香川真司の今後の動向、このままだと昨季よりも出場機会が減ることも

アメリカ各地で行われていたギネスインターナショナルチャンピオンズカップ。マンチェスター・ユナイテッド対リヴァプールのファイナルが5日(現地時間)、フロリダ州マイアミで行われ、マンチェスターUがジェラードのPKで1点をリードされながら、ルーニー、マタ、リンガードのゴールで3-1で逆転勝利。新シーズン開幕に向けて弾みをつけた。

アメリカ各地で行われていたギネスインターナショナルチャンピオンズカップ。マンチェスター・ユナイテッド対リヴァプールのファイナルが5日(現地時間)、フロリダ州マイアミで行われ、マンチェスターUがジェラードのPKで1点をリードされながら、ルーニー、マタ、リンガードのゴールで3-1で逆転勝利。新シーズン開幕に向けて弾みをつけた。

この日も香川真司はスタメンから外れた。マンチェスターUの攻撃陣は、ルーニーとエルナンデスの2トップで、トップ下にマタ、右サイドにバレンシア、左サイドにヤングという顔ぶれでスタート。前半開始早々にバレンシアが負傷し、ショーが加入。ヤングが右に移動し、ショーが左に入る形で戦うことになった。前半はリヴァプールの堅守に阻まれ、思うようにチャンスを作れなかった。が、後半に入ってからルーニーの同点弾を皮切りに攻めが加速。その2分後には香川とトップ下を争っているマタがショーの折り返しを受けて左足でゴール。遠目の位置からも点を取れる能力の高さをここぞとばかりに見せつけた。

ルイス・ファン・ハール監督としては、このプレーを見てマタはお役御免でいいと判断したのだろう。後半24分にマタとエルナンデスを下げて、ナニと香川を投入。香川に与えられた時間は20分あまりだったが、後半34分には左サイドから素早いクロスを入れるなどチャンスを作る。そして最大の得点機は後半43分のリンガードのゴールの場面。右サイドからの折り返しに香川が飛び込んだが、まさかのトラップミス。これを後ろに飛び込んだリンガードが決めたのだ。香川がきっちりとボールをコントロールしていたら、相手守備陣が下がっていただけに、完全にフリーでゴールを奪えた決定機だった。それをモノにできなかったのは、本人としても悔やまれるところだろう。

結局、このギネスインターナショナルチャンピオンズカップで、香川はいいプレーを要所要所で見せ、持ち前の創造性とテクニックを前面に押し出したが、「マタの控え」から抜け出すだけのインパクトを残せたとは言い切れなかった。このリヴァプール戦を見ても、マタがトップ下に入った時の方が中盤が安定し、ゴール前の迫力も高かった。2人のシュートレンジを比べると、やはりマタの方が広い。香川はペナルティエリア内では冷静に相手を見極めながらゴールを決められるが、エリア外からはほとんど打たない。その辺りも、欧州で実績を積み上げてきたファン・ハール監督から見ると物足りない部分があるのだろう。

新シーズンのプレミアリーグ開幕は16日(日本時間)に迫っている。新指揮官はこの大会で採った3-4-1-2の布陣をベースに、主力で起用したメンバーを軸に据えて戦っていくと見られる。となると、香川はジョーカー役、あるいはカップ戦要員にならざるを得ない。怪我でこの大会を欠場した19歳のヤヌザイや移籍が噂されるフェライニもいるだけに、「トップ下のサブ」という位置づけさえ確実ではないのが現実かもしれない。

香川自身はマンチェスターUに残ってポジション争いに挑む意向と言うが、新指揮官が3-4-1-2のシステムを採用する以上、試合に出られるポジションはトップ下しかない。昨季までの4-2-3-1であれば、左サイドとトップ下の2つのオプションがあり、出場可能性はより高まったのだが、ファンハール監督は守備を安定させるためには3バックがベストという考え方なのだろう。香川を取り巻く環境がこれまでよりも厳しくなったのは間違いない。

欧州移籍市場が閉まるまであと3週間あるため、新天地を探す道も日に日に険しくなっている。このままだと、香川は1つしかないトップ下のポジションを巡って、熾烈なサバイバルに身を投じることになりそうだ。デイヴィッド・モイーズ監督が指揮を執っていた昨季よりも出場機会が減る可能性も否定できない。それでもマンチェスターUに残るなら、いばらの道を切り開いていくしかない。それだけのタフさを身に付けることが、一皮も二皮も剥ける鍵といえるのではないか。

2014年ブラジルワールドカップの一挙手一投足を見ていてもそうだったが、香川真司という選手は精神的にナーバスすぎる傾向が強い。そのメンタル面の課題をクリアしなければ、世界トップクラブで君臨することはできない。マタやヤヌザイに真っ向から勝負を仕掛けていくくらいの堂々としたところを見せられるようになれば、苦境も打破できる。そういう前向きな方向に進むように、彼には期待を寄せたいものだ。

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元川 悦子

もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

(2014年8月6日「元川悦子コラム」より転載)

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