区議と女子高生と愉快なイラン人マスターの、イスラム教とISを学ぶ一夜

板橋を訪ねてきてくれた4人の女子高生と一緒に、愉快なイラン人マスターに会いにいき、イスラム教やイランの話、ISの話などについて話しました。

2015年も今日で終わり。今年の「まだ書いてない話」を急いで書き上げます。まずは、12/22に板橋を訪ねてきてくれた4人の女子高生と一緒に、愉快なイラン人マスターに会いに行った話です。

今年は本当にいろいろなことをやりました。

そのうちのひとつが、Change.orgでのキャンペーン「イスラム国って言うな!」です。

「イスラム国」という名称がムスリムに対して差別的な言動を助長しているということで、マスコミに対し、「イスラム国」という名称を使用しないよう求めました。

このキャンペーンは一定の成果を収めました。

まずNHKが正式に方針転換。他のメディアも徐々に「イスラム国」という名称の使用を控えるようになりました。

「イスラム国」という名称はまだ完全にはなくなっていないものの、現在では「IS」という呼び方が一番使われているように思います。

11月末、このキャンペーンを見た、とある女子高生からメッセージをいただきました。

法政大学女子高等学校の藤田明優菜さんからのメッセージで、「SGH(スーパーグローバルハイスクール)」のプレゼンテーションのテーマとして「イスラム教徒とIS」について調べている、話を聞かせてもらえないか...という内容でした。

なんと無謀な!

ひとつ間違えば身の危険もあるテーマですよ...。

しかし、せっかくの高校生の挑戦。

この機会に直接ムスリムの話を聞かせてあげたいと、上板橋の「デカ盛り居酒屋」として有名な「花門」のマスター、マンスールさんの話を聞きに行く段取りをつけました。

12/22に、藤田さんはじめ法政大学女子高校の4人の生徒と上板橋駅でお会いしました。

既に東京ジャーミィなどを訪問し話を聞いてきているとのこと。驚きの行動力です。

そこから、花門へと向かいました。

この日も大変賑わっていた「花門」。

マンスさんは、普段はとても陽気な名物マスター。

カウンターには様々な「ネタグッズ」が仕込まれています^^

「普通は、政治と宗教と野球の話はしないんだけどね。今日はせっかく高校生が来てくれたから、特別」と、イスラム教やイランの話、ISの話などを様々してくれました。

次々に料理をしながら、込み入った話を丁寧にしてくださったマンスさんに心から感謝しています!

...あ、言っときますけど、お酒は飲ませてませんよ^^

私も酒を飲まない人間なので、あんまり売上に貢献できなくてすみませんm(_ _)m

他のイスラム教国家とはちょっとちがうイラン

既に東京ジャーミィなどを訪れていた4人組は、「イスラムの教えとISはちがう」という認識を持っていました。

これは基本的にはそのとおりなのですが、話はそれほど単純ではありません。

イランは、他のイスラム教国家とは少しちがいます。

その中でも、日本に出てきてデカ盛り居酒屋を営もうなんて考えるマンスさんの話はまた一味ちがうわけで、4人の女子高生にとってはインパクトがあったのではないかと思います。

私はマンスさんに「そういえば、ここにズラッと酒が並んでるけど、これはイスラム的にいいの?」と聞きましたが、「売るのは問題ない」だそうです^^

イランはシーア派の国であることはよく知られていますが、それのみならず、アラビアで生まれたイスラム教をあとから受容した国であるということが大きくちがいます。

古くは「ペルシア」という国家であり、7世紀中頃にササン朝ペルシアがイスラム勢力に滅ぼされてイスラム化しました。

言語も、アラビア地域のイスラム教国家はアラビア語ですが、イランはペルシア語です。

対日感情も良好です。

アメリカとイランの関係は悪いですが、日本とイランは良好な関係を続けているのです。

アメリカに引きずられて、日本がイランに対して拒否感を持つようになってしまうのは、大変もったいないことです。

マンスさんの口からまず出てきたのも、アメリカに対する不信感でした。

「イスラム社会は、アメリカに対して強い不信感を持っている。そこで育った人間がそれに影響されないのは難しい」

いわゆる「9.11」アメリカ同時多発テロ事件が、それを口実としてイラク戦争を始めるための「自作自演」だったのではないかという疑念は、マイケル・ムーア監督の「華氏911」でも示されています。

少なくとも、イラク戦争の直接の口実であった「大量破壊兵器」は存在しなかったというのが事実です。

イスラムをめぐる「憎悪の連鎖」は、単に宗教のちがいから来ているものではなく、そこには必ず権力とカネが絡んでいる...ということ。

こんなことを高校生に教えたくはないですが、事実として認識してもらわなければなりません。

中心にあるのは、「石油」という巨大利権です。

高校生たちの中心的な疑問のひとつが「なぜISは、他のテロ組織とちがってこれほどまでに隆盛したのか」ということでしたが、その答えは「油田を押さえたから」となります。

「ジハードという言葉は怖い。聞きたくない」

一般のムスリムにとって、ISは同調できる存在ではありません。

マンスさんによれば、イランはISを絶対に入れない、入ってきたら徹底的にやっつける、とのことです。

しかし、イスラム教の中には、ISが利用できる要素があるのも確かです。

「ジハード」という言葉は、おそらくムスリムの間でも様々な議論になっているのではないかと思われます。

「ジハードという言葉は怖い。できれば聞きたくない」

と、マンスさんは語ります。

「もしイスラムの宗教指導者が『これはジハードだ!』と宣言したら、私はこんなところで居酒屋をやっている場合ではなくなる。すべてを捨ててそれをやらなければならない。ジハードというのはそういう言葉だ」

ジハードとは何も戦争に限った言葉ではなく、たとえば平和的な事業をジハードと宣言し動員することも可能だそうです。

ともあれジハードという言葉が、ムスリムの日常をすべて超越した強制力を持つものであるということは、私も初めて実感として理解できました。

変えるということは難しい。でも、君たちは変わったはず

マンスさんに何か質問はないかと高校生たちに促したところ、「人々の意識を変えて戦争をなくしたい。どうしたら戦争をなくせると思うか」という質問をした子がいました。

マンスさんの答えは「なくならないよ」という直球でした。

「少なくとも、すべての戦闘行為を200年は止める必要がある。近親者に直接の経験があると、その憎しみはなくならない。『あなたのおじいさんはアメリカに殺された』といわれれば、どうしたって憎しみを持つ」

高校生たちは「なんとか変えたい」という想いを持っていました。

せめて、イスラム教とISはちがうということを訴えて、ムスリムに対する差別を解消したい、と考えていました。

しかし、東京ジャーミィでの話やマンスさんの話を聞いて、変えるということがいかに難しいか...と痛感したと思います。

ただ、私は最後に4人に言いました。

「少なくとも、みなさん4人は変わったでしょ」と。

行動することによって、自分たち自身が、行動しなかったときの自分とはちがう自分になることができた。

これが重要なことです。

この次には、また異なるチャレンジに挑む。

それが、世の中を変えていくということではないかと思います。

繰り返しになりますが、法政大学女子高等学校の4人の女子高生、そして親切に応対してくださったマンスさんへの心からの感謝を申し上げます。

みなさんもぜひ、上板橋の「花門」に、デカ盛り料理を堪能しながらマンスさんの楽しいお話を聞きに来てください!

ただし、政治と宗教と野球の話は抜きでね!^^

(2015年12月31日「中妻じょうた公式ブログ」より転載)

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