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なぜ「沢田マンション」は圧倒的に読まれたか?都会と地方の摩擦熱を生むニュースの作り方

2014年07月12日 14時46分 JST | 更新 2014年09月10日 18時12分 JST

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東京中心のマスメディアのニュースに対し、ソーシャルメディアは地域のニュースを発信出来るのか。ジャーナリストキャンプ2014の報告イベントで、沖縄の米軍問題を問い続ける島洋子琉球新報東京報道部長、福島を独自の視点で描き復興にも関わる開沼博福島大学特任研究員、地域をフィールドに研究を行う河井孝仁東海大学教授が「地域ニュースの作り方」について議論を行った。(JCEJ運営委員)

◆特殊と普遍の往復で面白さを出す

河井:「ニュースの作り方」ではなくて、「地域ニュースの作り方」なのですが、開沼さん「地域ニュース」と「ニュース」は違うでしょうか。

開沼:どこどこの集落のゲートボール大会で誰々さんが優勝しました、というのが地域ニュースかもしれないが、今回は全国の人に見せるので受け手が違う。当然、受け手が違えば作り手の意識も変えなければならないという意味では、地域ニュースと言っても色々あるということが最初に確認されるべきでしょう。その部分で、記事を読んでいて気づいたこと、私が普段から感じていることをいくつかお話しできればと思います。

一つは「特殊と普遍」。水島さんが取り組んでいるような貧困問題、あるいはエネルギー問題という極めて普遍的な誰もが考えざるを得ないことを、極めて特殊なところから語る。特殊と普遍の往復で面白さを出していく。逆に言うとそうでもしないと、何の肩書きもない、貧困でもない、地元の人が出てきても、「そうですか」という話で終わってしまうんですね。皆さんそこは意識して記事に落とし込んでいたのかなと思いました。

もう一点は、見えない数字みたいなものをうまく使っている。貧困の記事で言うとホームレスは3人とか、猫の殺処分が全国1位と、はっとさせるところから議論に入っている。数字を見せることによっておそらく「普遍」に繋がっていく。

河井:ありがとうございます。島さんはいかがですか。

:数字を出すというのは、沖縄を知らない人にも分かってもらえる。

例えば、東京で私が沖縄の話をして一番驚かれるのは、県民総所得のなかで基地からの収入はどのぐらいありますかという質問をしたときです。東京の人は「沖縄は基地で食ってる」と思っているから、半分とか3割とかって言います。でも「正解は5パーセント」という話をすると皆さんわあって驚く。そういう数字によって表すことって重要だなあって思いました。

小水力発電の話(「自由と自然エネルギーは土佐の山間より出づ!」)は、数字というよりは地域から全国へこういうシステムを発信しようという話。こういうのが、どれだけ全国の皆さんの心に訴えるの挑戦。それから逆に、都市の論理と地方の非論理。衰退する地方を助けないといけない理由は都会の目から地域を見た。開沼さんの話に繋がると思うけど、「視点の往復」みたいなものをやっていくことが、私自身もすごく面白かったですね。

あと、摩擦をどれぐらい生み出すかがが今後重要なのかなと思いました。あまり少なくて一方通行の視点に終わってしまうと、どちらにもピンとこないかもしれないし、そういう摩擦熱が生まれれば全国に伝わるのかなと思います。

◆地域のブランドを利用する

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河井:小水力発電の話なんかは、高知である必要はあるの?群馬でも長野でも構わない話が「地域ニュースだ」って言っても面白いんですか?

