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日本代表のW杯歴代最高ゴールは鈴木の"つま先弾!" 技術や戦術を超越した"執念"を日本代表には見せて欲しい

2014年06月13日 15時06分 JST | 更新 2014年08月12日 18時12分 JST

マラドーナに続き、前回はワールドアップ史上に見られる至高のプレミアムゴール、1998年のベルカンプを取り上げた。今回は少し目線を変えて、日本代表がワールドカップで決めた歴代ゴールの中から一つ、プレミアムゴールを選定してみよう。

選考対象となるゴールは12個。1998年フランス大会は、ジャマイカ戦で中山雅史が意地の1ゴールを押し込んだ。2002年日韓大会は、ベルギー戦で鈴木隆行と稲本潤一が1ゴールずつ。ロシア戦で再び稲本が1ゴール。チュニジア戦では森島寛晃と中田英寿がそれぞれゴールを挙げ、トルコ戦は無得点。大会通算5得点に終わった。

そして2006年ドイツ大会は、オーストラリア戦で中村俊輔が1ゴール。クロアチア戦はスコアレスドローで、ブラジル戦で玉田圭司が1ゴール。通算2得点。

2010年南アフリカ大会は、カメルーン戦で本田圭佑が1ゴール。無得点のオランダ戦を挟み、デンマーク戦では本田圭佑、遠藤保仁、岡崎慎司がそれぞれ1ゴール。パラグアイ戦は無得点に終わったため、大会通算4得点。

過去4大会14試合で12ゴールを挙げた日本代表。さて。この中から一つ、プレミアムゴールを選ぶとしたら...?

2010年は記憶が新しすぎるので今回は対象外とさせて頂くと、クオリティーの面で際立つゴールは、2006年ブラジル戦の玉田の先制ゴールだろう。前半34分、三都主アレサンドロのカットインからのスルーパスに走り込み、ペナルティーエリア内の左側から利き足の左で、ニアサイドのゴール天井をぶち抜いた。この位置からの左足のシュートは、玉田本人も得意とする形であり、2004年アジアカップでも同様のゴールを決めた。ところが、このゴールによってサッカー王国を本気モードのスイッチが入り、その後は4失点とサンドバック状態。ショッキングな敗戦を喫したことを考えると、このゴールを「プレミアム」とは呼びづらい。

やはり2002年のベルギー戦、鈴木隆行の同点ゴールだろう。

後半14分、自陣で奪ったボールを拾った小野伸二が素早くルックアップし、バックスピンをかけた滞空時間の長いロングボールを蹴る。これに反応した鈴木が、右サイド側から斜めに裏のスペースへ飛び出すと、鈴木をマークしていたベルギーのDFは、鈴木に体をぶつけてブロックし、ボールを流してGKに処理を任せようとした。

ところが、そのDFのチャージを軽快なバックステップでかわした鈴木は、フリーで抜け出すことに成功。そしてGKの手前に、思い切って飛び込みながら利き足ではない右足のつま先を伸ばす。わずかに勢いを増したボールは、GKの脇を抜けてゴールに吸い込まれた。

ベルギーのDFは鈴木をブロックするのではなく、そのままボールをクリアしていれば何でもないシーンだったが、GKに捕球させてボールを生かそうとしたため、その判断が仇となったようだ。

この大会のベルギーは、日本戦で2失点、チュニジア戦で1失点、ロシア戦で2失点、そして敗退した決勝ラウンドのブラジル戦でも2失点と、非常に失点が多かった。鈴木のゴールだけでなく、稲本が挙げた後半22分の2点目のゴールに関しても、ベルギーはディフェンス面のミスが多い。

まずはハーフウェイライン付近で、"真横へのパス"を稲本にインターセプトされたこと。パスの出し手と、受け手の両方が置き去りになってしまう真横のパスは、絶対にインターセプトを許してはいけない。しかし、ベルギーはそこでミスが発生してカウンターを食らい、そのまま前線へ走り抜けた稲本に対して、DFもあっさりとかわされてGKとの1対1へ。

稲本の左足のシュートは、対角線でファーサイドを突いたとはいえ、それほど厳しいコースに飛んだわけでもない。重心がニュートラルに残っていれば、おそらくはセーブが可能なコースだったが、GKは山勘でニアサイド側へ倒れ込んでしまい、逆を突かれた対角線のコースに全く反応ができなかった。

対戦相手のディフェンスに甘さがあったのは事実だが、とはいえ、鈴木のゴールは単なる1得点ではなく、日本に自信と勇気を与えた価値ある一撃だったことは疑いようもない。

なぜなら、鈴木がゴールを挙げる直前の後半12分、日本はベルギーに先制ゴールを与えてしまったからだ。セットプレーのこぼれ球に対し、オフサイドラインを上げようとした瞬間を突かれ、現在のベルギー代表監督、当時7番をつけていたヴィルモッツにオーバーヘッドシュートを叩き込まれた。

もしも、この0-1の状況が長く続けば、開催国としての期待はプレッシャーに変わり、試合がなかなか好転しなかった可能性もある。苦々しい失点から、わずか2分後というタイミングでの素早い鈴木の同点ゴールは、ワールドカップで実績を残していない不安気な日本のメンタリティーを一気に明るくした。なんだ、おれたちやれるじゃん、と。ワールドカップ史上、いや、日本のサッカー史上においても、非常に重要なゴールと言える。

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清水 英斗
サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』『だれでもわかる居酒屋サッカー論 日本代表 戦の観戦力が上がる本』『サッカー守備DF&GK練習メニュー100』など。

(2014年6月11日「今週のプレミアムゴール」より転載)