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キューバの雪解けが日本にもたらすもの

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ホテルに掲げられたアメリカ合衆国国旗(筆者撮影)

日本の首相が初めてキューバに訪問する日も間近に迫り、昨年54年ぶりにアメリカ-キューバ間の国交が回復して以来、アメリカでは「キューバ」という国の名前を聞く日が多くなりました。

キューバへの日本人観光客数は増加傾向ですが、日本からは非常に遠い国であるため、「キューバ危機」や「キューバ革命」という言葉は聞いたことはあっても、キューバと聞いて思いつくのは葉巻とラム酒くらいかもしれません。

つい最近までアメリカ人の観光渡航は認められていませんでしたし、アメリカからの直行便もありませんでした。

しかしながら地理的には目と鼻の先の国。

「アメリカ合衆国の裏庭」とよばれるほど以前はアメリカ資本が流入していたキューバ。

そのキューバがアメリカと国交断絶して約50年、アメリカからキューバへの直行便が就航再開された歴史的なその日、キューバの地でアメリカ合衆国の星条旗が掲げられたのを目にした瞬間は、生涯忘れない記憶となりそうです。

さて、歴史的な詳細は他の資料にゆずるとして、現在のキューバの状況と、アメリカ合衆国と国交が回復したキューバに対して「日本ができること」について考えてみたいと思います。

■都市のインフラ整備に関して

キューバの首都ハバナ、とくに観光中心地であるオールドハバナ(旧市街地)の街を歩くと、そこは観光地としてしっかりと整備されていることを感じます。

歴史的な建物も多く(工事中、修理中の建物が非常に多いですが)多くの観光客であふれかえっていました。

現在観光客で多いのはカナダ人、イギリス人、ドイツ人だそうです(直行便就航前)。

日本人からの観光客数は15番〜20番目であり、やはり同盟国のアメリカから入国出来ないとあって、まだまだ少ないのだそうです。

観光地、特に観光客が宿泊するホテルのインフラは整備されているといっても、ビルの高層階では水が使えないかったり、トイレもあてにできないし、部品がないのか設備は壊れたままだったり、空調設備もとても快適とは言えない状態です。

もちろん水道水は飲むことはできません。

しかし、物資が不足しているにもかかわらず(食料や一部日用品は国からの配給)、観光地では日常品は普通に手に入れることができます。

そして一歩観光地を出ると、日本人は目にしたことがない空間が広がっています。

荒廃したビル、陥没した道路、ゴミの山、大量のハエ、汚物を道路に捨てる住民。

現地の人の話だと、一般家庭では通常、空調設備はなく、水道も給水車に頼ることがあるそうで、水道水の汚染も未だ深刻なのだそうです。

日本が何かできるとすれば、まず汚染や伝染病から住民を守ることでしょう。

さらに上下水道の整備、ゴミ処理設備の整備、そして生鮮食品の安全管理方法の整備(冷蔵庫などの完備)などではないでしょうか。

路地では高温多湿の中腐り始めた生鮮食品や、大量にハエがたかっている生肉などが売られています。

日本の最先端技術はこれらを整備することはそれほど難しくないと思います。

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一歩観光地を出ると、街は荒廃している (筆者撮影)

■交通機関について

上記の様に、観光地は整備されていますので(観光産業に力を入れているため)タクシー(よくガイドで見る年代物のアメリカ車のタクシー)や、バス等があります。

しかし空港からは電車やバス等の公共機関はなく、足となるのはタクシーのみ(価格は交渉で、相乗りも普通です)。

そして中心地から離れると、まず気になるのが道路の陥没です。その陥没も浅いものではなく、走行不可能な程陥没していたり、アスファルトがはげていたり、とても自動車が走行できる道路ではない場所が多数存在します。

