ワールドカップ、各グループ1位チームが「格下」の抵抗を退け順当に勝利。ようやくこれからが本番

ワールドカップもベスト8が出そろって、駆け足で進んできたトーナメントも一段落だ。ラウンド16の最後の試合をサルヴァドールで観戦し、今日(現地7月2日)と明日は貴重な休日だ。といっても、用事があったので今日もスタジアムのメディアセンターにやって来た。試合の当日とは違って閑散としたスタジアム。昼は、スタジアムからちょっと外出した。サルヴァドールのアレーナ・フォンチ・ノヴァの南側にはちょっとした湖があり、ボート遊びや釣りで賑わっているが、その湖の畔にあるピザ屋でピザを食べてビールを飲んできた。

ワールドカップもベスト8が出そろって、駆け足で進んできたトーナメントも一段落だ。ラウンド16の最後の試合をサルヴァドールで観戦し、今日(現地7月2日)と明日は貴重な休日だ。といっても、用事があったので今日もスタジアムのメディアセンターにやって来た。試合の当日とは違って閑散としたスタジアム。昼は、スタジアムからちょっと外出した。サルヴァドールのアレーナ・フォンチ・ノヴァの南側にはちょっとした湖があり、ボート遊びや釣りで賑わっているが、その湖の畔にあるピザ屋でピザを食べてビールを飲んできた。気温は30度ほどあるが、空気が乾いているのでじつに気持ちの良い昼食だった。ワールドカップも3週間が経過して、ようやくのんびりする日々も増えて来た。

そして、トーナメントはいよいよこれからが本番である。ラウンド16の8試合を思い返すと、なんと8試合中5試合が延長戦となった。なかなか、厳しいトーナメントである。だが、同時に8試合すべてがグループリーグを首位通過したチームが勝利している。これは、けっこう珍しいことでもある。つまり、チームによる序列、格付けのようなものは巌としてあるのだ。実際、首位通過の「格上」が攻め立て、2位通過の「格下」が守って延長戦にもつれ込むという展開が多かったように思える。フランスに対してナイジェリアが抵抗した試合。アルジェリアが1982年の復讐とばかりに戦いを挑んだ試合もそうだった。そして、アメリカ合衆国がシュート38本(枠内27本)というベルギーの猛攻を跳ね返し続け、あわやという場面を作ったラウンド16最後の試合などもその典型だ。

ナイジェリアもアルジェリアもアメリカ合衆国も、さらにギリシャもスイスも本来の「自分たちのサッカー」を放棄して、「守ってカウンター」という形に徹したのだ。そして、そうした「格下の抵抗」が成功しかけたのは、「格上」側が確実に仕留めるだけの状態にないということも意味する。ブラジルもチリに延長・PK戦勝ち。アルゼンチンもスイス相手に延長の末の辛勝......。優勝候補は、未だに本来の力を取り戻していない。ドイツも、グループリーグでは厳しいグループを見事な戦いぶりで勝ち抜いたが、その疲れを引きずった上にまた延長戦で消耗を重ねてしまった。

強豪の不調は、試合内容にも影響する。「これこそ、本当にワールドカップだ」と思わせるような格調のある試合にはまだ遭遇していない。もちろん、ある程度力のあるチーム同士の真剣勝負なのだから、勝負事としてみれば面白くない訳はない。だが、しかし、「これがワールドカップの決勝トーナメントです」と言われても「ちょっとなぁ......」と思うような試合もかなりあった。その最たるものはコスタリカとギリシャの試合。ともに、初の決勝トーナメント進出。失礼を承知で言えば(さらに言えば、その相手に負けた国の人間として言うべきではないかもしれないが)どちらも「間違って出てきてしまった」ようなチームだ。技術レベルもワールドカップの決勝トーナメントにしてはあまりに見劣りする。後半の初めに点が入ったこと。そして、コスタリカに退場者が出たおかげでゲームが動きだして、それなりに熱の入った試合にはなったものの......。「格上」チームの不甲斐なさと同時に、「格下」チームの健闘も光った。勝つのは難しいが、点をやらない戦いは、それぞれが成功した(しかけた)。

アメリカ合衆国は、サッカー不毛の国である。1950年のブラジル・ワールドカップの時にはまったくのアウトサイダーとして戦って、イングランドを破るという世紀の大番狂わせを起こしたから、ブラジルとは縁があるのかもしれない。そして、64年前とは違って、アメリカでもすっかりサッカーは定着しつつある(もちろん、見るスポーツとしては「4大プロスポーツ」とは大きな格差があるが)。アメリカは、もう20年近くに渡ってヨーロッパや南米を脅かす勢力に成長してきている。そして、かつては科学的トレーニングで培ったフィジカル能力を武器に「強いけれども、あまりサッカーらしくない」あるいは「あまり面白くない」という印象が強かったが、ユルゲン・クリンスマン監督が率いる今年のアメリカはすっかりサッカーらしい試合をするチームになっていた。もちろん、監督がドイツ人のクリンスマンであり、ドイツ生まれの選手もいるため、「一昔前のドイツ」的なチームだったが、すっかり国際的な基準でもサッカーらしい戦いができるように成長していた。

中盤でアイディア溢れるパスで攻撃をリードしたブラッドリーなどは、ヨーロッパのクラブではなく、メジャーリーグ・サッカーの選手だ。つまり、アメリカのサッカーは国内リーグのレベルも上がってきているのだろう。先ほど、「格調のある試合には遭遇しなかった」と書いたが、これは、まあ、これまでのワールドカップを思い起こしても、いきなり決勝トーナメント1回戦から大熱戦の連続という大会はない。強豪にとっての大会は、決勝トーナメントに入って始まるものだ。短い休養でリフレッシュした選手たちが繰り広げるスペクタクル。準々決勝以降にそういう試合を期待したい。

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後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

(2014年7月3日「後藤健生コラム」より転載)

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