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コスタリカ、アメリカなど堅守のチームの躍進目立つ。GKのレベルアップも急務の課題

2014年07月18日 15時43分 JST | 更新 2014年09月16日 18時12分 JST
Julian Finney via Getty Images
RIO DE JANEIRO, BRAZIL - JULY 13: Manuel Neuer and Benedikt Hoewedes of Germany celebrate after defeating Argentina 1-0 in extra time during the 2014 FIFA World Cup Brazil Final match between Germany and Argentina at Maracana on July 13, 2014 in Rio de Janeiro, Brazil. (Photo by Julian Finney/Getty Images)

ドイツの24年ぶり4度目の優勝で幕を閉じた2014年ブラジルワールドカップ。ドイツの安定感がひと際光ったが、4強入りしたアルゼンチンやオランダ、8強入りしたコスタリカなどはいずれも堅守のチーム。やはり相手との力関係を考えて組織的かつ連動性の高い守りに徹することの重要性を再認識せられる結果だった。

これまで華やかな攻撃にこだわってきたオランダがリスクを最小限にする戦いを見せたのも予想外だった。グループリーグ初戦で前回王者・スペイン戦で5-1で圧倒した際、今回の彼らの爆発力に驚いた人々も多かっただろう。1次リーグは確かにオーストラリアと3-2の壮絶な打ち合いを制し、チーム全員のハードワークを身上とするチリを2-0で撃破するなど、攻めの迫力を感じさせた。

しかし、ルイス・ファン・ハール監督は決勝トーナメントに入ってからまずは負けないことを前提とした戦い方にシフト。それを象徴したのがコスタリカとの準々決勝だった。「コスタリカは非常に守りが手堅い。ラウンド16のギリシャ戦もそうだったが、延長・PKにもつれこむことも十分ありえると考えていた」と語った指揮官は、PK戦前に守護神をヤスペル・シレセン(アヤックス)から193㎝の長身を誇るティム・クルル(ニューカッスル)にスイッチ。そのクルルが物議を醸す相手への挑発などを見せながらも2本のシュートを止めて、チームを勝利へと導いた。準決勝・アルゼンチン戦もお互いに長所を消し合うような展開になり、オランダはPK戦で敗れたが、「1点を与えたら負け」という凄まじい緊迫感が見て取れた。

こうした価値観は「強豪相手には1点取られても2~3点取りに行くくらいのメンタリティをたないといけない」とコメントした日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督とは対照的だ。確かに日本の長所は個々のスキルの高さを活かした攻撃だが、それをアジアでは押し通せても、世界と対峙する時はそううまくはいかない。これまで親善試合で強豪と対戦してきたにもかかわらず、指揮官や選手たちは世界における日本の立ち位置を測り切れていなかったと言わざるを得ない。ジョエル・キャンベル(オリンピアコス)やブライアン・ルイス(PSV)といった能力の高いアタッカーを擁しながらも徹底的に体を張った守備を貫いたコスタリカなどから、日本は世界との戦い方をしっかりと学ぶ必要があるだろう。

守備に関連することだが、今大会はGKの重要性を改めて感じさせられる場面が多かった。ベストGK賞を受賞したドイツのマヌエル・ノイアー(バイエルン)はもちろんのこと、オランダのシレセンとクルル、コスタリカのケイラー・ナバス(レバンテ)、ドイツを1次リーグで苦しめたアルジェリアのライス・エンボリ(CSKAソフィア)など、好セーブを連発する守護神が数多くいた。ノイアーは2002年日韓ワールドカップでドイツを準優勝に導いたオリバー・カーンを上回る存在感を示したといっても過言ではない。

「大会MVPはリオネル・メッシ(バルセロナ)ではなく、ノイアーが相応しい」という声も各国メディアから聞こえてきたほどだ。彼の守備範囲の広さがあるから、ドイツのジェローム・ボアテング(バイエルン)ら最終ラインは思い切ってラインを押し上げられるし、攻撃陣もリスクを冒して攻めに行ける。「現代サッカーはGKの能力に左右される部分が大だ」と松本山雅の反町康治監督もしばしば口にしているが、それを如実に示した大会だったと言えるのではないか。

翻って日本を見た時、今大会のコートジボワール、ギリシャ、コロンビア戦に出場した川島永嗣(リエージュ)も2010年南アフリカワールドカップ以降の海外経験を活かしてタフには戦っていたが、世界の名手たちと比べるとやはり見劣りする部分は否めなかった。守備範囲をもう一段階、二段階広げる必要性があるのは確かだし、チーム全体を統率するリーダーシップなどもより高めていく必要があるだろう。その川島は現在30歳。GKはコロンビアのファリド・モンドラゴン(デポルティーボ・カリ)のように40歳を過ぎても第一線で活躍できるはず。

今大会の他の守護神たちのプレーを多角的に分析して、今後に活かして欲しい。彼以外の若い世代のGKの育成も急務のテーマだ。ノイアーやクルルのように190㎝台の長身GKを育てていく努力も必要だろう。日本人は高さがある分、俊敏性が低下する傾向が強いものの、可能性のある選手の発掘により一層力を入れていくべきだ。日本が躍進できなかったこの大会で上位に食い込んだチーム、選手たちには必ず理由がある。それを冷静な目で分析していくことこそ、未来の成功につながるはずだ。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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(2014年7月16日「元川悦子コラム」より転載)

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