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韓国ドラマの「儒教精神」に嫉妬する中国

2014年03月26日 14時32分 JST | 更新 2014年05月25日 18時12分 JST

「両会」(北京の人民大会堂で開かれる全国人民代表大会、全人代=国会と、国政助言機関の中国人民政治協商会議=政協)期間の3月5日、王岐山・中国共産党中央紀律委員会書記が、韓国ドラマ「星から来た君」に言及した。韓国メディアは「新しい韓流(1)の時代」が来たと騒いだが、正確なワーディングと、後の中国メディアの報道をよく見ると、必ずしも当たっていない。「全人代でも話題になった」「称賛」という報道を入念に調べてみると、中国の評論家の「韓流」への不適切な偏見と、長年の嫉妬がにじみ出る。

全国人民代表大会(全人代)と全国人民政治協商会議(政協)は、開かれるとその話題で持ちきりになる。「両会」期間中は各省・政府ごとの業務報告大会も開かれる。この日は、北京市の番だった。北京市長を務めたこともある王岐山(2)は、和気あいあいとした雰囲気と伝えられた報告大会で、北京人民芸術劇院長の退屈な文化部門の報告を聞いていた。王岐山が突然、報告に割って入り、冗談めかして話し始めた。

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(C) 신화망

「今、インターネットで流行っているドラマを見たか。あの、星...何だっけ?」。後ろにいた人物が小さな声で「『星から来た君』です」と教え、王岐山は笑って「なぜ韓国ドラマが中国で人気があるのかという問題を考えてみた」と言った。「韓国ドラマの核心と魂は、歴史と伝統文化の昇華だと思う」と語った。

続けて王岐山がたとえた伝統的な文化は、「家庭生活の些細なことや嫁姑の葛藤、そして倫理と『三綱五倫』(儒教の基本的な道徳指針)などのテーマを言う」と付け加えた。儒教の伝統について話したかったのだろうか?中国の大衆文化にも儒教的な内容を盛り込めばいいという意味にも聞こえる。中国の指導者たちは、長いこと忘れられた孔子(3)を、ときどき人民に広く知らせたがる。全世界に中国文化を広めることを目的として設立された機関は「孔子学院」だ。できれば「国教」にしたいのかもしれない。三綱五倫に込められた歴史的伝統は、中央集権的な統治に非常に適した思想だからだ。

中国メディアの「晨報」などは、「星から来た君」に込められた儒教的伝統を「中国の伝統文化の昇華」と断定して報道する。「中国」や「中華」が作り上げた歴史と伝統を、韓国が持っていってドラマに昇華したという論理だ。このような観点は、中国で韓流が語られ始めた初期の頃から登場する。2006年11月、新華社が引用して報道(4)した中国文化評論家・張国涛は、当時の「チャングムの誓い」ブームについて「奇跡に近い」と評価し「韓国の文化的背景は、中国ほど深くない」とした。中国メディアはつまり「恥ずかしい」と言ったのだ。

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(C) Letv

王岐山が中国の大衆文化の発展と関連して言及したことが話題になると、評論家たちは先を争うように論評した。1997年に韓国ドラマ「愛が何だって」が当時の最高視聴率を記録したときや、2006年「チャングムの誓い」に中国全土が熱狂したときと同じように、2014年の「星から来た君」の熱風にも一様に反応し反省している。

3月7日付「中国新聞網」に掲載された文化評論家の楊興東は「文化は境界がなく、品質の問題であり、審査や制度の改革、より先進的な創作環境が必要である」と主張した。大衆文化産業が発展するために、映画・ドラマの制作時に厳しい審査を受けなければならない中国の問題を指摘する。なぜか毎回、問題が核心からそれて「伝統文化の保護というスローガンばかりが世間をにぎわす」という、自嘲混じりの反省もある。「お前はどの国の人間だ? お前のDNAは何だ?」と、審査のたびにやかましく指摘する政策決定者を密かに批判する文章もある。

王岐山は「星から来た君」を持ち出し、よい大衆文化を作ってほしいというメッセージを伝えた。中国のDNAに合わないストーリー、政府の立場に反対する素材やテーマに対して、万里の長城を築いている中国の政策こそ、グローバルなDNAと合わないのではないか。三綱五倫の内容を含む韓国ドラマにならえばいいというのが政治指導者の認識だろうか。1980年代、民主主義が保証されなかった韓国から、よいドラマが出てこなかったことを考えれば簡単なことだ。中国の指導者たちが「儒教的」観念から脱することができなければ、中国大陸の外に一歩たりとも出ることは困難だろう。

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(1)「韓流」という言葉を初めて使ったのは、中国の「北京青年報」記者だ。1999年の「韓国の流行が押し寄せる(韩国的流行拥来)」というタイトルの記事に由来する。当時、韓国ドラマや音楽が流行して、韓国の歌手のコンサートに中国の女子学生たちが大騒ぎしたため、これを懸念した内容だ。多分に否定的で皮肉混じりの言及だった。1992年の中韓国交樹立以来「嫉妬」をはじめとする韓国ドラマが中国で紹介されたのは、当時の中国の放送業界が構造改革のさなかにあり、チャンネルが多様化してコンテンツが不足したためだ。言わば穴埋め的に編成された韓国ドラマが人気を集めたのだ。また、北京のラジオの番組「ソウルミュージック」を通じて韓国の音楽が知られるようになり、HOT、クローンなどのグループが中国でコンサートブームを起こした。

(2)王岐山は国務院副総理を務めた党長老・姚依林の義理の息子で、1980年半ば以降、地方に赴任した若い改革派四君子の一人として注目された。中央では金融の専門家として認められたが、朱鎔基首相の引退以後、左遷された。2003年に北京がSARSに襲われた緊急事態を受けて市長に登用され、事態の鎮静化に一役買ったとされる。

(3)2011年11月、北京の天安門広場に孔子像が登場した。約2,500年前の学者が中国の社会主義国家を象徴する広場に登場したことは注目を集めたが、世間の反応は芳しくなく、ほどなくして再び国立博物館の中に入った。孔子はいまだ中国人にとって、必ずしも「唯一の」尊敬対象ではない。儒教の教えを盲目的に守る韓国に比べて、中国は「改革開放」以来、貧富の格差の拡大や社会的不平等から来る不満を抑える「忠誠」と「孝行」の象徴であり、さほど歓迎されていないことを証明している。儒教はもちろん道教と仏教も、中国では歴史的に官吏主導の宗教として根付き、成長したと言える。

(4)「韓国ドラマは中国で10年も健在か?(韩剧在中国为什么 "十年不倒")」というタイトルの記事で「韓流」は「まさに世界放送史上、画期的な小説」であり「人々が感じる感動(友情、愛、家族愛など)を正しく表現」し、「物欲的な現実社会の中で夢見て待っていた感性を満足に表現」しており「中国と似たライフスタイルや行動秩序、倫理観念は儒教文化」であり、そんな韓国ドラマは「韓国民族の文化的な劣勢を免れるためのもの」であり「東洋文化全体の力を借りて、西洋文化と対抗しようとするもの」とした。

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