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「ブラック企業」対策で「電話窓口」を作る事に何の意味があるのか?

2013年08月11日 23時59分 JST | 更新 2013年10月11日 18時12分 JST

ハフポスト、『ネオブラック企業』の相談もOK、『ブラック企業』無料相談は9月1日が報じる所では、厚生労働省は長時間勤務などを強いて労働者を使い捨てる「ブラック企業」の実態を把握するため9月1日から全国一斉の無料電話相談を実施すると発表した。そして、使い捨てが疑われる企業などに対しては取り組みを強化するのだそうだ。やるのは良いが、問題は「効果」が期待出来るのか?という点である。それから、この施策に対してどの様な「効果測定」を実行し、費用対効果を検証するのかというのも極めて疑問である。どうも、「ブラック企業」問題に対して鬱積する国民不満のガス抜きでしかないと思えてしまう。何故なら、問題の本質と向き合うのを避け、極々表面的な対処療法でお茶を濁しているからである。

「ブラック企業」問題の本質とは?

「ブラック企業」問題を真面目に解決しようとするならば、先ずは問題の本質を理解せねばならない。そして、この点については、以前の記事、「ブラック企業問題」は最早周回遅れの議論で説明しているのでこれを参照願いたい。繰り返しとなるが、(1) 要素価格均等化圧力により製造業は廉価な労働力を求め海外移転を加速する。当然これに伴い従来の国内雇用は消失する。一方、余剰となった労働力は労働条件が劣後する販売やサービ業に止む無く移転せざるを得ない。そして、企業の中には生産性の伴わない社員に対しサービス残業で調整する所も出て来る。(2) IT活用による従来のホワイトカラーの仕事の消失。(3) クラウドソーシングの台頭による労働市場の世界一元化。といった所が「ブラック企業」問題の理由、背景である。「国内労働市場」が今や一元化されつつある「世界の労働市場」に飲み込まれつつある中、個人がそこに埋没してしまい、結果、「使い捨て」の「消耗品」になってしまうという話ではないのか?

厚生労働省が監督を強めても「ブラック企業」問題は解決しない

世の中には、監督官庁である厚生労働省が企業に対し「管理」、「監督」を強化すれば問題が解決すると単純に考えている人も驚く程多い。思考力、想像力の欠如としか言い様がない。簡単な例を参照して考えてみれば直ぐ分る話である。例えば、最低賃金が時給@800円の場合、生産性が@500円しかない人間は本来雇用出来ない。しかしながら、「サービス残業」で融通を効かす事が可能であれば雇用出来る。勿論、「法令順守」の観点で問題があるのは事実である。

従って、厚生労働省が企業に対し「管理」、「監督」を強化すれば企業は生産性が最低賃金を下回る人間は絶対に雇用しない。のみならず、現存社員で同様生産性に問題ある(要は生産性が低い)場合は雇用調整に動くのは必然である。もっと分り易くいえば、厚生労働省の規制により、勤め先から搾取されていたサービス残業代金が支払われる様になると思っていたら、雇用調整(要は解雇)されてしまうという話である。その後は、更に条件の悪い非正規雇用か、或いは、「生活保護」受給か、といった展開ではないのか?

「ブラック企業」問題の解決策とは?

企業が易々と国境を越え、クラウドソーシングに代表される様に世界の労働市場が一元化される状況で国に出来る事は極めて限定的である。従って、国民は政府や役所に余り多くを期待すべきではない。自分自身の能力を高めるしか「道」はないと覚悟を決めるべきであろう。英語をある程度習得した上で、海外進出に活路を見出すべきと思う。現在製造業に勤務している人間であれば、勤め先が将来海外移転を加速する可能性が高い事を自覚すべきである。今担当している業務で専門性を磨く事は何より重要である。

私は、「海外留学」、「海外駐在」、「海外長期出張」を経験しているが、海外(発展途上国)での生活や仕事には、日本では予想もつかない問題が次から次へと起こる。水道の蛇口から水漏れが止まらない。トイレが故障して使えない。電気の配電盤が故障して停電状態。照明が使えないのは取敢えず蝋燭で代用出来るが、冷凍庫に保管中の保存食が駄目になるのは辛い! 会社で手抜きの酷い部下を手続きに従い(警告書を3度手渡す)解雇したら労働事務所に告訴された。その後、法外な示談金を請求して来るので弁護士と相談して裁判で決着する事にしたら、初めは自宅への無言電話から、次には「お前を殺す!」という内容の脅迫状の郵送、車での移動中も気持ちの悪い尾行等々。

先送りすると、当然の結果として問題が増えて何から解決して良いか判らなくなる。人の情として難しい事であるが、嫌がらず、逃げず、片端から解決に向かう事を「習い性」にする事が何より重要である。これは、海外に出て身に付く物ではなく、日本にいる時から努力し、意識して習得すべき対処方法と思う。これが身に付いてないと海外に出て多分精神を病む事になる。海外では頭でっかちは使い物にならず、「融通」が効いて「タフ」な精神構造が求められる。

ITを習得し、使い熟すのは当然である。それを、自分自身の武器にすべきである。一方、10代の若者であれば早い内からクラウドソーシングに接すると共に、活用し、先ず自分自身の市場価値を知る所から始め、価値を上げて行く事に努力し、それを、日々の習い性にすべきと思う。市場を知り、市場に寄り添い生きて行くという事である。そういうライフスタイルを早い内からやっておけば、20代になって「ブラック企業」の如き陥穽に落ち込み、身動きが取れなくなるという事態は回避出来るはずである。

一般の大学は職業訓練に特化すべき

余り議論されないが「ブラック企業」問題の背景には、労働市場で使い物にならない大学卒業生が毎年量産されているという現実がある。現在の大学のシステム、つまりは、入学金を支払い、毎年の授業料を4年間払い続ければ自動的に大学の卒業証書が手に入る様な現行システムでは当然の結果である。この記事によると文部科学省は研究大学としてトップ20の大学を選出したとの事である。遅きに失した感はあるがこれは朗報である。東大を頂点として、残り19の選ばれた大学がこれに雁行して世界に通用する研究を加速すべきである。

一方、今回選択から漏れた800弱の大学は自らのアイデンティティ、何のため? 誰のため? どちらの方向に向かい? 何をするのか? を今後厳しく問われる事になる。当然の結果として、旧態依然の経営を続ける大学は淘汰される事になるだろう。職業訓練に徹すべし! といえば、プライドの高い大学の先生方は抵抗するだろうが、一般の大学は、実用的な(社会で役に立つ)教育を学生に行い、決して卒業後ブラック企業などに職を得る事がないように努力すべきと思う。