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青木宣親が体現する「まるで高校野球」新世代スモールベースボール

2014年10月10日 16時56分 JST | 更新 2014年10月10日 18時29分 JST
Rich Schultz via Getty Images
NEW YORK, NY - SEPTEMBER 05: Nori Aoki #23 of the Kansas City Royals in action against the New York Yankees during the first inning in a MLB baseball game at Yankee Stadium on September 5, 2014 in the Bronx borough of New York City. The Royals defeated the Yankees 1-0. (Photo by Rich Schultz/Getty Images)

29年ぶりのポストシーズン進出を果たしたロイヤルズが快進撃を見せている。

まずは現地9月30日、アスレチックスとのワイルドカードゲームを劇的な逆転サヨナラ勝利で制すると、レギュラーシーズンでメジャー最高勝率を誇ったエンジェルスとの地区シリーズでも2連勝。敵地で2日続けて延長戦を制し、リーグ優勝決定シリーズ進出に早くも王手をかけた。

今、ポストシーズンでプレーする唯一の日本人選手となった青木宣親は、2番ライトで出場を続けている。ワイルドカードゲームでは9回に起死回生の同点犠牲フライ、さらにエンジェルスとの初戦で2度もファインプレーでチームを救うなど、存在感を示している。

今年のロイヤルズの売りは、メジャーリーグらしからぬ“超スモールベースボール”だ。

ロイヤルズの今季チーム成績を見てみると、チーム打率.263はリーグ2位に対し、チーム本塁打数95はリーグ最下位。チーム打点王は6番に座るアレックス・ゴードンで、74打点に過ぎない。突出した中軸で得点を稼ぐのではなく、1番から9番まで切れ目のない打線でどこからでも得点できることが強みだ。

さらに特筆すべきは、リーグトップの153盗塁。アスレチックスとのワイルドカードゲームでは7盗塁に加えて4つの送りバントを決め、まるで日本の高校野球を見ているかのような機動力野球を展開した。1試合7盗塁は、1907年のカブス、1975年のレッズに並ぶプレーオフタイ記録だ。

ちなみに敗れたアスレチックスといえば、映画化もされた『マネー・ボール』でも知られる通り、出塁率や長打力を重視するセイバーメトリックスを駆使して2000年代に覇権を誇ったチーム。超スモールボールを売りにするロイヤルズが、マネーボールのアスレチックスに勝利したこの一戦は、時代の流れを象徴するようなゲームだった。

メジャーリーグでは近年、得点数の減少傾向が続いている。今年のレギュラーシーズンでは1試合の平均得点が4.07点で、これは2000年の5.14点より1点以上も低い。

極端な“投高打低”の原因としては、MLB機構による違反薬物規制の強化に加え、球審の判定基準が変化したことも挙げられている(投球の軌道を解析する技術革新により、球審がより正確な判定を下すようになったことがデータで証明されている)。

メジャー全体の得点力低下に伴い、以前よりも1点の重みが増した。それによって、盗塁や送りバントでひとつでも先の塁を奪うことの価値が相対的に高まった。今年のロイヤルズは、そんな新世代スモールベースボールの象徴的な存在といえる。

延長12回の死闘を繰り広げたワイルドカードゲームでロイヤルズは、1番のアルシデス・エスコバルが2度送りバントを決め、青木がチャンスで打席に立つお膳立てをした。

いかに青木が好調かつ勝負強い打者とはいえ、レギュラーシーズンで僅か1本塁打の2番打者の前に送りバントをするなど、一昔前のメジャーではなかなかお目にかかれなかった光景だ。時代の変化と共に、ベースボールも変わっていく。

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スポカルラボ
MLBをはじめ海外スポーツに精通した英日翻訳ライター3人による メディアコンテンツ制作ユニット。スポーツが持つ多用な魅力を独自 の切り口で表現し、人生の選択肢はたったの一つや二つではない、 多様なライフスタイルを促進することをミッションに掲げて活動中。 Facebook→スポカルラボ

(2014年10月5日J SPORTS「MLBコラム」より転載)