キャロライン・ケネディ駐日大使は日本外交の切り札となるのか?

今日、キャロライン・ケネディ駐日大使が着任する。「初のセレブ大使」であり、当然のことながら安倍内閣は外交の切り札として充分に活用せねばならない。一方アメリカ外交としても、アメリカの至宝ともいえるケネディブランドを活用し大きな成果を上げたいと望んでいるはずである。

今日、キャロライン・ケネディ駐日大使が着任する。「初のセレブ大使」であり、当然のことながら安倍内閣は外交の切り札として充分に活用せねばならない。一方アメリカ外交としても、アメリカの至宝ともいえるケネディブランドを活用し大きな成果を上げたいと望んでいるはずである。今日から一週間後の22日は、ケネディ駐日大使父親のケネディ元大統領が凶弾に倒れたあの「ダラスの熱い日」から丁度半世紀である。従って、22日になれば世界のメディアが「ダラスの熱い日」や「ケネディ家のその後」を取り上げるはずである。そして、ケネディ元大統領長女のキャロライン・ケネディ氏が駐日大使として日本に赴任している事を知り、成熟した日米関係と、深化した日米同盟を理解する事になる。

■ 日米関係を成熟させ、日米同盟を深化させたのはケネディ家

この事を、ジェニファー・リンド(米ダートマス大学准教授)の駐日大使キャロラインとケネディ家の「遺産」が具体的に説明してくれている。第二次世界大戦後の日米関係は当然の事ながら、敗戦国と戦勝国の関係であり、アメリカは日本を評価もしなければ信頼もしなかった。一方、日本国内の反米感情も現在とは比較にならない随分と過激なものであった。この状態がそのまま継続していたら今日の日本の繁栄はなかったに違いない。キャロライン・ケネディ駐日大使は父親や叔父同様日米関係を発展させてくれる事であろう。

日本にとっても、アメリカは、疑わしい同盟国だった。中国から距離を置くよう要求し、ソ連との核戦争に日本を引きずり込みかねなかった。不安が頂点に達したのは60年の日米安保条約改定。冷戦の危機感が日本人を脅かし、反米感情は高まった。

東洋史研究者のエドウィン・ライシャワー(後の駐日大使)は、こうした危うい日米関係を懸念し、より広範囲で強固な関係を築くべきだと提唱した。これに目を付けたのがケネディ大統領だった。

当時ケネディは、64年の大統領選での再選を見据え、外交的な成果を狙っていた。そこで、現職大統領として初となる訪日を計画。それに先立ち、弟で司法長官のロバートと、その妻エセルの訪日を62年に実現させた。

ロバートの訪日は、日米関係が大きく進展するきっかけとなった。ロバート夫妻は形式ばった会見を避け、一般の日本人と積極的に交流や対話を重ね、スターの力を見せつけるとともに親しみやすさで人々を魅了した。

ロバートは、労働者や左翼学生団体など、最も手ごわい反対派にすら好印象を与えた。特に、学生の怒号が飛び交うなか行われた早稲田大学での講演では、反対派にも堂々と議論を呼び掛け、強い印象を残した。

ケネディ大統領は63年に凶弾に倒れ、自身の訪日はついにかなわなかった。だがロバートの訪日後、日米は協力してさまざまな団体を設立し、より深く、広範囲な交流を展開して国民の支持を得るようになっていった。

■ アメリカは日本Pivotでアジア戦略を展開する

私は、キャロライン・ケネディ駐日大使任命はオバマ政権が「アメリカは日本Pivotでアジア戦略を展開する」事の分り易い意思表示と理解している。第二次安倍政権となり、集団的自衛権の行使を認可する事を既にアメリカに通知済みである。一方、環太平洋パートナーシップ(TPP)に協力する形で日米関係を盤石にする事もほぼ規定路線である。これにより、アメリカは太平洋・アジア地域が平和と繁栄の海となる事を確信し、日本Pivotで安全保障、通商などのアジア戦略を展開する事を決定したのだと理解している。