:単純にエネルギーを発電するっていう話プラス、高知県民ならではの発想力とか思想につなげていったこと。

河井:中江兆民だとか、高知における自由民権みたいなものを、エネルギーっていうところに結び付けるのがけっこう面白かった、と。

:自立の思考みたいなものを結び付けていった。たぶんエネルギーの話だけだったらおっしゃるように、どこからでも発信できたかもしれないけど、それを地域の特性に結び付けていったところに私は面白さがあると思った。

開沼:地域から外に情報を発信するときに、既にそこに持たれているブランド、龍馬とか自由民権とかを利用することによって、都会にはできない必然性みたいなものを出していくことは有効なのかなと思います。

記事を通して不満な部分もあって、特殊性を活かしきれていないという風にも思いました。

2040年に半数の自治体は消滅するというレポートに絡めた記事(都市の論理と地方の非論理。衰退する地方を助けないといけない理由)は、それこそ他の地域でも書けるんじゃないの、という突っ込みが入ってしまう。あるいは地元にぐっと根付いてる人の方がいい記事書けるんじゃないの、じゃあ外からよそ者として、旅人として行った人間が何が出来るのかっていうところまで、もうちょっと見えたら面白かったと思います。

日本創生会議のレポートを作った人の話を聞いてきたんですけど、そこにいたのは地方紙の人たちばっかりでした。

一極集中で東京ばかりが政治の中心・経済の中心になっているわけだから、東京のエネルギーを少し下げて地方にある程度分散したらどうなのかと、地方紙の人たちが質問したら「東京のエネルギーを下げたら日本全体が発展しないからダメだ」と。じゃあ、彼らが東京の目線でものを考えることが東京にとっていいことなのかっていう疑問になりますよね。

河井:それってやっぱり地域のルサンチマン的な面もあるんじゃないでしょうか。地方・地域を一枚岩として、対東京という話だと思うんだけれど、絶対に一枚岩にならない。そう考えたときに、特殊性にもっと踏み込めたんじゃないかという話にも繋がりますね。

◆地域からニュースを発掘した先にあるもの

:みんな取材で苦労していたのは、ぱっと行ったよそ者の旅人に対して簡単に本音を言わない、本音を引き出せないところがすごくあった。だから「町おこしで頑張ってますよ」的な話になりがちだと思う。懐に入った形の報道・取材が相当難しかったなって。

河井:あえて「土の人」に深堀りすればいいって話じゃなくて、「風の人」みたいな人がふらっと行くことによって実は何かが生まれることもあると思いますが、いかがですか。

開沼:外から見たら、地域の人たちが当然だと思っていることに面白いというのはあるはず。一番は圧倒的に読まれた沢田マンション(設計図は雲の上 高知の九龍城「沢田マンション」 (上)花咲き乱れる脱法建築)。これは、地域からこんなのが発掘されました、という価値があったと思います。貿易のギャップみたいなもので、高知ではそんなに価値がないものを都会に持ってきて、大きな価値を見いだす、というのは、他にはなかったと思いますね。

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河井:高知だからこそ意味があるんだ、という形の記事がこれから生み出されていく期待はありますか?

開沼:ここだからこそ生み出すという文脈は、意識していかなきゃならないと思います。ただ、キャンプではなかなかそこまで答えが出なかったと思っています。

河井:基地からのお金って5パーセントなんです、と言って驚かせて終わりじゃしょうがないですよね。島さんたちは「えっ、5パーセントなの」って思わせた次に何をするんですか?

:5パーセントですって驚かせたら、その中身を解説して、沖縄が基地で食ってるとか、沖縄が政府から大量にお金をもらっているというのは、政府のプロパガンダなんだと。

ただし、どこもそうなのかもしれないけども、上から降ってくるお金に甘える物乞い根性みたいなものはある。もうひとつ、基地があった故に、製造業などが全然発展しなかったという沖縄経済の構造。このふたつが沖縄のひずみであるという結論にして、基地と経済構造の問題を両方解決していかなきゃならないっていうことですね。

 

河井:沖縄はいかにあるべきかみたいな、大文字の議論は確かに納得できるし、その通りだとは思うんですけど、小水力発電という小文字の話のように、日常にべたっとくっついていながら、特殊と普遍みたいな摩擦を起こしていかなきゃならない。今の島さんの話だと普遍の方に留まっていて、そこで摩擦熱が起きない。沖縄の言っていることは分かるけど、よく聞くよね、で終わってしまわないかという不安があるんですが。

:実際そういうこともあるとは思いますね。少なからずお金をもらっているからそういう話でいいでしょ、という、他人を説得できない部分が。

やっぱりどこかではっとしてもらって、違う視点があるということに気づいてもらうというのが地域ニュースの力というか、東京の常識とは違う視点で物事に気づいてもらうことを、取っ掛かりとしてやらなくてはいけないのかな。

◆日常を掘り出しても読んでもらえない

河井:日常の話をもっともっと掘り込む、掘り出すことが地域にとって重要ではないですか?

