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『ほこ×たて』のヤラセ問題が焙りだしたのはフジテレビの病巣

2013年10月28日 14時12分 JST | 更新 2013年12月27日 19時12分 JST

ハフポスト、『ほこ×たて』のヤラセ問題と「組織の論理」を拝読。皮肉な事に、丁度今は食材偽装が関西の名門企業、阪急阪神ホテルズで発覚し、稼ぎ場とばかりに各テレビ局はこの事件の追及に忙しい。どうも、「人の振り見て我が振り直せ」という諺は、テレビ業界には通じない様である。見ておれないのでテレビ業界に対し一言言いたいのだが、重箱の隅をつつく様なまねはしたくない。枝葉の部分を幾ら議論したとこで、結局は対処療法に終わってしまい根治する事はない。ついては、何故今回の『ほこ×たて』のヤラセの様な下品な問題が繰り返しテレビ業界で発生するのか? 根本原因を考えてみたい。

■テレビ局は一般の民間会社とは異なる

別に報道番組ではないので、番組を面白くするためのヤラセくらい認めても良いのでは?という意見が幅広い層から支持されているのは事実である。しかしながら、『ほこ×たて』のヤラセ問題と「組織の論理」を読んだ印象では、超えてはいけない一線を越えてしまっていると思う。何故なら、テレビ局は国民の共有財産である「電波帯域」の割当てを受け、サービスを行っている認可事業であるからだ。そして、電波利用料の負担が携帯キャリアー各社の一割程度と極端に優遇されている。更には、地デジ推進の名目で「アナアナ変換」と称し、私企業のインフラに過ぎない伝送路の整備に1,800億円の国費が投入されている。これ以外にも難視聴対策他の名目で2,000億円超の国費が使われた筈である。

国民の血税が使われる以上、公共性に対し最大限の配慮が必要である。ヤラセである事を知りながらフィクションとして楽しむ視聴者がいる一方で、番組内容を真実と受け止めているのが大部分の視聴者層ではないのか? 視聴者には幼児から高齢者、外国人など異なるリテラシーを持った人がいる。余程注意しなければ、テレビ局への信頼を逆手に取って、結果として大部分の視聴者を欺き、裏切る事になってしまう。フジテレビには、この辺りの想像力、視聴者への配慮が欠けていると思う。

■フジテレビ、『ほこ×たて』のヤラセ問題は氷山の一角? 

気になるのは、果たして『ほこ×たて』のヤラセとは今回告発のあった一件のみなのか? フジテレビが放送する番組で問題なのは『ほこ×たて』のみなのか? フジテレビのみが問題で、他の放送局は公共性に対し最大限の配慮を行っており問題はないのか? といった点である。検索したら早速、ほこ×たて、昨年も過剰演出...車と猿を糸で結ぶという読売新聞記事が目に飛び込んで来た。更に、BPOのホームページを参考までに閲覧したら、探すまでもなく、フジテレビ「生爆烈お父さん 27時間テレビスペシャル!!」に関する委員会の考えがトップページにあった。指摘内容は実に手厳しい。ここから先は、飽く迄、私の個人的な想像であるが、濃淡はあるにせよフジテレビの問題は民放にすべからく共通していると思う。それでは、何故、テレビ局はヤラセや過剰な演出に手を染めねばならないのであろうか?

■テレビ局は最早斜陽産業

「貧すれば鈍する」という諺がある。ネットに視聴者を取られたら、結果視聴率は下がり続け、業績悪化に直結してしまう。テレビ局は、本来抜本的な対策を講じ事業改革を断行すべきなのだが問題を只管先送りし、弥縫策に終始しているのではないのか? この辺りの背景を、主要テレビ局の複数年に渡る視聴率推移をグラフ化してみる(2013年)を参照し、説明を試みたい。全日のHUT(テレビの総世帯視聴率(Households Using Television)、テレビをつけている世帯)が鮮やかに衰退する産業としてのテレビ放送を示している。

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テレビ局(民放)は広告収入で成り立っている。視聴率は広告単価に直結するから、視聴率がこんなに綺麗な右肩下がりでは経営が苦しくなるのは当然である。

