BLOG

携帯電話税の一体何が問題か?

2014年06月22日 17時51分 JST | 更新 2014年08月20日 18時12分 JST

携帯電話税を自民議連が検討 自動車税の代わりかを、先程拝読。率直にいって余り筋の良い話ではない。それ故に法案化はないと思う。しかしながら、こういったテーマが話題となったタイミングで、あるべき電波政策を考える事は決して無駄ではないと思う。従って、こういった観点から今回は「携帯電話税の一体何が問題か?」について論考を試みる事にした次第である。

■ 見えて来ない徴税の大義名分

今時携帯電話を持っていない人は殆どいない。そうであれば、携帯電話税は実質的な人頭課税という事になる。所得に対して逆進性の強い税制であるため、現在ではほとんどの国で導入されていない様である。自民党有志の会合では、「公共の道路を使っている自動車も税金を払っているわけだから、公共の電波を使っている携帯電話も税金を払うべき」との意見が出たらしい。とはいえ、自動車が一定速度で走行可能な道路を建設するためには巨額の投資が必要である。更には、道路は交通量に応じて経時劣化するので毎年一定額の補修費用が発生する。これに比べ、国民の共有財産である電波帯域は元々存在し、経時劣化もしなければ、毎年一定額の補修費用が発生する訳でもない。従って、道路と電波帯域を同一視する事は出来ない。

■ 唯一可能なのは電波使用税としての徴収

苦しい解釈かも知れないが電波使用税としての徴収は可能かも知れない。現在各キャリアーは総務省に納付する「電波使用料」を契約者の月額料金にサーチャージして徴収している。「電波使用税」も同様のスキームで各契約者から徴収する事になる。異なるのは納付先である。この場合は「電波使用税」として財務省に納税する事になる。

■「電波使用料」と「電波使用税」を「電波使用税」に一本化出来ないか?

電波利用料制度が監督官庁である総務省の既得権益であるというのは、良く耳にする批判である。そして、電波使用料の歳出の中身についても不透明であるとか、無駄が多いとか、兎角批判が多い。監督官庁としての総務省の役目は、本来契約や所有権のルールをしっかりさせることであり、歳入を恣意的に分配させることではないはずである。現状システムだとどうしても腐敗の温床となってしまうのではと危惧する。ついては、「電波使用料」と「電波使用税」を「電波使用税」に一本化し、各キャリアーは一括して財務省に納税する様な制度設計に改めるべきである。総務省としての現状の歳出項目は財務省に予算要求し、通常の予算化を図るべきである。これにより、概算要求の段階から財務省のチェックが入るので無駄な発注や冗費が削減され、競合見積りの恒常化から経費が画期的に圧縮されるはずである。

■「電波使用料」を「電波使用税」に改め、放送局も応分の納税を行うべき

この議論を進める上で一言いっておかなくてはならないのは、放送局は殆ど「電波使用料」を納付しておらず、無償に近い状態で電波帯域を使用しているという実態である。少し古い資料だが、テレビ局全体の電波利用料負担は総計で34億4700万円にしかならないのに対し、営業収益は3兆1150億8200万円。電波の"仕入れコスト"は、営業収益のわずか0.1%というのは、矢張り異常過ぎる。テレビ局や総務省電波部に勤務する人間は慣れ過ぎてしまって異常に気付かないのであろう。テレビ局は年収が高い事で有名である。そういった裕福な企業が本来納付すべき「電波使用料」を免除され、一方、一般国民が「電波使用税」の名目で新たな納税を強制されるとしたら、矢張り公平の面で明らかに常軌を逸脱している。テレビ局はせめて売り上げにスライドして、携帯電話各社程度の金額は負担すべきであろう。

■ アメリカ電波政策の新潮流

少し視野を広げアメリカ電波政策の新潮流を俯瞰して見る。6月2日にFCCが Incentive Auctions の実施規則案を公表した。注目されるのは、放送から通信への周波数帯移転幅の最大化を目的とするオークション実施方式案が提示された事である。世界の潮流は紛れもなく、周波数帯域の「放送」から「通信」へのリバランスであり、オークション実施による政府歳入の拡大である。安倍政権も携帯電話税の如き意味不明な増税案ではなく、アメリカに雁行し周波数帯域のリバランスとこれにより可能となるオークション実施による政府歳入最大化を目指すべきは当然である。

■ 変化を始めたNHK

朝日新聞が伝える所では、NHK、ネット利用拡大可能に 放送法改正案が可決との話である。

NHKがインターネットを活用したサービスを恒常的に実施することを可能にする放送法改正案が19日、参議院総務委員会で可決された。今国会で成立する見通し。ネット時代に適応し、放送と通信の融合を進める規制緩和となる。

NHKが抱える問題や直面する課題については、BBCとNHKNHKは日本に必要なのか?で説明した通りである。野垂れ死にが嫌ならコンテンツのネット公開を加速し、視聴者の利便性を高める事でチャンネルロイヤルティーの維持を図るしかない。

■ BBCというNHKに取っての先立ち

BBCがデジタル対応で進んでいる事は良く知られている。そのBBCの前会長Mark Thompsonは仄聞する所では、2009年に訪日した際、NHK幹部に対し「BBCは最早テレビ局ではない」と説明したそうである。その後の、コンテンツのネット公開の分野でのNHKの足踏みを見る限り、その時のNHK幹部は誰もMark Thompsonのこの言葉を理解出来なかったのであろう。NHKは今一度この言葉を噛み締めBBCの背中を追いかけるべきであろう。

さて、本題の「携帯電話税の一体何が問題か?」に立ち返らねばならない。一番の問題は本件を取進めようとしている自民党の有志議員が、上記説明した電波帯域の有効活用を目指したリバランスであったり、放送事業者の、従来の放送サービスから通信サービスへのパラダイムシフトといった、本来議論のベースとなる部分での無知と理解不足だと思う。私を含め日本国民の大半は民主党政権下の3年間で出来の悪い国会議員には愛想を尽かしてしまった。自民党には民主党の轍を踏まない事を期待したい。