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野党消滅の背景とは?

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参院選が終わって一週間が経過した。そして、世の中は落ち着きを取り戻しつつある。自民党の圧勝は予め予想された事であったが、選挙結果を受けての民主党を筆頭にした野党の混迷、混乱ぶりは、目を覆いたくなるような惨状である。きっと、「馬糞の川流れ」とはこういう状態をいうのであろう。民主党については理解出来る。民主党政権下、失われた3年3か月に対する国民の怒りは今尚深い。それにも拘わらず、民主党凋落のA級戦犯たる鳩山、菅元首相にはその自覚、反省が見受けられず相変わらず愚行を続けている。国民が眉を顰め、愛想を尽かすのも当然である。

とはいえ、折角定着しかけた二大政党制のスキームが振り出しに戻ってしまう事を惜しむ声があるのも今一方の事実である。自民党一党独裁の副作用として、今後傲慢になり暴走するのでは? と心配する声もある。戦前のナチズム、ファシズムを参照し、日本の民主主義の将来に対し警鐘を乱打する識者もいる。ついては、参院選が終わって一週間が経過したこの時期に野党消滅の背景を考えてみる事にした。

「決められない政治」の長いトンネル、「決断出来る政治」への期待

「決められない政治」という言葉が新聞紙上で使われ始めたのは、2008年の春先からと記憶している。前年の参院選で自民党が大敗し、衆参の多数派が異なる捻れ国会になっていたからである。結果、重要な案件が何一つ決まらず、日本の政治は漂流した。問題は、日本が漂流しようがしまいが世界は斟酌してくれない事である。隣国中国は領土的野心を隠そうともせず「尖閣」を舞台に武力を背景とした威嚇と挑発を繰り返した。一方、韓国は日本固有の領土である「竹島」への実効支配を誇示すると共に、日本軍による強制連行の事実が証明されていないにも拘わらず「従軍慰安婦」問題の持ち出しと共に謝罪をしつこく要求している。その背後にあるのは、1965年締結の日韓基本条約で一切の対日請求権を放棄している事実を無視し、これを蒸し返そうとするものである。

日本国民がこの状況に危機感を持ったのは当然の結果であり、同様、「決められない政治」から「決断出来る政治」への刷新を決断するに至ったのも極めて自然である。早いもので、既に二年半以上も前になるが、私はファシズムの影を執筆した。新春早々の時期に不似合いなタイトルでもあるし、余り賛同を得る事はないだろうと予想していた。しかしながら、予想に違い日本を代表する大企業に勤める友人達や、起業し経営者となった友人達から「共鳴」のサインを受け取った。そうなのである!この時点で既に日本国民は「決められない政治」への不満をマグマの如く溜め込み、「決断出来る政治」への転換に日本の将来を見出そうとしていたに違いない。

巧みな自民党の選挙戦略

先ず、自民党は昨年末の衆議院選挙を自民党の政権担当能力を全面に押し出し、民主党の無能さにほとほと愛想を尽かせていた国民の支持を得る事に成功した。結果、選挙に大勝し、政権は民主党から自民党に移行した。第二次安倍政権の誕生である。民主党時代に毀損した対米関係を復活させ、安全保障を確固たるものにし、国民を安心させた。そして、その日米同盟を基軸としてアジア、中東との外交も実りあるものにしている。

一方、アベノミクスと称される経済政策については毀誉褒貶があるものの、株価は野田政権末期の日経平均比較二倍程度に値上がりしている。この実績を背景に今回の参議院選挙では衆参の捻れを解消する事で「決断出来る政治」を確立し、日本が再び世界のリーダーに返り咲く事を訴えたのである。一方、これに対し民主党含め野党は中身の伴う具体的な政策を主張する事が出来なかった。自民党圧勝は選挙日以前に充分予測出来たし、国民の期待が「決断出来る政治」に集約された現状では、野党は政府、政権与党にいちゃもんを付けるだけの、邪魔者、迷惑な存在に過ぎず、消滅に向かう以外の道はないという取り敢えずの結論となる。

問われるのは野党の存在理由

政権与党の議員であれ、野党議員であれ議員報酬に差別はない。住居となる議員宿舎、執務の場となる議員会館の部屋も平等に割り当てられる。しかしながら、担当する業務は与野党で大きく異なる。与党であれば、政府省庁の大臣、副大臣、政務官といった、所謂政務三役に任命される可能性が高い。仮にそうなれば、現実に省庁の舵取りを任される事になる。省庁に役職を得る事が出来なかった場合は「党務」に就く事となる。衆参の捻れが解消し、「決断出来る政治」となった今であれば党で決めた政策は間違いなく実行される事となる。与党議員であれば、仕事は大変かも知れないが、本人の心掛けと頑張り次第では政治のダイナミズムのど真ん中でプレイし続ける事が可能である。当然、「経験」、「実績」、「能力」を積み増して行く事となる。

一方、野党議員の仕事とは一体何だろうか?基本的には与党自民党や政府の提出する政策にいちゃもんを付ける事位ではないのか?より具体的に言えば、国会でのタイミングの良い野次、テレビ受けする気の利いたコメント、更には、昔、菅元首相が厚労省大臣の時カイワレ大根をむしゃむしゃ食べた様な、テレビカメラの前での一発芸、瞬間芸という事になる。「政策」、「法案」に関与する事がない分この手の「パフォーマンス」でお茶を濁すしかない。高度成長に支えられた55年体制であれば、こういうお遊びも許容されたかも知れないが、「そういう事しか出来ない野党に最早存在理由はない」というのが、今回の自民党圧勝が示す民意ではないのか?

