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日本に「大量解雇時代」が到来か?

2014年07月30日 21時31分 JST | 更新 2014年09月29日 18時12分 JST
syntika via Getty Images

朝日新聞の伝えるところでは、パナソニック、「年功要素」完全廃止へ 来春導入目指すとの話である。この記事を読んで、私は直ぐに日本企業が意図しているのは単純な人件費削減等ではなく、使えない社員のドライな解雇であると感じた。日本に大量解雇時代が到来した事を理解した訳である。

この変化は大多数の現役世代の人間には余り愉快な話ではないだろう。しかしながら、「転ばぬ先の杖」という諺が示す通り、この事の中身を正しく理解し来たるべき未来に備える事は必要だと考える。それが、今回「日本に大量解雇時代が到来か?」のテーマで論考を試みる事にした経緯である。

パナソニックは、全従業員の給与体系から年功要素を完全になくす案をまとめ、労働組合と協議に入った。成果主義を徹底し、社員のやる気を引き出しつつ人件費も抑える狙いだ。本体約5万7千人と一部グループ会社の社員が対象で、来年4月の導入を目指す。

改革の背景に何があるのか?

従来からサービス業や流通系の離職率は高かった。何故なら、製造業と異なり勤続年数を重視せず、どちらかといえば仕事の中身によって給与が決められていたからである。従って、社員はその会社に長く務める事に魅力を感じず、良い条件の職場があれば割と気楽に移動していた訳である。今回のパナソニックの決断は、従来勤続年数を尊重して来た製造業も、年功序列制度の負の面を強く意識し、「年功序列」、「終身雇用」からの決別を今回宣言したというのが私の見立てである。

「給与テーブル」という言葉が死語になる

それでは、企業が「年功序列」、「終身雇用」から決別したら、具体的にどういった変化が生じるのであろうか?第一は「給与テーブル」という言葉が死語になる事だと思う。「給与テーブル」は社員の能力は年齢と共に一律向上するという仮説の下に作成される。従って、30才での標準モデルが年収600万円であれば、出来る社員、勤め先に大きく貢献している社員であっても精々年収650万円程度、出来ない社員でも550万円程度で大した差は付かない。

一方、成果主義となれば30才で年収2,000万円を稼ぐ社員も出て来るであろうし、その一方で入社後8年経っても新入社員と同じ仕事をしているという理由で月給は初任給の20万円に据え置かれ、一方業績が未達との理由で賞与が支給されないケースもあるだろう。その場合の年収は20万円×12か月=240万円に過ぎない。「給与テーブル」が無く成れば、同じ企業に所属し、同じ様に正社員の身分であっても待遇に目も眩む様なコントラストが生じるという事である。

最早社畜に居場所はない

この事は、日本企業は最早社畜を必要とはしないで説明した通りである。私の予想したシナリオをパナソニックが実行するという事だが、日本の製造業が次々と追随するのは当然である。

そして、最後は今回のテーマである「社畜」である。私の「社畜」に対するイメージは、今勤めている企業が特に入社したかった訳ではなく、内定を出してくれた唯一の会社なのでそこに入社し、入社以来何かを勉強する訳でもなく、毎日漠然と始業時間ぎりぎりに出社し、有能であれば午前中に終わってしまう様な仕事に一日をかけ、更に、毎日決まって2時間残業する様なサラリーマンである。こういったサラリーマンは概して転職市場での自分の価値に興味を持たない。何故なら、値段が付かない(転職不可)を朧げながらではあるが理解しているからである。そして、どういう訳か「終身雇用」は継続すると根拠のない自信を持っており、外で(社外で)通用する、能力(スキル)を身に着けようとはしない。一方、日本企業は今や「最早社畜を必要とはしない」を通り越して、社畜は企業に取って、迷惑もの、厄介者といった認識に変わってしまった。

社畜は具体的にどの様にして追い出されるのか?

