迷走を続ける籾井勝人、NHK会長

NHK会長に就任して既に半年が経過するというのに、相変わらずこの籾井会長というのは何をいっているのか良く分らない御仁である。そもそもNHKは公共放送であり、国民に取って分り辛い話を噛み砕き分り易くして説明するのが仕事のはずである。しかるにこの籾井会長は対象とする案件を消化不良、充分に自分の頭で理解せぬまま適当に発言を垂れ流し、その結果世の中を不必要に混乱させているというのが私の見立てである。

NHK、3年以内にネット視聴でも受信料 籾井勝人会長が徴収意欲を拝読。NHK会長に就任して既に半年が経過するというのに、相変わらずこの籾井会長というのは何をいっているのか良く分らない御仁である。そもそもNHKは公共放送であり、国民に取って分り辛い話を噛み砕き分り易くして説明するのが仕事のはずである。しかるにこの籾井会長は対象とする案件を消化不良、充分に自分の頭で理解せぬまま適当に発言を垂れ流し、その結果世の中を不必要に混乱させているというのが私の見立てである。今回は籾井会長発言の何処に矛盾があり、一方、籾井会長発言から透けて見えるNHKの本音に焦点をあて論考を試みる事にした。

受信料の全世帯義務化については松本NHK前会長が明確に否定している

私は、NHK、受信料の全世帯義務化という詭弁で、NHKを視聴しようがしまいが、有無を言わさず国民から一定金額を徴収する、実質「NHK税」という新税の導入を厳しく批判した経緯がある。これに対し、NHK、受信料の全世帯義務化は誤報?で説明した通り、当時のNHK会長、松本正之氏は真っ向から否定している。

松本正之NHK会長記者会見 (NHK 2013/12/5)

Q.「受信料制度を抜本改正し、支払い義務化もあり得る」という文書が経営委員会に示されたと思うが?

A.誤解があるといけない。経営委員会とはいろいろな議論をするが、その資料は非公開であり、「こういう見解」というものを出したことはない。資料は検討材料であり、その中でいろいろな議論をしている。一部新聞で報道されている「義務化を決めた」というような議論はしていない。

GoHoo 2013年12月8日付「受信料『全世帯に義務化』 NHK『検討の事実ない』」より転載。

半年前に前任者が真っ向否定した話を、後継者が何の理由説明もなく蒸し返すというのは真面な組織では有り得ない話である。

籾井会長はNHKオンデマンドを知らないのか?

籾井会長発言を要約すると下記の通りである。

NHKの籾井勝人会長は、3年以内にインターネットを通じて、パソコンやスマホでも放送と同時に番組を見られるようにする「同時再送信」を実現し、ネット視聴者からも受信料を徴収する意向を明らかにした。朝日新聞デジタルなどが報じた。

一見尤もらしい発言だが、良く考えてみると「籾井会長はNHKオンデマンドを知らないのか?」という疑問に辿り着く。サービスメニューに従来のオンデマンドにライブ放送(同時再送信)を追加するだけの話である。

NHKオンデマンドとは?

NHKオンデマンドの仕組みについては、NHKが公開しているNHKオンデマンドとは?を参照する。これで同時再送信を行い課金する事は何の問題もないはずである。

何故NHKオンデマンドで対応しないのか?

NHKオンデマンド会員の増加が少なく売り上げも微々たるものである。これでは、多分サービスメニューにライブ放送(同時再送信)を追加したところで大勢に影響はないだろう。NHKとしてはライブ放送(同時再送信)を改めて開始する意味がない。もっと露骨にいえば、NHKのコンテンツでは課金に耐えられないという事である。

気になる法改正への期待

籾井会長が法改正を示唆した点、具体的には下記記事内容は気になるところである。

現在の放送法では、放送と同時に番組をネット配信する「同時再送信」は国内ラジオと大規模災害時、国際放送に限られており、法改正にも期待を寄せた。

文化庁が公開する、放送の同時再送信の円滑化を参照する。結論をいうと、この件は「自動公衆送信」で既に対応可能というのが、私の考えである。勿論、従来の放送に加えて同時にネット公開するとなれば芸能事務所は出演料の増額を求めるであろう。しかしながら、その交渉は飽く迄商業ベースの話であり、法律解釈とは別に考えねばならない。

放送の同時再送信を円滑に実現するための制度面の整備の一環として,一定の範囲において実演家等の権利を制限するなど,放送の同時再送信に関する著作権法上の権利関係の見直しを行うことが,本改正の内容になっています。具体的には,「自動公衆送信」による放送の同時再送信について,実演家及びレコード製作者の権利を制限し,許諾を要しないこととするとともに,実演家及びレコード製作者への補償金の支払いを義務付けることとし,また,あわせて,「有線放送」による放送の同時再送信については,有線放送事業の拡大等を踏まえ,実演家等に新たに報酬請求権を付与し,均衡を図ることとしています。なお,著作権については,今回の改正による変更はなく,「有線放送」,「自動公衆送信」ともに許諾を得ることが必要です。

それでは、籾井会長は如何なる法改正を期待しているのか?

飽く迄私の個人的な推測である事を先ず断っておきたい。現行法で番組のネット公開に何ら問題がなく、しかも課金のシステムが既に完備している事から、実際に視聴した人にのみへの課金ではなく,スマホ、タブレットPC、パソコンといったネット端末保有者に強制的に「受信料」名目でNHKへの支払い義務を負わせたいのだと思う。私が従来から批判を繰り返している「NHK税」の創設と理解して貰って構わない。従って、籾井会長の思惑は放送法第64条(受信契約及び受信料)第一項への追加という事になる。

=現行=

1.協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。

=NHKが期待する訂正後=

1.協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者、及び協会によりネット公開された番組を再生することのできる通信端末を所有するものは、協会と受信並びに再生についての契約をしなければならない。

=結局NHKは何がやりたいのか?=

従来は国から割り当てられた周波数帯域に「放送」を垂れ流し、受信設備(テレビ)所有者から放送法第64条(受信契約及び受信料)を盾に「受信料」の名目で月額料金を徴収して来た。しかしながら、NHKの主たる視聴者は高齢化し、その一方若い世代のテレビ離れは顕著である。従って、今後は周波数帯域のみならずネットにも番組を垂れ流し、テレビの時と同様ネット端末所有者から月額料金を徴収したいのであろう。誠に以て自己中心的、身勝手な考えといわざるを得ない。

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