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東京オリンピック開催をどうやって経済成長に結びつけるか?

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東京オリンピック開催決定の熱狂は通り過ぎ日本社会は再び平静を取り戻した。日本の様な成熟した先進国であれば当然の事である。東京でのオリンピック開催は国民の意識を一つにすると共に、より良い日本の未来のために今何をなすべきか? を日本国民に考えさせる良い機会を提供してくれたと思う。日本にとっての喫緊課題は増え続ける国債発行残高が示す財政問題であり、経済成長はこの特効薬になり得る。東京オリンピック開催をどうやって経済成長に結びつけるか? は今真剣に考えるべきテーマの一つである。

■2020年オリンピック開催が東京に決まった背景とは?

ニューヨークタイムスのこの記事が簡潔に説明してくれている。IOCの委員達はリスクの種類は異なるが、それぞれが2020年オリンピック開催に際し高いリスクを抱えるマドリッドとイスタンブールを忌避して、既に夏のオリンピックを一回、冬のオリンピックを二回成功させている、安全、安心な日本を選択したのである。最後のプレゼンテーションでのオリンピック東京招致委員会メンバーがIOC委員の心を掴むべく強調したのは、「時間通りに電車が出発する」「落としものは警察に届く」「心を込めておもてなしする」「計画通りに建物を造る能力がある」といった、日本では小学三年生でも当たり前と感じる様な内容であった。しかしながら、IOC委員の心に刺さったのはこの日本の「愚直な誠実さ」であった。これこそが日本の強みなのである。

IOCの委員達が東京開催の決断を行うに際し福島第一原発の放射能汚染水問題が影を落としたのは想像に難くない。しかしながら、現地に乗り込んだ安倍首相の汚染水は確実にコントロールされており問題ない。次いで、「さらに完全に問題のないものにするため抜本解決に向けたプログラムを決定し、着手している。日本の首相として(子どもたちの)安全と未来に責任を持っている。日本に来るアスリートにも責任を持っている。その責任を完全に果たす」という言葉で納得してしまった。思うに、これは何も安倍首相がIOCの委員達に信用されているからではなく、日本や日本人が過去の行いから信用されており、「日本の首相がそこまでいうのであれば信用してみよう」という事だと推測する。

■日本政府は福島第一原発事故処理に責任を持って取り組むべき

東京が2020年オリンピック開催地に選ばれたという事は、取りも直さず福島第一原発事故処理を日本が逃げずにきちんとやり遂げると世界が確信している事を意味する。この「信用」と信用を勝ち得た「日本人」が日本の資産の中核ではないのか? 世界の日本に対する信用を裏切る様な事は絶対にしてはいけない。何故ならそれは日本にとっての自殺行為であるからだ。

日本政府が福島第一原発事故処理にどの様に取り組むべきか? については福島第一原発事故処理が進まない背景とは?で説明した通りである。汚水処理対策のみに矮小化する事なく日本政府が前面に出て福島第一原発事故処理を引き受けるべきである。いうまでもないが、現在事故処理を担当している東京電力は会社更生法に従い破綻処理される事となる。

■期待出来る原発輸出

国費を投じて福島第一原発事故処理を実行する事に眉を顰める人が多いのも事実である。そして、感情的には分からない事もない。しかしながら、日本が世界に先駆けて原発事故処理を一気通貫成し遂げる事は大きな実績であると共に、事故処理を行う上で必要とされる殆どのノウハウを蓄積する事を意味する。

昨年末韓国が中東・UAEの原発商戦を400億ドルで受注した話は世界の原発関係者の耳目を集めた。サウジもこのUAEに続けと野心的な原発計画を実行予定である。更には、UAE以外のサウジに雁行する中東産油国がこれに続く可能性は勿論高い。つまり、値段が上がった原油は輸出に回して外貨を稼ぎ、国内のエネルギーとデサリ(海水の淡水化)は原発で行うと言うものである。原発商戦の活況が期待出来るのは何も中東、湾岸地域に限る訳ではない。日本は今後TPPに加盟する事が確実な情勢であるが、アジア・太平洋地域での経済発展は確実であり、電力需要も増大する。原油価格が高騰を続けるのは確実であり、一方液化天然ガス価格も原油価格に連動している事から同様に高騰する。アジア・太平洋地域の新興産業国が原発採用に舵を切る可能性は極めて高い。

