旧インデックスの落合正美会長、小川善美社長に望む事

同社については、大分以前より関連会社間で実態のない取引を繰り返す、「循環取引」が行われていると噂されていた。更に、昨年には証券取引等監視委員会が強制調査に入っており、今回の逮捕も想定の範囲内の出来事である。

東京地検特捜部は昨日(5月28日)、経営破綻したインデックスの落合正美元会長と妻の善美元社長を、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の容疑で逮捕した。 同社については、大分以前より関連会社間で実態のない取引を繰り返す、「循環取引」が行われていると噂されていた。更に、昨年には証券取引等監視委員会が強制調査に入っており、今回の逮捕も想定の範囲内の出来事である。

とはいえ、一時はiモードの占いコンテンツ「恋愛の神様」や犬語翻訳機「バウリンガル」などで一世を風靡し、時代の寵児にまで上り詰める一方、個人資産4,000億円近い状態からの一気の墜落でもあり、旧インデックスと同じ様な構造を持っている企業はソーシャルゲーム業界に数多く見受けられるとの指摘もあり、こういう業界の企業経営者、更にはこういった企業の株を所有する投資家に対し少なからず衝撃を与えたに事に違いない。

落合正美会長は日商岩井での私の5年後輩、小川善美社長は10年後輩で、旧インデックスの前に立ち上げたPOVという日商岩井の完全子会社で落合会長が副社長、小川社長がアソシエイツ・メディア事業本部長として活躍をしていた頃、実際に仕事を依頼した経緯もある。落合会長にはその頃私が担当していた衛星放送事業、BBC Worldの広告営業をお願いした。一方、小川社長には当時の日商岩井子会社ニフティーを活用したリサーチの件で調査設計について意見を求めた経緯がある。落合会長とは、広告業界に関してのヒアリングのため、その頃何度か酒を酌み交わした事もある。二人の印象は極めて有能で、仕事熱心なビジネスパーソンというものだった。

従って、今回の逮捕は当然と受け入れる一方、残念だと思う気持ちも強い。幸運に恵まれ一時的に莫大な利益を会社が出したからといって、これを果てしなく再現する事は不可能である。山の頂点を極めたのであれば、本来足元に注意して下っていくべきなのだ。しかしながら、周りの目、世間体を気にして不正な取引の誘惑に負けてしまう。今回の落合正美会長、小川善美社長の逮捕は、結果、彼らの後に続く多くのアントレプレナーに多くの教訓を与える事になると思う。

■逮捕に至る経緯

それでは落合正美会長、小川善美社長は如何なる経緯を経て昨日の逮捕に至ったのであろうか? 念のために検証してみる。インデックスは2013年4月15日に2013年8月期・第2四半期決算資料の提出遅延で管理ポスト入りし、5月15日に調査委員会を立ち上げている。しかしながら、その調査委員会の報告書を待つ事なく、証券取引等監視委員会、特別調査課は問答無用で6月12日に強制捜査に踏み切っている。そして、民事再生を申し立てた2013年6月27日から、わずか83日後の9月18日にセガサミーが旧インデックスの優良事業のみの買収に成功している。

私の個人的な推測であるが、民事再生は飽く迄旧インデックスの事業継続が目的のはずだが、当初より旧インデックスの癌細胞ともいえる不良部門を分離し、優良事業はセガサミーに譲渡するといったシナリオがあったと思われる。これでは、抜け殻となった旧インデックスに再生の可能性はなく、今月2日に正式に破産。

遂に両手両足を切り落とされた状態の落合正美会長、小川善美社長を昨日東京地検特捜部が逮捕するに至った訳である。この一連の経緯を俯瞰すると、どうしても旧インデックスと同じ様な構造を持っている企業に対する、「一罰百戒」を意図する東京地検特捜部及び証券取引等監視委員会・特別調査課の意図が透けて見える気がする。

■何が問題なのか?