テレビ局は本来であれば、より質の高い番組の制作に注力し視聴率の回復を目指すべきであるはずだ。そして、高品質な番組の海外輸出や、或いは、ネット公開により更なる利益の積み増しに努力すべきと思う。しかしながら、大変残念な話であるが真正面から問題に対峙する事を避け、小手先の対処で急場を凌ごうとしているのではないか? 仮にそうであれば、所詮、問題の先送りであり、そうであれば問題は更に深刻且つ巨大化するはずである。

■テレビ業界の中でもフジテレビは負け組

テレビ業界が斜陽産業である事は既に説明した通りである。そして、主要テレビ局の複数年に渡る視聴率推移をグラフ化してみる(2013年)を見る限り、更にその中でもフジテレビは負け組である。

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この数年の動向として、「テレビ朝日とテレビ東京の持ち直し」「日本テレビ・NHKの軟調」「フジテレビ・TBSの不調」が確認できる。特に不調組のTBSとフジテレビの落ち込み具合が著しい。後者は5年ほど前に急落を見せた後に横ばい傾向へと移行したので、先行きに可能性はあるが、フジテレビはこの5年間ほぼ継続して下落のさなかにあり、特に直近の2012年度では1.6%ポイントもの大きな下落を示している。このままではTBSに続き、10%切れとなるかもしれない。NHKも傾向としてはTBSと似たようなものだが、下落具合が穏やかなのが幸いなところ。


一方でテレビ朝日はこの数年、少しずつだが着実に視聴率は回復傾向にある。特に2012年度は2006年度以来久々に12%台を回復し、主要キー局では堂々のトップに躍り出ることとなった。同社の決算短信補足資料にも「年度平均視聴率ではゴールデン・プライムで開局以来初の第一位を獲得」との文言が大見出しで踊り、その快挙ぶりが再確認できる。

主要テレビ局の複数年に渡る視聴率推移をグラフ化してみる(2013年)

この状況で経営が株主から求められているのは、「経費削減」と視聴率上昇による「売り上げ増」であると推測する。仮にフジテレビの経営が無能であれば、如何なる指示を現場に出すだろうか? 今回問題となっている『ほこ×たて』のヤラセ問題や、『生爆烈お父さん27時間テレビスペシャル!! 』に対するBPOの主張に接する限り、「番組制作費の削減」と「視聴率増」を同時に指示しているとしか思えない。そんな、ブレーキとアクセルを同時に踏む様な指示を出したら、現場(制作プロダクション)は「ヤラセ」に走るか、「粗暴で下品」な企画に走るくらいしか思いつかなくなってしまうのではないのか?仮にそうであれば、フジテレビの不祥事は構造的なものであり、これから先も繰り返される事になる。その結果、チャンネルとしての信頼を喪失し続ける事になるのは必至である。先に「貧すれば鈍する」といったのは、こういう実態を示したかったからである。

■ライブドア事件とは結局何だったのか?

フジテレビ関係者に取っては日枝会長以下不愉快な事件であり、余り思い出したくもないだろう。率直にいって随分と不思議な事件であったと思う。検察が悪質極まりないと主張し、堀江元社長に懲役4年を求刑した。これに対し東京地裁で判決公判が行われ、懲役2年6ヶ月の実刑判決が言い渡された。検察の主張をほぼ認めたと理解して良いだろう。しかしながら、幾つかの資料を読んでも具体的な罪状としては「有価証券への虚偽記載」くらいしか見当たらない。しかも、上級裁(高裁、最高裁)への上告は何れもあっさりと棄却されている。大変残念であるが「刑事司法の機能不全」と理解せざるを得ない。

巷間伝え聞く話としては、ニッポン放送の買収によりフジテレビ支配を目指した堀江元社長が検察の逆鱗に触れ、この様な残念な結果になったという事である。勿論、私には真偽を確認する術はないが、あり得る話と思う。まるで守護神の如く検察はフジテレビを守った訳である。私は、ライブドア事件当時の検察の過保護に現在のフジテレビ凋落の一端があると理解している。稲作農家同様特定の産業を保護すればする程弱体化するという事である。いうまでもないが、ライブドアと堀江元社長の挑戦から検察はフジテレビを守る事が出来た。しかしながら、下落を続ける視聴率を反転させる事が可能なのはフジテレビの自助努力のみである。そして、その可能性は低い様に見受けられる。