換えると、結局、『やってみなけりゃわからない』ってことなんだけど。

(2014年4月8日「ICHIROYAのブログ」より転載)

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