:日常を掘り出しても、なかなか読んでもらえない。政治家が失言したり、政局にまつわることが起こると食いつくけど、地道に何かをしてる、というのは伝わらない。

河井:でも沢田マンションは読まれたんですよ。ある意味めっちゃ日常の話じゃないですか。なぜあれが読まれるのか、地域ニュースの視点から、開沼さんはどう思われますか?

開沼:政治、歴史、生活の問題をうまく絡ませることに沢田マンション記事は成功していて、なるほどなるほど、こういう事情でこうなってこうなんだっていう。生活の問題を読まされているつもりが政治の話になっていく。最初は九龍城とか書いてあるから、何か変なものが書いてあるのかなっていう興味本位だったかもしれないけど、いつの間にかそこに大きな歴史を見てしまうっていう上手さなのかなと思います。

:「地域」とかそういう言葉が入ってる時点でアウトだ、誰もクリックしないっていう話があって、確かにタイトルも含めてすごく難しいですね。身近なところからテーマを掲げて、政治的な何かを気づかされるっていう手法というのは、新聞記事の主張にはないやり方です。新聞記事は基本的にテーマがあって、それを深掘りしていく形だけど、ソーシャルメディアの記事で面白いのは、まずテーマやタイトル設定をした段階で、つまり見出しをつけた段階で仕事の半分が終わっているところ。アプローチの仕方が全然違っていたので本当に目から鱗だった。新聞はアジェンダセッティングから始まるけど、今度はその逆の作業、というのは、ずっと新聞にいた人にとっては頭を切り替えないと出来ない作業だと思いましたね。

開沼:昨年もそうでしたけど、みんな迷っている。あとはやっぱり現場にぐっと近づいているからこそ、小さな部分に実は政治的なものが見えてくる。そこが見えた人と見えなかった人の差も、記事が面白く読まれたかどうに繫がっている。沢田マンションと猫の記事(誰も猫を殺処分したくはない―命の現場が抱える葛藤と現実―)が特に具体的に言うとそうですが、と思います。

  

河井:地元の人が書いてもいいはずなのに、あえて地元の人じゃない人が書く意味を、開沼さん、もう一度触れて頂けますか。

開沼:先ほども言った通り、日常の生活の中に根付き過ぎてしまって、本当は価値があるのにも関わらず見えていないものの価値というのが、地元の人じゃない人の視点。あとは、都会目線が良い方向に作用して、地方に行って「こういうの使えるじゃん」と伝える。そういうものを掘り出せる力があるのかなと。

河井:島さんはいかがですか。島さんは、沖縄の新聞で、東京に来ている。往復運動みたいなところも含めて、「外からの視点」について考えることはありますか?

:東京に来て一年ちょっとですけど、すごくショッキングというか、私たちが思わないようなたくさんの悪口を言われているっていう...。沖縄の常識は世間の非常識みたいなところもきっとあって。逆に言うと、東京目線で驚かせたいし、本当は沖縄にもっと面白いことがあるってことに地元の人は気づかない。気づかないものはどんどん消えていく現象もすごくあるので。今回高知に行って、外からの視点も重要だなぁと。

 

河井:その町で当たり前になってしまっているものが、別のところから見ると違う形で見えてくる。それを、ただ「そうですよね」って言うんじゃなくて、さらに組み合わせたり、アジェンダセッティングをしながら、どういう風に書いていくのかがあれば、地域ニュースとしての可能性はけっこうありそうですね。

開沼:そうですね。可能性がどこにあるのかっていうのは考えさせられました。

そのひとつで、前のセッシ?