国民の思考停止が原発停止を許容し、そして日本は死ぬ

私の考える原発政策やエネルギー政策についてはこれまで何度かハフィントンポスト経由公開した。強調したいのは、原発を停止させ、代って化石燃料を使う事の愚かさである。
Protesters stage a demonstration march in Tokyo on June 28, 2014 against re-opening the Sendai nuclear power plant operated by Kyushu Electric Power Company. About 5,500 protesters participated in the anti-nuclear power plant rally. AFP PHOTO / KAZUHIRO NOGI (Photo credit should read KAZUHIRO NOGI/AFP/Getty Images)
Protesters stage a demonstration march in Tokyo on June 28, 2014 against re-opening the Sendai nuclear power plant operated by Kyushu Electric Power Company. About 5,500 protesters participated in the anti-nuclear power plant rally. AFP PHOTO / KAZUHIRO NOGI (Photo credit should read KAZUHIRO NOGI/AFP/Getty Images)
KAZUHIRO NOGI via Getty Images

先程読んだフォーブスのJapan's Nuclear Roadmap To Economic Destruction(経済破綻に至る事になる日本の原発ロードマップ)を週末の読み物として紹介する。私の考える原発政策やエネルギー政策についてはこれまで何度かハフィントンポスト経由公開した。その度に少なからず批判を頂戴した。そういう人には是非この記事を読んで貰いたい。読者の皆さんへの参考用として私の意見を下記する。強調したいのは、原発を停止させ、代って化石燃料を使う事の愚かさである。

■ 原発停止は貿易収支を悪化させる

原発を停止させ、代って化石燃料を使えば当然余分な輸入代金が発生する。その結果が平成26年6月分貿易統計という数字になって現れる。輸入は8.4%増の6兆7,619億円だが、原発を停止させている事で、原粗油(8.3%増)、石油製品(35.9%増)、液化天然ガス(7.6%増)といった具合に増加している。今後も原油価格は右肩上がりで上昇し、一方、安倍政権が円安施策を継続すれば化石燃料輸入代金の膨張は不可避となる。

■ 原発停止による電力料金値上がりは国内製造業に引導を渡す事になる

原発を停止させても一定のコストはかかる。一方、本来必要のない化石燃料を輸入する事から電力コストは上昇する。日経ビジネスが電力ショックが日本を激変させるととセンセーショナルに伝えているのはこの結果である。震災前比較で値上がり幅の一番大きな北海道電力の場合で61.5%との予測で、これでは製造業は堪らない。廃業するか、或いは海外移転かの二者択一であろう。当然、国内製造業の雇用は喪失し重篤な失業問題が発生する事になるだろう。

■ 原発に代わり化石燃料を燃焼さす事で地球温暖化ガスを大量発生させてしまう

地球温暖化ガス排出削減に舵を切ったアメリカ、オバマ大統領でアメリカ、オバマ政権の最重要課題が地球温暖化ガス排出削減である事を説明した。

6/2(現地時間)のBBC News一面トップはウクライナ情勢でもなければ南シナ海での中越紛争でもなく、アメリカが今後2030年までに2005年比で地球温暖化ガスである発電所が排出する二酸化炭素を30%削減するという内容であった。ポイントのみを要約すると「米政府は、発電所が排出する二酸化炭素を2030年までに2005年比で30%減らす新たな削減目標を示す方針を固めた。州ごとに目標値を定め、達成のため省エネ、原発や太陽光発電の新設、石炭火力を二酸化炭素発生量が比較的少ない天然ガス発電に切り替える。一方、これら施策で可能となる削減した排出量取引の活用も認める」。

California's Exceptional Drought Just Keeps Getting Worseが示す様に、気候変動で黒焦げになる Californiaの惨状がその背景にあるのは明らかである。そして、日本が忘れてはいけないのはEUもこの動きに追随する事である。G7加盟国の中で日本のみが能天気に地球温暖化ガス排出を増やせる訳がない。

■活断層原理主義者が主導する Nuclear Regulation Authority (NRA) の滑稽

これについては何度も揶揄する記述が出て来る。要約すれば活断層に起因しての地震発生の確率は極めて低いにも拘わらず、それに振り回され過ぎているNRA実態への苦言である。一例を下記参照しておく。

The administrators at the Japanese Nuclear Regulation Authority (NRA) have decided to redefine what an active geologic fault is with respect to nuclear power plants, contrary to all the other scientists in the world, and have decided that an active fault is one that has moved within the last 120,000 years.That's funny, because we geologists have always defined an active fault as one that has moved within the last 10,000 years.

■福島第一原発事故原因は地震ではなく津波

福島第一原発事故は地震によって発生した訳ではない。津波により冷却水を循環さすポンプの動力源となる非常用発電機が浸水し稼働出来なくなった事が原因である。そして、東京電力はこういった事態回避のため非常用発電機を今少し高い場所に移動する様事前に勧告されたにも拘わらず無視している。要は人的過失により事故は発生しており、この事故で原発そのものの安全性を判断するのは合理性に欠ける。

Tohoku earthquake did not cause the Fukushima disaster. It was the tsunami that took out the back-up power to the plant, and that's because Tepco ignored warnings to raise them to high ground.

■「原発再稼働」に対する議論は、今は「感情」から「科学」への移行期

原発政策について、自民党所属の鈴木けいすけ衆議院議員に質問した内容は、日本を漂流させないために政治は何をなすべきか?で説明している。

先ず印象的であったのは、私が求めた「原発再稼働」に対する、今は「感情」から「科学」への移行期という説明である。確かに、悲惨な福島第一原発の事故に接し日本国民は一種のヒステリー状態になってしまった。「科学」に基づく冷静な議論は隅に追いやられ、「反原発」の如き誠に以て稚拙極まりない議論が跳梁跋扈した。現在はその変わり目という認識で良いのだろう。

私は「原発再稼働」に対する議論が「感情」から「科学」への移行期」である事を否定するものではない。しかしながら、この移行期が長過ぎると日本経済は壊死し、日本は死んでしまう。この事を危惧しているのである。

注目記事