高速鉄道と並び原発は日本の主力商品に育つべきであり、福島第一原発事故処理を通して今後身に着ける「事故処理のノウハウ」は競合に打ち勝つ上での有力な武器になると思う。従って、日本政府は事故処理という後ろ向き案件として捉えるのではなく、これに拠り世界の中での日本の信用を更に高め、今後原発市場の急拡大が期待される中東産油国やアジア・太平洋の新興産業国への日本企業の原発輸出を側面支援するという前向きの意識を持って取り組むべきと考える。

■東京一極集中は国益に叶う

20世紀が国家間競争の時代であったなら、21世紀は間違いなく都市間競争の時代といえる。従って、東京が世界で最も魅力的な都市になる事は国益に資する。東京が機関車役になり、大阪、名古屋が東京に雁行する。更に、札幌、仙台、福岡などが大阪、名古屋に雁行するというものである。各県庁所在都市がこれを追いかけるのは当然である。

■東京に足りないもの

JR、私鉄、地下鉄と公共交通に関しては「正確さ」、「利便性」、「安全」など全ての面で既に世界最高峰に達している。公衆通信網は今少し充実さすべきかも知れないが7年後には問題ないレベルに達しているはずである。矢張り問題は「おもてなし」を実際に担当する我々日本人の英語のレベルと思う。如何にハードウェアが優れていても、初めて日本を訪れた外国人は勝手が分からず戸惑うのは当然である。表参道を歩いていて日本の高校生に明治神宮にどうやって行ったら良いか聞いたら、タクシーは必要ない、歩いて数分と言い、道順を丁寧に教えてくれた。明治神宮でお腹が空いて、同じく日本の大学生に安くて美味い寿司屋を尋ねたら渋谷にある店を教えてくれ、JRの原宿駅まで送ってくれた。当然、日本人の「おもてなし」に感激し、日本贔屓になるはずである。

私は世界の半分位の国を実際に訪問している。当然の事として、好きな国もあればそうでない国もある。矢張り、好感を持つに至った国には偶々会った人に随分と親切にして貰った経験がある事が多い。例えば、フランス人は冷たいと批判する人が多い。しかしながら、私の経験は全く真逆である。フランス人はこちらが依頼しない限り無遠慮に立ち入って来たりはしない。しかしながら、下手なフランス語であっても「○○に行きたいのだが、どうやって行けば良い?」とか聞けば本当に親切、丁寧に教えてくれる。近くであれば大概同行してくれるのではないか? そういう経験を度々しているので、私は大のフランス贔屓だ。

効果的な「おもてなし」をするためには英語が喋れなければならない。オリンピックがあろうが、なかろうが、本来英語位喋れてしかるべきなのである。オリンピックを機会に日本人は老いも若きも英語が喋れる様になれば良いと思う。若者にとって外国人と英語で自由にコミュニケーションが取れるというのは大きな自信になるに違いない。海外留学、海外駐在、外資系企業への就職、海外での就職など人生の可能性が格段に広がるに違いない。

■オリンピックは地方経済にとって最後のチャンス

私の様な主張に対し、「東京への一極集中」が加速するとか、或いは、「地域格差」が拡大するとか、色々理由を付けて批判する人が多いのも事実である。しかしながら、これらの批判は正鵠を射たものとは言い難い。3年近く前になるが、日本の地方都市で説明した様に、地方の沈滞は主として地方自らの怠惰に起因し、その怠惰を可能にしているのは「地方交付税交付金」という名の、国から地方行政への財政援助である。援助慣れしてしまい自助努力を忘れてしまっているのである。

地方はオリンピックで東京を訪れた外国人旅行者を傍観している様では話にならない。先ず、東京から足を延ばし財布と一緒に来て貰う事が第一。次いで、出来れば地元に宿泊して貰い、地元の名物料理を食べ、地元の名産を土産として購入して貰う様に努力しなければならない。どうやったら来て貰えるのか? どうやったら地元に宿泊して貰えるのか? どんな食事や土産が喜ばれるのか? これから必死になって考えるべきである。地方が活性化すれば日本経済が成長するのは当然である。