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クールジャパン、政権の覚悟を問う

2013年07月07日 23時53分 JST | 更新 2013年09月06日 18時12分 JST

今年もパリ郊外で開催中の「ジャパンエキスポ」に来ている。マンガ、アニメ、ゲームといったコンテンツに加え、ファッション、伝統芸能、和食などを横断する日本総合展だ。昨年は4日間で20万人が足を運んだという。今年も日本好きの若者たちの熱気でむせかえる。

しかし、出展する日本企業は、ビジネスは苦戦しているという。ファンが多いからといって、おいそれとカネになるわけではない。このイベントはフランス人の手によって運営され、プラットフォームを握られているという点もあるようだ。ならば自ら主導権を持つ企画を組み立てよう。

そこで筆者が実行委員長となって、マンガ、アニメ、音楽、ファッション、食、雑貨などの日本企業を募った「Tokyo Crazy Kawaii Paris」というポップなイベントを9月にパリで実施する計画だ。うまく行けば、アジアや北米での開催も考えたい。

このように、日本の文化産業力を海外で発揮しようという民間の動きが活発になっている。国内市場が大きいために内向きで潤っていた時期は過ぎ、どの産業も世界市場に挑戦せざるを得ない。特にコンテンツはネットとスマホで世界が単一市場になってしまった。

こうした動きを支援する政府の取組が「クールジャパン政策」だ。政府は「クールジャパン推進会議」を立ち上げ、先ごろアクションプランをとりまとめた。芸術作品、食、観光資源等の情報を放送やネットを通じて海外に発信する、といった内容だ。

同時に政府は従来から知財本部の場でクールジャパンの対策を議論してきた。クールジャパン推進会議が短期のスグやるアクションを練ったのに対し、こちらは制度や教育など、長期の施策がメインだ。先月、今後10年を展望した「知財ビジョン」を策定し、著作権の制度整備、海外の輸入規制緩和、海賊版対策の強化、知財教育の拡充などを盛り込んだ。

筆者は、クールジャパン推進会議の下に置かれたポップカルチャー分科会の議長として、また、知財本部のコンテンツ調査会長として、双方の議論に参加した。前者では、政府主導ではなくユーザ・消費者主体で進めること、後者ではデジタル基盤の整備に力を入れることを主張した。

クールジャパンというと、エンタテイメント業界に補助金を渡すことと目されがちだが、政府が行うべき仕事はその前にたくさんあるのだ。ひとまずプランは決した。何をどう実行するか、それは参院選後の政権に委ねられている。

会議を通じて強調したのは、「一体化」と「本気度」。クールジャパンと知財では担当大臣が別なのだが、短期と長期の施策を一体的に融合させたい。また、これら施策は計8省庁が関与する。霞ヶ関のお家芸、タテ割りを排して、ヨコ一体で進めたい。政権の覚悟を問う。

さらに、こういう問題に、流行りものではなくて本気で取り組むのかどうか。クールジャパンの政策には「もっと大事なことがあるだろう」という声がつきまとう。そもそもクールジャパンという概念は海外から寄せられたもので、日本が自ら文化を評価した運動ではない。日本の文化予算/政府予算はフランスや韓国の1/10程度で、力も入っていない。

TPPでも知財は最重要だ。アメリカの要求を飲むと、日本は知財の国際赤字が拡大し、コンテンツの制作や利用も窮屈になりかねない。だが、知財の政策としての優先順位が農業よりうんと低いと、政治的な犠牲になる懸念もある。資源も安価な労働力もない日本は、知財で食うほかない。それにどれだけ本気で取り組むのか。

韓国の新政権はIT政策や科学技術を統括する「未来創造科学省」を置いた。国民を何で食べさせるかを端的に示している。日本もクールジャパンで文化立国を推し進めるため、文化、知財、ITに関する政策を束ねて「文化省」を作るぐらいの一体性と本気度を見せられないものだろうか。