官高政低はこれからも続く

民主党が存亡の危機にある事は衆目の一致する所であろう。しかしながら、一体何が民主党をここまで追い詰めたのか? 党執行部を含め民主党議員は理解出来ていない様に見受けられる。これこそが、民主党が民主党たる所以かも知れないが。選挙に勝つための方便程度で留めておけば問題なかったのであろうが、「政治主導」を身の程知らずに現実に進めてしまった事が原因だと思う。これでは、官僚は面白いはずがなく、臍を曲げ、それなら「民主党の先生方でやって下さい」という話になり、「政策立案」も「法案作成」もちっとも進まず、結果、政治は停滞してしまった。これが、「失われた3年3か月」の本質だと思う。

国会議員の仕事は勿論「政策立案」と「法案作成」である。しかしながら、戦後長きに渡り国政を担って来た自民党はこれらの仕事を官僚に丸投げし、手柄はちゃっかり横取りして来た。勿論、官僚が動かねば政治が止まってしまうので官僚の面子、利益に配慮したのは当然である。国民は民主党による「失われた3年3か月」を通じ、しっかり政治の舞台裏を理解してしまった訳である。「政治主導」が如何に日本では非現実的なのかも理解している。従って、独裁体制を確立した自民党に国民が希望するのは、官僚を上手に使い熟し、政治を正しい方向に進める事である。「政治」は官僚に担がれた御神輿といっても良いかも知れない。仮にそうであれば、軽くて、大人しい方が担ぎ易い。御神輿に野党の座る場所がなくなるのも止むを得ない。

国民は今政治に何を期待しているのか? 野党に何が出来るのか?

確かに難しい質問である。10人に聞けば10通りの回答があるだろう。同様、100人に聞けば100通りの回答という事になる。政治の役目は異なる国民の意見、要望を斟酌し全体最適の政策を立案する事である。私が政府に今何を望むか?は日本の進むべき道とは?で説明の通りである。そして、特筆すべきは末尾の「2013年を財政再建元年とすべきである。自民党議員は既に説明した様に「政策立案」や「法案作成」といった仕事は官僚に丸投げしている。それでは何をしているのか?というと、基本的には「利益誘導」だと思う。「補助金」や「公共事業」の名目で選挙区地元企業に一円でも多く金を落とす。自分を応援してくれる特定の企業や業界に便宜を図る。そして、その見返りとして票を得て来た訳である。「地盤」、「看板」、「鞄」は選挙区地元企業や自分を支援してくれる業界、企業に対し御用聞き業務を熟す事で維持されている訳である。

問題は、政府に最早ばら撒く金がなく、一刻も早く財政規律回帰に舵を切らねばならない日本の財政状況である。従って、政治の目的は従来(55年体制)のバラマキから、国民、業界、地域への負担のお願い、痛みを分かち合う事の説明とお願いに取って代られる。解り易い例を二件参照する。先ずはTPPである。ウルグアイラウンドの時は6兆円強が補助金として国内農業に供与された訳だが、TPPではとてもではないがそんな金額が出るとは思えない。一方、輸入関税だが、米の778%を筆頭に国内農業団体の主張が通るとは同様思えない。結果、政府は国内農業団体に対し少額の補助金で輸入減税をお願いする事になる。一方、読んでいて気持ちが滅入るが生活保護費の引き下げも、貧困層に理解を求めつつ必ず実行せねばならない。

今少しマクロに言えば、一般会計予算で歳出金額が突出する「社会保障費」と「地方交付税交付金」には何としても大鉈を振るわねばならない。TPPに関連しての国内農業同様、高齢者、地方行政に歳出削減によって生じる痛みを引き受けて貰わねばならない。更には、10%への消費増税を早期に確定し、更なる増税を進めなければならない。消費増税は勿論不人気な政策であり、出来る事なら誰もやりたがらないのは当然である。しかしながら、衆参の捻れを解消した安倍政権は何としてもこれをやり遂げなければならない。さて、政治のミッションが明らかになったとして何か野党に期待出来るだろうか? 私は全く期待していない。何時まで経っても「正義」の仮面を被って、「TPP反対」、「国内農業を守れ」、「生活保護費引き下げ反対」、「高齢者を守れ」、「荒廃する地方」とか、後先を考える事無く、相変わらず無責任に連呼し続けるのだと思う。

結局の所、野党は何の役にも立たず、国民が安倍政権の今後の一挙手一動に眼を光らせ、細くて長い茨の道を財政再建という出口に向かって歩かせていくしかないのだと思う。「二大政党制は現在の日本の財政状況では時期尚早であり、財政再建後のお楽しみに取っておくのが無難だと思う。