街灯も非常に少ないために、そのような道路を走行するのは非常に危険です。

また、横断歩道、信号も地方では整備されていないため、高速走行中に停車している車の陰から人が飛び出してきます。

そして地方に向かうと、今度は馬車の世界へと変わっていきます。

高速道路の端を馬や馬車が行き交います。

これだけ見れば古き良き時代ですが、道には糞が散乱しているため衛生的には悲惨な状況です。

また、ガイドブックの交通機関の項へ載る程、キューバではヒッチハイクが多用されます。

その点はアメリカに比べれば安全と言えるかもしれません。

今後アメリカ資本が再流入すれば、車社会が後押しされることが予想されます。

雨やハリケーンなどの災害が多いキューバには、災害に強い日本の交通技術がマッチするでしょう。

とくに現在のキューバ鉄道は時速も遅く、整備がされていないため、日本の鉄道技術により整備されれば、キューバ国民にとってたくさんの利点があるかもしれません。

また、港も非常に荒廃しているため、日本の港湾技術が参加することができると思います。

■社会保障制度、医療問題について

キューバは、社会主義体制の下で国家が国民に対して雇用、衣食住、教育そして社会保障を提供し、その生活を保障する制度が構築され、それが憲法にも明記されています。

キューバの医療制度を日本も参考にすべきとの意見もあるくらい、住民一人あたりの医師、歯科医師数はかなりの数になります。

もちろん医療は国が保証しています。

また、予防接種も施行され、平均寿命も78歳と先進国並みです。

これらの取り組みはアメリカからの製薬資本に対して、病気は自国で予防すると言った社会主義的な考え方が功を奏しているものと思われます。

しかし、実際は大気汚染や水質汚染が非常にひどいために、コレラ、A型肝炎、細菌性赤痢、腸チフス、アメーバ赤痢や、それ以外にも狂犬病、ハンセン病、結核なども見られますし、病院設備の老朽化や薬剤の不足等が深刻であり、制度が整っていても満足に機能しているかどうかは疑問です。

いっぽう、医学に関する研究はさかんに行なわれているようで、とくに最近はキューバが独自に開発した肺がんワクチンなどにも世界から注目が集まっています。

資本の流入によりインフラ整備が進めば、キューバの医療制度が機能し、平均寿命もかなり伸びると予想されます。

制度自体は理想的ですので、現在キューバが維持している社会保障制度から先進国が学ぶことも多いのかも知れません。

■まとめ

2016年9月、キューバの観光地ではアメリカ国旗の服を身につけた人を多く見かけました。

空港はまだまだ先進国とはほど遠い様相です。

そして、デパートには驚く程商品がありません。

田舎では馬車に乗る人が多く、もちろん家畜であるだろうと思われる牛、馬、豚、鶏、そして犬や猫が野生のようにうろうろしています。

アメリカの経済封鎖を50年耐え抜いたこの国は今後アメリカ資本の流入によりどのように影響を受け、変化するのか。

またアメリカ合衆国の同盟国である日本がこのキューバという国とどのように関わっていくのか、日本の首相のキューバ訪問後、その歴史的流れを見ることができるのは非常に価値のあることだと思います。

※本記事の内容は個人的見解を示すものであり、所属する組織の公式な見解ではないことをご留意ください。

編者:北原 秀治(きたはら しゅうじ)
日本政策学校 第2期生、オーガナイザー
博士(医学)。ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院博士研究員。専門は解剖組織学、癌研究。日本政策学校、ハーバード松下村塾(通称ボーゲル塾)で政治を学びながら、「政治と科学こそ融合すべき」を信念に活動中。現在シンクタンク立ち上げ準備中。興味のある方、Webを手伝ってくださる方募集しています。

<参考文献>
1:CNN ニュース
http://www.cnn.com/2016/08/31/travel/cuba-one-americans-view-of-change/
2:肺がんワクチン
http://wired.jp/2016/03/31/cimavax/
3:朝日デジタル(安倍首相)
http://www.asahi.com/articles/ASJ8L53N1J8LUTFK00K.html
4:ハーバードビジネスレビュー
http://hbol.jp/52227
5:キューバの社会保障制度
http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Download/Report/2009/pdf/2009_408_ch6.pdf