■ 中東にまで広がる日米連携

1978年のキャンプ・デービッド合意以降、エジプトは随分とアメリカを助け中東和平に貢献した。しかしながら、アラブの春以降政治は混迷し視界不良の状況が続いている。一方、中東におけるアメリカの重要同盟国であるイスラエル、サウジアラビアともにオバマ政権のシリア、イランへの対応に不満を強め、アメリカとの関係はギクシャクしている。中東で、現在アメリカが頼りに出来る同盟国といえばトルコ位になってしまった。そして、日本はそのトルコに対し、ボスポラス海峡の地下鉄トンネルのみならず、「原発新設」、「衛星」、「戦車用エンジン」などで協力体制を確立しつつある。

中東における最大の不安定要因は何といってもイランである。現状を放置すれば1981年イラクに対し実行したバビロン作戦同様、イスラエルがイランの核施設を空爆する事は確実な情勢である。そうなれば、日本に原油と液化天然ガスを運ぶタンカーの通り道であるホルムズ海峡は火と機雷の海となり、日本のみならず世界経済は大打撃に直撃される。これを回避するためにはイランを国際社会に復帰さすと同時に、イランに対する経済制裁を緩和する必要がある。アメリカ政府が危惧しているのは、核協議が失敗すると、結果、アハマディネジャード等の強硬派を勢いづかせ、イランの政権が不安定となり、西側世界との対立が先鋭化する展開である。これを回避するために岸田外相はイランを訪問し11月9日ロウハニ大統領と会談を行い、包括的核実験禁止条約批准と国際原子力機関(IAEA)による査察受け入れを提案した訳である。

■ 尖閣問題

先ず大前提として、アフガニスタン、イラクからの米軍撤退と、南シナ海で領土的野心を隠そうともしない中国が再び米国の外交の主たるアジェンダになった、という自然な流れがある。2010年7月、クリントン前国務長官は東南アジア諸国連合(ASEAN)の会議で、中国の反発を顧みず南シナ海の領土問題を取り上げた。そして9月には、尖閣付近における中国漁船と海上保安庁の巡視船の衝突事件に際し、「尖閣は日米安保条約の適用地域と明言した。一方、日本は尖閣防衛のため自衛隊を増強し防衛力を高める。更に、集団的自衛権行使の認可に伴いアメリカ軍と協力する事で自衛隊の有効活用が可能となる。今回のキャロライン・ケネディ駐日大使着任により日米同盟の強化が確認されるので、中国は従来同様の挑発、嫌がらせでお茶を濁らす事になるのではないだろうか?

■ 韓国

朴大統領がキャロライン・ケネディ駐日大使着任後も相変わらず日本に対する誹謗中傷を続けるのかどうか正直良く分らない。しかしながら、アメリカとしては韓国軍が第一線に立ち国土防衛を担当し、アメリカ軍が後方支援を行う。更に、日本の自衛隊が集団的自衛権行使の認可によりアメリカ軍を支援するといった防衛体制を予定しているはずである。従って、BBCのインタビューでの説明はアメリカ政府担当者を困惑させたに違いない。

そもそも、BBCインタビューの骨子は、核開発を続ける北朝鮮の「悪循環」な行動(要は「核」と「ミサイル」で脅かした挙句最後には金をせびる)に対し、国際社会でどう取り組むべきか? という質問であったはずである。世界が期待した解答は当然、「日米との関係を強化、深化させた上で北朝鮮との交渉に臨む」といったものであろう。しかしながら、相変わらずの日本への謝罪要求と、それによって必然となる二国間の関係悪化は世界を失望させたに違いない。

日韓関係が悪化して以降、米国ワシントンの当局者、専門家の考えは「韓国が強硬過ぎる」という方向に傾いている。従って、朴大統領が考えを改めないと、韓国は厄介者、困り者として認知される様になるのかも知れない。事実、The New York Timesのこの記事は、韓国政府が革新系の少数野党・統合進歩党の「政党解散」を求めて憲法裁判所に審判を請求した事実を辛口で伝えている。朴大統領の父親が強権政治で有名な朴正煕元大統領でる事を説明すると共に、高木正雄という日本名を持ち、日本陸軍士官学校を卒業し、日本に忠誠を誓った血判書に署名した上で、満州国軍中尉で終戦を迎えた事を伝えている。朴大統領に取っては余り触れられたくない事実であり、大打撃に違いない。

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