バス運転手の粋なはからいに、乗客が涙

難民受け入れに肯定的な人が非常に多いドイツ。第二次世界大戦後に東ヨーロッパから追われてきた人々を受け入れ、ともに復興に尽くし、その後も移民に門戸を開いて失敗を重ねながら学んできた結果ではないだろうか。

ドイツでバス運転手の粋なはからいが話題を呼んでいるとBBCが報じた。

紛争や人権侵害を逃れ、欧州を目指す難民が急増している。なかでも、積極的に難民受け入れを行ってきたドイツに向かう人は多く、昨年の倍のペースで難民申請がされているという。しかし、中東やアフリカなどから急増する難民に反発した極右勢力が、難民施設を相次いで放火・襲撃。不穏な事件が続いていた。

そんななか、15人の外国人が乗ったバスの運転手による車内アナウンスが話題になっている。

運転手は英語でこう伝えた。

「世界中からお越しの乗客の皆さま、伝えたいことがあります。ようこそ、と言いたいです。ドイツへようこそ。私の国へようこそ。良い一日をお過ごしください!」

"Excuse me ladies and gentlemen from all over the world on this bus, I want to say something. I want to say welcome. Welcome to Germany, welcome to my country." He then signed off with: "Have a nice day!"

乗客の驚く表情に続いて、笑いと拍手が湧いた。地元の乗客も運転手の粋なはからいを歓迎したという。アフリカ出身の乗客のなかには涙をぬぐう人も。この心温まるニュースはすぐにドイツ全土に広まった。運転手は、義理の兄が90年代にコソボから逃れ、祖母が第二次世界大戦で負傷した経験を持つことから、このようなアナウンスをしたいと思ったそうだ。

メディアでは難民へ反発する動きが目立って取り上げられるが、ドイツの公共放送が発表した最新世論調査によると、難民の受け入れを「少なくするべきだ」と答えたのは38%。 「これまで通り」が34%、「もっと多くすべきだ」と答えた人も23%いる。今年だけですでに18万人が難民申請し、暴力的な事件が相次いでいるドイツの背景を考えると、難民受け入れに肯定的な人が非常に多い結果だとも言えるのではないか。

これはドイツ社会で何となく醸成された意識ではなく、第二次世界大戦後に東ヨーロッパから追われてきた人々を受け入れ、ともに復興に尽くし、その後も移民に門戸を開いて失敗を重ねながら学んできた結果ではないだろうか。いまドイツは新たに中東・アフリカからの難民と向き合い、難民受け入れにおいて世界をリードしている。

翻って日本では、昨年、5,000人の難民申請があったが、難民として認定され、在留を認められたのはわずか11人だ。難民が増え続ける世界情勢を自分ごととして捉える時期がきているのではないだろうか。

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