BLOG

NHKは日本に必要なのか?

2014年02月14日 01時25分 JST | 更新 2014年04月15日 18時12分 JST

私事で恐縮だが昨日NHK問題に関連して雑誌の取材を受けた。NHK会長、籾井勝人氏の歴史認識をめぐる非常識な発言は国際的な批判を招き、日本のイメージを失墜させた。NHKの最高意思決定機関・経営委員会委員である作家の百田尚樹氏、埼玉大名誉教授の長谷川三千子氏の不用意な言動もまた視聴者から批判を集めると共に、国際的な非難の対象となっている。

一方、制作現場もマスコミ報道を見る限り詐欺師としか思えない、「両耳の聞こえない作曲家」として知られた佐村河内守氏を取り上げた番組「NHKスペシャル」を制作し、放送するという呆れた失態を犯している。NHKは組織の体をなしておらず上から下まで無茶苦茶という事である。普通の民間企業であれば破綻してしまう。体力のある一部上場企業であれば、流石に破綻は免れるかも知れないが、株価が暴落して経営者は株主から突き上げられる。

しかしながら、NHKはこういった危惧からは無縁である。主たる収入源が放送法によって保障された受信料であるからだ。それ故に、組織として緊張感がなく、綱紀は弛緩し、不祥事は果てしなく連続する。マスコミは都知事選挙が終了した事でもあり、ソチオリンピックが終われば4月のオバマ大統領の訪日までテーマを循環させながらNHKを叩き続ける積りであろう。NHKに関しては過去に下記を公表した経緯があり、この機会に再度今少し包括的に論点整理をしてみたい。

BBCは5年に一度「国民審査」を実施

NHKが同じ公共放送のBBCを手本、目標としている事は広く知られた事実である。しかしながら、BBC の場合5年ごとに存廃を決める国民投票が行われている事は殆ど知られていない。国民投票に於いては、「BBCはイギリスで最早不要」、「BBCは殆ど観てない」、「BBCの番組は詰まらなくなった」といった遠慮のない批判が噴出するそうである。その結果、経営陣、職員が緊張感を持つに至るのは当然である。

片やNHKはこういった「国民審査」を実施した事はない。従って、殆どの日本人は生まれた時に既に自宅にテレビ受信機があり、NHKが放送されていて、両親が迷う事なく受信料を支払うのを見て育つので、何となくそんなもんだろうと受け入れているのであろう。国民がNHKを結果として甘やかしている訳である。私はBBCを見倣いNHKも存廃を決める国民投票を実施すべきと考えている。時期としては再来年7月に予定されている参議院選挙に併せ実行するのが合理的であろう。

大リストラを断行したBBC

国民投票を実施すれば視聴者から多くの無駄が指摘される。視聴者の声や要望を無視する訳には行かないから、結果、大リストラを断行する事になる。一方、NHKがかかる抜本的な経営改革やリストラを行ったという話は寡聞にして聞かない。同じ日本国内でも、テレビ受信機を製造する家電メーカーは経営不振に苦しみ、「追い出し部屋」を設け、社員のリストラを懸命になってやっている。NHKのみが、まるで特権階級の如くリストラと無縁というのも可笑しな話である。矢張り、これも一定の是正が必要であろう。

テレビジョンセンターを売却したBBC

BBCはリストラの一環としてテレビ番組のスタジオとしては世界最大の施設であったロンドン市内にあったテレビジョンセンターを昨年3月末で閉鎖し、跡地を売却した。放送のデジタル化が完了すればテレビジョンセンターを経費の嵩むロンドン市内に置いておく必要はないからである。

ロンドンからの移転

ロンドンの本部から,子ども向けのラジオとテレビ番組,BBC Sport,ラジオのRadio Five Live(ニュース・スポーツ)とFive Live Extra,ニューメディア本部,研究開発,新規計画のデジタル・カリキュラムを含む学習の各部門がマンチェスター(イングランド北西部)に移転する。

約3千億円をかけて放送センターを建て替えるNHK

正直いってこの日経記事、NHK、放送センター建て替えへ 25年までに、を読んだ時は呆れ果てた。BBCが経費のかかるロンドン市内のテレビジョンセンターを閉鎖、売却しコストの安い地方に移転したのに対し約3千億円をかけて放送センターを建て替えるのだそうだ。それにしても、必要資金の3千億円はどうやって調達するのであろう? 矢張り、実質「NHK税」である受信料の全世帯義務化を無理やりにでも行い、これを担保に金融機関から借り入れるのであろうか?

受信料という麻薬

David Puttnam氏のこの講演が実に興味深い。民主主義とメディア(ジャーナリズム)の拘わり方。更には、「利益」と「共益性」の間でのメディア(ジャーナリズム)の立ち位置は古くて新しい問題、普遍的なテーマといって良いだろう。NHKは例外として受信料という名目で収入が保障され、このテーマから免責された訳である。目的は勿論こういった難しいテーマに煩わせる事なく「共益性」への奉仕に没頭して貰うためである。

しかしながら、日本国民が今実際に観ているのはこれとは全く真逆の現象である。NHKの会長は誤った歴史認識から妄言を吐き結果世界の顰蹙を買い、制作現場は佐村河内守氏を取り上げた番組「NHKスペシャル」を制作し、放送するという呆れた失態を犯した。そして、この様な状況であるにも拘わらず必要性が全く感じられない本社(放送センター)を3千億円かけて建て替え予定だ。自分で金を稼いだ事がないから金の有難味が分らない。従って、こういう無駄使いが平気で出来るのであろう。NHKは受信料という麻薬により重篤な薬物患者に成り果てたのではないのか?

政治権力に振り回されるNHK

NHKは本来政治権力とは一定の距離を保ち、権力に暴走があれば手厳しく批判しなければ「共益性」に奉仕した事にはならない。しかしながら、実際問題これは難しいのではないのか? 放送法第70条がそれを困難にしているからである。

放送法第70条(抜粋)

協会は、毎事業年度の収支予算、事業計画及び資金計画を作成し、総務大臣に提出しなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。


総務大臣が前項の収支予算、事業計画及び資金計画を受理したときは、これを検討して意見を付し、内閣を経て国会に提出し、その承認を受けなければならない。

結局のところ、NHKは国会(実態は政権与党である自民党)の許可がなければ何一つ出来ない。3千億円の新本社の建設を認めて欲しければ、NHKは自民党に対し千切れんばかりに尻尾を振り続けなければならない。これを象徴するのが今回公表された幹部人事である。政界に豊富な人脈を持つと思われる政治部出身の堂元光氏が副会長に就任する。

籾井勝人氏は放送に関しては所詮素人であり、NHK会長とは名ばかりで飾り物、携帯電話のストラップ状態になるはずである。結果、副会長の堂元光氏が実質NHKの最高権力者となり、国会対策、自民党との交渉を切り盛りする展開を予想する。こんなNHKに果たして公正、中立な報道を通しての公益への奉仕が可能なのか? 私は不可能と断言する。

さて、冒頭のテーマ「NHKは日本に必要なのか?」に戻らねばならない。私の結論は単純に「NO!」である。従って、二つの施策を提案したい。第一は、上述したイギリスのBBCに倣い再来年7月の参議院選挙に併せNHK存廃を決める国民投票を実施する事である。

今一つは、NHKには大変申し訳ないのだが国民のマジョリティーはNHKに対し「NO!」を突き付ける展開となると思うので、今から「受信料」からWOWOWやスカパーの様な「視聴料」収入に依存する事業モデルに転換する事をNHKが検討する事である。これはNHKの民営化という事であるが、勿論NHKやNHK職員に取って茨の道である事はいうまでもない。