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小保方晴子氏のSTAP細胞関連騒動が焙り出した大学の構造問題

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小保方晴子氏のSTAP細胞関連騒動について、をハフポストに発表してから4日が経過した。論点を明瞭にするために敢えて飛ばし気味に書いた積りだったが、その後直ぐに早大で次々に「論文コピペ疑惑」が浮上 小保方氏は先輩の手法を見習った?、の様な記事がネットを席巻し、私が主張した様に今回のSTAP細胞関連騒動が小保方晴子氏の個人的な問題で無い事が国民の認識になりつつある。以前から既視感を感じていたが、阪急阪神ホテルで発覚した食品偽装が、その後あっという間に日本国中に延焼したのと同様である。

幸いな事に、記事を公表したご縁で複数の現職大学教授や大学に勤務する研究者の生の声を聴く事が出来た。私は何も早稲田大学に個人的に恨みがある訳ではない。しかしながら、今回のSTAP細胞関連騒動の原点でもあり、且つ、調べてみると「成程な!」と合点が行く点が多い。従って、必然的に下記する様に早稲田大学の実例を参照してしまう事になる。

■大学教授の指摘とそれに対する考察

結論からいってしまえば、「今回のSTAP細胞関連騒動の様なスキャンダルは何れ発生すると以前から危惧していたので少しも驚かない。早稲田大学がスキャンダルの発生源である事は事実だが、同じ様な問題は全国の大学に共通している」という事である。

学術論文で無規律にコピペすれば、それはイコール「剽窃」となり、露見すれば研究者に取って本来死を意味するはずである。しかしながら、どうも大学での指導教官、もしかすると指導教官の指導教官もその辺りの感覚が麻痺している様である。従って、小保方晴子氏のSTAP細胞関連騒動は日本のアカデミアに取って、所詮氷山の一角に過ぎないと言わざるを得ない。

■早稲田大学の問題

繰り返しとなるが、今問題になっている「剽窃」とは本人にその自覚があったかどうかは別として、基本的に他の研究者の研究結果を自分のものの一部として取り込む泥棒行為である。何故、かかる犯罪行為に手を染めてしまうかというと、想像するに、自力、独力では能力が理由で必要とされるレベルの博士論文が作成出来ないからという結論となる。

そもそも、そういう学生を博士課程に進学さす事自体に問題がある。推測するに研究室の維持のために来る者拒まずの精神で運営しているのであろう。一方、博士課程以前の修士課程2年と学部課程4年、合計6年の教育内容にも少なからず問題があると思われる。

今回面談した大学教授に紹介して貰った二件の記事を下記参照する。最初はブラック早稲田大学を刑事告発-教員の6割占める非常勤講師4千人を捏造規則で雇い止め|松村比奈子氏、である。特に説明は必要としないだろう。大学教育の中核に位置する大学教員の6割が非常勤講師というのは、流石に開いた口が塞がらない。

今一つは、早稲田大・非常勤講師の給与明細が語る"大学内搾取"の構造、である。幾ら何でも経費込みで年収200万円はあり得ないだろう。高級レストランであれ、ラーメン屋であれ、材料費を削れば取り敢えずの利益は上げる。しかしながら、味と顧客の満足は確実に急降下する。大学教育も同じ事ではないのか? 教員を安く雇えば教育の質が下がり、泥縄式で学生の質も下がる。その結果、自力で論文が書けず剽窃に走ったというのが私の見立てである。

■博士の商品価値

実態がこんな事では、「博士」とは一部のエリートを例外にすれば無駄に長く大学に通い、「入学金」や「授業料」という名目で大学に高額な金を貢いだだけの人間という事になってしまう。数字の信憑性には些か疑問があるかも知れないが、世界がもし100人の博士だったら、は実に分り易い。

医者を別格とすれば大学に残れた僅かな人間以外は余り幸せな人生とは思えない。悲惨といっても良いだろう。「就職市場」は実に冷徹に「博士」の商品価値を値踏みしているという事である。大学は自らの都合で「博士」の粗製乱造を速やかに止めるべきと思う。一方、政府は「博士」の少数精鋭化に舵を切るべきである。