第一義的には、債務超過を回避するために関連会社間で実態のない取引を繰り返す、「循環取引」を繰り返し、2012年8月期の売上や利益を水増、実際には4億1100万円の債務超過に陥っていたところを3億9800万円の資産超過とした有価証券報告書を提出した事である。この行為に対し、落合会長、小川社長がどこまで実態を把握していたか不明であるが、刑事責任を問われるのは止むを得ない。

今一つの問題はオリンパス事件で経験した様に、こういった不適切な取引があるところには必ず指南役が数名暗躍している。オリンパス事件の場合はすべて野村証券のOBであり、主犯格である横尾宣政氏の公判は未だ継続中のはずである。こういった指南役は闇社会を活用する事で極めて巧みに犯罪を隠匿するので、結果として、闇社会に巨額の資金が循環してしまう。落合正美会長、小川善美社長が何処まで知っていたのか? 何処まで関与していたのか? は今後の東京地検特捜部による捜査の進展を見守るしかない。しかしながら、両名が反社会的行為に手を貸したのは事実である。

■何故かかる不祥事が発生したのか?

旧インデックスは上述した様に「恋愛の神様」や犬語翻訳機「バウリンガル」などで一世を風靡し、時代の寵児にまで昇りつめた。しかしながら、ビジネスの構造を俯瞰すれば、厳しく言えば、この成功はじゃんけんで偶々勝った様な結果であり、勝ち続ける事は不可能である。多分、落合会長はその事を理解していたはずである。

従って、将来の利益の源泉を確保するために海外に積極的に投資し、当時はマスコミにも商社出身ということもあって、コンテンツ業界における次世代のリーダーと持て囃された。しかしながら、落合正美会長及び小川善美社長の職務履歴を見る限り、留学も海外駐在の経験もなければ海外ビジネスの経験もない。海外ビジネスの素人が、度胸だけで大胆な海外投資を行っても失敗するのは明らかである。そして、最後の帳尻合わせのために不正な循環取引に手を染め、とうとう引き返せなくなってしまったというのが実態ではないのか?

■今回の不祥事は旧インデックスに限った話なのか?

私は全くそう思わない。ソーシャルゲーム業界のビジネスモデルは旧インデックスに酷似している。今回の企画がヒットしたからといって、それは偶々ジャンケンで勝った様な結果であり、次回の新作がヒットする確証など何処にもない。ソーシャルゲーム業界の中で勝ち組と目される上場企業の決算結果を見て感じるのは、良くこんな会社が上場できたな!という疑問に尽きる。それから、こんな企業の株を購入する投資家の投資尺度にも疑問を感じる。株価維持、上場維持のためにこういった企業の経営者が、落合会長、小川社長同様不正な取引の誘惑に負ける展開は充分に予想される。

■落合会長、小川社長は真摯に今回の一件を謝罪し、不正取引の誘惑に負けた経緯を説明すべき

さて、今回のテーマ「旧インデックスの落合正美会長、小川善美社長に望む事」に戻らねばならない。上述した様に、今回の一件は実に残念ではあるが落合会長、小川社長は有能な人材であり、罪を償った暁には是非とも復活を遂げて欲しい。挫折した人間が困難に打ち勝ち、復活する姿程日本国民を勇気付けるものはないからである。従って、理研・小保方氏がやっている様な、保身を目的とした下品で見苦しい闘争は是非止めて欲しい。勿論やっていない罪まで認める必要はないが、国民に対しさっさと先ず謝罪し、罪を償うべきである。

次いで、手記の様な形式で良いので何故この様な「循環取引」に手を染める事に至ったのか、その経緯、当時の心理状態などを赤裸々に公開して欲しい。「反面教師」として、後に続く多くの企業家達が参考とする事で彼らが陥穽に落ちる事が回避され、貴重な人材が失われずに済む。こういう形で禊を終えれば、日本社会は有能な二人を暖かく迎え、復活を支援する展開となるだろう。

注目記事