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ヤフーの取り組みは地方過疎化対策の特効薬になり得るか?

2014年01月16日 17時58分 JST | 更新 2014年03月17日 18時12分 JST

ヤフーが全国の自治体と連携した特産品の販売を「Yahoo!ショッピング」で始めた、との報道である。私は、昨年10月ヤフー新EC戦略の衝撃を発表した時点で、今回の展開を予想すると共に期待するところも大きかった。従って、今回のニュースに驚きはない。愈々ここまで来たか、といった印象である。私は、放置すれば過疎化が一直線に進展する地方を救済するには、今回のヤフーの取り組みの様に、地方の生産現場と市場をEC活用で直結すると共に、地方生産者の意識を市場動向に集中させる必要があると以前から考えている。丁度良い機会なので、今回はヤフー取り組みの背景や、この取り組みが引き起こすだろう地方に取って好ましい変化について考えてみたい。

■ 魅力のない地方都市

サラリーマン時代、出張で日本の地方都市を訪れた時に何時も感じていたのは、駅前の大通りがまるで金太郎飴の様に驚く程似ている事である。駅中、或いは駅に隣接して、取敢えず要は足りるが特に魅力的とは思えない商業施設があり駅前大通りへと続く。そして、そこにあるのは全く同じ様な街並みで、あるのは、都市銀行、地元地方銀行、証券会社、保険会社そしてお約束のパチンコ屋、それらの間に全国チェーンの割安な居酒屋が点在する。そして大抵の場合大通りに平行してアーケードの商店街がある。人通りは少なく、活気は無い。所謂シャッター商店街という奴である。東京、渋谷の劣化したカーボンコピーな訳であるが、良くもまあこんなに無機質で空虚な街並みを日本国中に作ったものだと呆れ、感心していた。

■ 地方のエリートとは?

それではこういう街並みを作り、利用する、地方住民をリードする地方のエリートとは一体どの様な人間であろうか? 地元の名門高校から地元の国立大学を卒業し、県庁、市役所、教師そして農協に無事就職出来た人間であろう。地元の国立大学に進学出来ず、止む無く首都圏の私立大学に入ったとしても「コネ」があり、上記に潜りこむ事出来無事Uターンを果たした人間は矢張り同様勝ち組だと思う。県や市の外郭団体に潜りこんだ者は差し詰め準勝ち組と言った所か。

彼らは就職と同時に定年までの職と年収が終身雇用、年功序列の慣行に拠り保障され、更に在職中巧く立ち回れば定年後の天下りの職にありつけるかも知れない、「公務員」や「農協職員」という身分を手に入れた訳である。元々、若くしてこういったリスク回避型の人生のコースを選択した人達だから只管「税金」を食い尽くす事に何ら疑問を感じる事も無ければ市場の変化に注意を払う事もない。こう言った勝ち組支配の地方都市が如何なるメッセージも発信する事が出来ず、劣化し朽ち果てて行くしかないのは当然である。

■ 中央に寄生する地方経済

過疎化の進展と共に地方が荒廃しているのは事実であろう。戦後一貫して地方は生産するより遥かに多くを消費し、その差額を地方交付税交付金や補助金で穴埋めして来た経緯がある。無論、地方交付税交付金や補助金の原資は企業の納税する法人税や都市住民が納税する所得税、次世代が負担する事になる国債発行によって賄われている。しかしながら、日本の財政状況はこれ以上無規律に地方交付税交付金や補助金ありきの農業、地方公共事業を継続出来る状況にはない。

■ 国内農業の産業規模と補助金、農水省予算のアンバランス

農水省資料によれば今年度の予算は3.3兆円である。一方、産業としての国内農業の生産額は全体で4.7兆円に過ぎない。しかも生産量は右方下がりに下がり続けている。4.7兆円の農産物を生産するのに3.3兆円の国費の投入を続けるというのは、財政規律回帰に舵を切らねばならない日本政府には最早無理である。ちなみに、トヨタ自動車の売り上げは一社で20兆円弱である。国内農業を守るために、トヨタに代表される国内産業の未来を閉ざす様な判断を安倍政権が下さない事を期待する所以である。国内農業が今後TPP加盟の犠牲になるか、否かは定かではないが、日本の財政が国内農業の犠牲になっている事は間違いない。

■ 求められるのは地方経済の自立

地方に求められるのは中央(国)に寄生するのではなく、自立するという気概であり、それを可能にする具体的な施策である。この観点からすれば、「地方の特産品」を「Yahoo!ショッピング」というプラットフォームを活用して市場で販売するというのは実に分り易い。販売が増えれば単に地方の収入が増えるというだけではなく、生産の拡大が必要となり、結果地域での雇用が創出される。過疎の真逆の現象といっても良い、地域に取って最も好ましい変化である。

■ 意識改革なしには成功しない

担当者は従来の予算を消化すれば良かった「コストセンター」の意識から、売り上げを増やし、利益を積み増す「プロフィットセンター」への意識改革が求められる事になる。担当者は企画を担当するや否や、市場が求めるものに対応せねば売れないという冷徹な事実に直面する事になるからである。

消費者が何を求めているのか? を考え続け、それに答えるべく、「知恵比べ」、「アイデア勝負」、「スピード競争」の世界に担当者は一日24時間、一年365日、身を置く事を覚悟せねばならない。困難はあるだろうが、これをブレークスルーした先に地方経済と地方住民の明るい未来があるのだと思う。ヤフーには生まれ変わろうとする地方経済のインキュベーターの役割を果たして欲しい。一方、安倍政権にはこういった実効性のある施策を地道に積み重ねる事がイコール「船長戦略」である事を認識して欲しい。