企業が社員を解雇する際のレギュラー対応は飽く迄「金銭解雇」だと考える。しかしながら、どうしても一定割合の社員は弁護士や社労士に相談して企業への寄生の継続を試みる。仮に従来の年功序列の恩恵を受けて、大した仕事もしていないのに年収を1千万円貰っている45才の社員がいるとする。企業は例えば割増退職金1千万円の条件で「金銭解雇」を社員に打診する事になり、このやり方がレギュラー対応になるという事である。勿論、社員がこの条件に素直に応じてくれれば平和的に解決する。

しかしながら、転職が出来ない人間の多くはこの提案を拒絶するかも知れない。その時は今回の「成果主義」の出番となる。無能のため、新入社員と同じ仕事を担当しているという理由で時間を掛け年収1千万を240万円まで下げるのである。私は二回転職した経験があるので良く知っているが、転職先の年俸は現在貰っている年俸をベースに提案される。従って、「金銭解雇」を断っていると転職市場での価値が毀損してしまう。ちなみに48才で年俸240万円の人間など誰も興味を示さない。結局のところ、「成果主義」の採用は社員が「金銭解雇」を受け入れざるを得ない状況を構築するためのものであろう。

厳しい状況にある日本経済

企業は何も好き好んでかかる荒療治に取り組んでいる訳ではない。それだけ生き残りが難しくなっているのである。下記が最近目にした日本の経済状況悪化を示す実例である。何故か日本国民は楽観的だが、私は正直相当危ないと思っている。

先ず、財務省が公表する6月貿易統計を参照する。眼に飛び込んでくる数字は例によって冴えない輸出額と、コンスタントに膨らみ続ける輸入額である。6月の輸出は前年比2.0%減の5兆9,396億円で、2カ月連続で減少。気になるのは半導体等電子部品が8.7%も減少している事である。従来、スマホやPCといった完成品は輸入してもその中核部品は日本から供給していたはずだが、多分韓国や中国に取って替られているのであろう。

輸入は8.4%増の6兆7,619億円で、2カ月ぶりに増加している。原粗油(8.3%増)、石油製品(35.9%増)、液化天然ガス(7.6%増)などが増加している。今後も原油価格は右肩上がりで上昇し、一方、安倍政権が円安施策を継続すれば化石燃料輸入代金の膨張は不可避となる。

第二は、経済産業省が30日発表した6月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値が96.7で前月比で3.3%低下した事実である。製造業の在庫が積み増し、今後稼働を制限する事になる。

第三は、4~6月GDP7・1%減と予測 消費増税で落ち込み大きくである。消費増税の副作用でGDPが一定割合落ち込む事は予想されたがGDP7・1%減は大き過ぎる。企業が抱え込んでいる無能な社員の整理に移行するのは当然の状況である。

6月の鉱工業生産指数の悪化を受け、民間シンクタンク8社が30日まとめた4~6月期の実質国内総生産(GDP)の予測平均は、年率換算で前期比7・1%減となった。従来予測の中心である4~5%減から落ち込みが大きくなり、回復が遅れる可能性も出てきた。4月の消費税増税から約4カ月が経過し、物価上昇に伴う個人消費の減速と企業の生産低下、輸出の不振など直近の経済指標は足踏みが目立ち、景気に対する市場の見方は厳しくなっている。

最後は、多分国内製造業に引導を渡す事になるであろう電力料金の今後の大幅値上げである。日経ビジネスは、電力ショックが日本を激変させるとセンセーショナルに伝えている。震災前比較で値上がり幅の一番大きな北海道電力の場合で61.5%との予測で、これでは製造業は堪らない。廃業するか、或いは海外移転かの二者択一であろう。

関電も関電の最終赤字290億円 社長、再値上げに含み4~6月との事である。私は再三再四、原発停止により電力会社は赤字になり、その尻拭いは結局国民がやる事になるといって来たが、そういう事である。尻拭いとは値上がりした電力料金の支払いのみならず、生き残りのため企業が人員解雇に走るので、リストラされてしまうという事である。