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2014年は「テレビ革命」元年となるのか?

2014年01月14日 17時56分 JST | 更新 2014年03月15日 18時12分 JST

ハフポスト記事、ドラマを見逃したらスマホで見ればいい時代、はじまる?を拝読。示唆するところの多い良記事だと思う。小学生の読書感想文ではないが、今回はこの記事を読んでの印象や、思いつく所をそのままストレートな形で書いてみたい。

■ 記事のポイント

日本テレビが1月11日(土)21時開始の『戦力外捜査官』というドラマで、見逃した視聴者を対象にしていると思われるが、無料ネット配信を始めたという事である。日本テレビの意図はネットを『戦力外捜査官』の番宣に活用する事であり、将来的には日本テレビのアーカイブをネット配信する事で、コンテンツのマルチユース化を狙っている事は明らかであろう。その先にあるのは、使い捨て状態の番組を活用しての新たな収益源の確保と推測する。

■ テレビは「観て貰ってなんぼ」の商売

識者・論者の中には「テレビ論」の如く少し澄まして上品な事を語られる方も散見される。一方、私は民放の様な広告収益モデルであれ、スカパー、WOWOWの様な視聴料依存モデルであれ、テレビは「観て貰ってなんぼ」の商売であると確信している。従って、以前よりテレビ局は台頭の著しいネットをもっと貪欲に活用すべきと考えており、その結果生じるであろう、コンテンツのネット公開も日本に好ましい影響を与える事になると考えている経緯がある。従って、今回の日本テレビの施策はテレビ局としての好ましい「原点回帰」と好意的に受け止めている。

■ テレビ局のネット活用は何故こんなに遅れたのか?

最大の要因は、総務省によって割り当てられた周波数帯域の上に胡坐をかき続けてもそれなりに経営がやって来れた事であろう。テレビ局は、ネット展開であろうが、放送用に製作したコンテンツの海外輸出であろうが、政府によって規制されている訳ではなくずっと解放されて来た。しかしながら、テレビ局のやって来た事はネットの台頭を只管恐れ自らの既得権益を守る事に汲々としたのみである。テレビ局は割り当てられた周波数帯域の内側に閉じ籠り、鎖国をやっていたといえば良いのかも知れない。

そうはいっても、若者を中心にここまでネットが個人の生活に深く浸透すれば、ネットとの協調なくしてテレビ局の将来が維持出来なくなった事は誰の目にも明らかである。従って、アメリカから黒船が到来し、江戸幕府が開国を余儀なくされた様に、ネットの台頭を前にネットの積極活用に方向転換をした訳である。

私はテレビ局に勤務する友人も多く、見て来た印象をいうと、テレビ局内にはネットの時代にふさわしい業態にテレビ局を変えていこうとする立場と、ネットを只管拒絶する立場のベクトルの対立があった様に思える。その意味で、今回の日本テレビ新施策の本質は、改革派が社内抵抗勢力に勝利した事だと受け止めている。そして、今回日本テレビで起こった事は他の民放にも波及し、結果多くの好ましい変化をもたらす事になると期待している。

■ 周波数帯域の再配分

いうまでもない事だが、周波数帯域は国民の共有財産であり効果的に活用されてしかるべきである。産業としてのテレビの凋落は避けられず、その一方、ネットの台頭という冷徹な事実から目を逸らすことなくきちんと対応する必要がある。現実的にはテレビに過剰に割り当てられたと推測される(勿論テレビ業界の人には異論があろうが)周波数帯域をより重要なネットに再配分するという結論となる。

従来の様にテレビとネットのベクトルが全くバラバラであれば、「既得権益」の抵抗が強く、話は進まない。しかしながら、テレビがネットを番宣に積極利用し、且つ、自社が保有する番組露出のマルチウインドウとして、更には将来の収益源として、同様ネットを活用するとなれば少なくとも話し合いの場は出来ると思う。

■ テレビ局はコンテンツ強化に動かざるを得ない

今回の日本テレビの施策を進めると、視聴者は何時でも、何処でも、端末の制約を受ける事無く視聴可能となり、その結果、強いコンテンツのみが視聴者の評価に耐え、視聴される事になる。端的にいえば、テレビ局の優勝劣敗はコンテンツ次第という事である。その結果、過酷な状況にあるコンテンツ制作工房の状況が改善されるのではと期待する。

■ テレビ番組二次利用収入は業界への人材流入を側面支援する

現在のところ、放送局が放送用に製作した番組は一回放送されたらそのまま二度と利用されないケースが殆どであると理解している。要は、番組利用の実態は使い捨てという事である。しかしながら、ネット活用で番組の二次利用が常態化すれば、番組が一旦制作されたら、その後、細く長く収益を得る事が可能となる。

これを利用して、タレントの番組出演料を従来の定額制+番組の二次利用収益のレベニューシェアに変更してはどうだろうか? 10代の頃絶大な人気を誇ったアイドルであっても、その人気を維持する事は困難である。20代となり人気に陰りが出、20代後半で芸能界を引退し、その後普通の会社員と結婚するという展開も充分にあり得る。

30代の主婦となった時に10代アイドル時代に出演したドラマの二次利用収益のレベニューシェアを月額で10万円受け取る事が可能というのは、結構ありがたいのではないだろうか? 普通の主婦の小遣いとしては充分な額であろう。若い頃にある程度活躍すれば、その後一定の収入が保障される様な仕組みが構築されれば、より多くの才能ある若者が芸能界を目指し、結果、より良質なテレビ番組が制作される事になると思う。

■ NHKの立場は更に難しくなる

民放各社は今回の日本テレビ施策を追随する事になると思う。何故なら上述した通り、この施策はテレビとは「観て貰ってなんぼ」のテレビの本質に原点回帰したものであり、指を咥え傍観していては、あっという間に負け組に転落してしまうからである。そして、当然の結果として、番組の視聴はスマホ、タブレットPC、PC何でも良く、更には従来のテレビ自体もネットに繋がったフラットパネルの認識になるだろう。

私は、NHK、受信料の全世帯義務化は誤報?において、下記の如く説明している。

■ 公共放送が受信料の全世帯義務化を検討する事は自然な話



今回の毎日新聞スクープを唐突に感じ、違和感を持った人は多かったに違いない。勿論私は賛成しないが、テレビ視聴からネットへのパラダイムシフトが加速する環境下、公共放送が受信料の全世帯義務化を検討する事は自然な話と理解している。2009年、当時BBCの会長を務めていたMark Thompsonは、The license fee could go, admits BBC boss: Cost of watching TV might be put on council tax billと語っている。露骨にいってしまえば、「テレビ視聴のコストは「所得税」や「電気料金」の様に徴収されてしかるべき」という、大胆な主張である。NHKはBBCと同じく公共放送であり、永らくBBCを師匠と仰ぎ背中を追いかけてきた経緯がある。従って、BBCに倣い「テレビ視聴のコストは「所得税」や「電気料金」の様に徴収されてしかるべき」とNHKが考えたとしても特に不思議はない。

テレビをテレビ端末で視聴しなくなる日は直ぐそこに来ている。テレビ端末が自宅にあればNHKとの受信契約を強制する従来の放送法はNHKに取って守護神であり得た。しかしながら、今回の日本テレビを筆頭に民放各社が番組のネット公開に舵を切り、視聴者は何時でも、何処でも、各自に便利な端末で視聴可能となれば全く異なる話となる。嘗ての守護神は無力で全く役に立たないからである。

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