■激変する雇用環境

企業の財産とは昔も今もそして将来においても人材である事に変わりはない。しかしながら、上述した早稲田大学に代表される大学のお粗末な教育システムに人材の供給を依存していては企業の将来が危ぶまれる。従って、一斉採用や「正規」、「非正規」間の垣根を見直そうという企業が出て来るのは当然の成り行きである。矢張り、グローバル化路線を驀進するユニクロの動きは早い。

学年不問で採用 ユニクロ説明会に大学1・2年30人、は耳目に新しい。大学1年で採用する方針で何と4月2日に内定を出したと聞いている。この大学一年生は在学中の4年間は店舗でアルバイトをしながら店舗運営を体験し、卒業と同時に正社員・店長になる予定との事である。ユニクロ社内でグローバル社員のコースを希望するなら、アルバイトで稼いだ金で海外留学するのも良いだろう。ユニクロに取って大事な事は18才でどのレベルの大学の入試を合格したか? という事実と、その後の4年間の過ごし方という事であり、大学の授業には一切期待していない。大学の教育などユニクロに取って何の価値もないと宣言している様なものである。

一方、最近柳井社長自らが発表した【特報】ユニクロ、パートとアルバイト16000人を正社員化、は注目に値する。この制度が導入されれば正社員のハードルは極端に低くなる。パートやアルバイトから正規雇用される社員は、当初は特定の店舗や地域に勤務地が限定される「R(リージョナル=地域)社員」と位置づけられるが、実績によっては、国内では転勤可能なナショナル社員、更には海外事業にチャレンジする意思と実力を備えた「G(グローバル=世界)社員」への職種間移動が可能になると思われる。

取り敢えず、アルバイトでユニクロに潜り込めば、正社員となりその後は努力と実績次第という事である。私はこういった実力主義は生き残りを賭ける日本企業にあっという間に広まると考えている。その結果、剽窃でしか博士論文を作成出来ない様な「博士」の需要は更に減少する。同じ様に、「大卒」の肩書も入学金と授業料を大学に納入し、無駄に4年を過ごしたという程度の価値に成り下がる。

■必要な大学システムの抜本改革

さて、表題の「小保方晴子氏のSTAP細胞関連騒動が焙り出した大学問題」に戻らねばならない。私は、この問題の根底にあるのは早稲田大学を筆頭に「博士」の品質管理が出来ていない事だと考えている。そもそも、あちこちの大学で簡単に「博士」が誕生する事自体が異常なのではないのか?

英高等教育情報誌「TIMES HIGHER EDUCATION(タイムズ・ハイアー・エデュケーション)」が毎年秋に公表している世界大学ランキングのベースになる、World Reputation Rankings 2014が最近公表された。東大が11位、京大が19位、阪大が50位という結果になっている。

予想通り、世界共通言語となった英語を母国語とする米国と英国が圧倒的に強い。しかしながら、彼らの強みは言語のみならず自国だけではなく、世界中から優秀な教員と学生を集める仕組みの構築に成功している事実である。技術立国、知財立国を目指す日本がこれを指を咥え座視する事が許されないのは当然である。

ついては、大学院の修士課程は旧帝大と東京工大、一ツ橋、私学では早稲田・慶応くらいに絞り込み、博士課程は世界大学ランキング11位の東大と東京工大を統合し(新たな東大)、関西では19位の京大と50位の阪大を同様統合し(新たな京大)、国内2校体制に集約してはどうだろうか? 

世界市場で勝負出来る優秀な博士の供給を目指すと共に、10年を目途に東大は世界大学ランキングのベスト5入り、京大は同じくベスト10入りを目指すのである。そういうシステムに抜本改革されれば、「博士」は大変なステイタスであり、大学でポストが得られず民間で働くにしても初任給が最低でも1,000万円程度にはなるのではないだろうか?