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「実施してなかったら...と思うと怖い。」 550人の人生を変えた、ワーク&ライフ・インターン

2017年03月07日 15時05分 JST | 更新 2017年03月07日 15時05分 JST

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-インターン先は「家庭」で、インターン活動は「子育て」!?-

「ワーク」と「ライフ」のリアルを学ぶ体験型プログラム、ワーク&ライフ・インターン。

仕事と子育ての両立なんてスーパーウーマンでないと無理...。と未来に希望を抱けない大学生を主人公に、人生が変わる4カ月間を提供し、キャリア教育の在り方に革命を起こす、スリール株式会社代表の堀江敦子さんに、プログラムの魅力やご自身の中にある大きなミッションについて、熱く語っていただきました。

■「ワーク&ライフ・インターン」とは? 何を経験し、何を学べるのでしょうか。

~子育て!?未知の世界へ踏み込むことで。~

「ワーク&ライフ・インターン」は、大学生がペアとなり、一つの受け入れ家庭で4カ月間、子育てを体験させてもらい、子育てと仕事の両立について考えていくことをメインとしたインターンプログロムです。4カ月間をひとつのクールとして、年に3回実施します。毎回40人の学生が参加していて、これまでに550人以上が参加しました。

学生は、まずA4用紙4枚ほどのエントリーシートを書き、自分が将来どんな職業に就きたいか、どのくらいの年齢のお子さんと触れ合いたいかを明確にします。選考を受けた後、家庭とマッチングを行い、受け入れ家庭が決まり活動が始まります。頻度は月に6回ほどです。夜の活動になるので、授業が終わった後にインターンに行くかたちです。

また、月に1回、企業へ行かせていただいて、仕事内容やそこで働く人のキャリアについて紹介してもらっています。講師に来ていただいて、女性の体のことや男性の育児参加、LGBTに関してなどをテーマに勉強し、世の中が既に多様なんだということを学ぶ機会もあります。

このように、「実践と座学」「ワークとライフ」を4カ月間繰り返すことで、自分自身がどう生きていきたいのか、今ある社会問題は何なのかに気付いていきます。

4カ月のインターンを終えた最後に、「10年後、自分たちが仕事と子育てをする時にどんな社会にしていきたいのか。」をテーマとしたアイディアプレゼンテーションを約150人の前で行ってもらいます。参加前は、あまり積極的ではなかった大学生が、インターンを終え最後のプレゼンでは堂々と発表できるようになっています。

■参加者の人生を変える秘密は何ですか。

~コミュニケーションの「壁」を乗り越えることで成長する~

まず、参加大学生には、一人ひとりに社会人のメンターがついています。月に一回お茶会をして、就活、大学生活、恋愛についてなど、ちょっと上のお兄さんお姉さんの視点で相談にのってくれます。

また、インターンの学生は、4カ月間のプログラムの中では多くの人と出会いインターンを実施しているので、必ず「コミュニケーションの壁」にぶつかっていきます。

最も素直な人間である子どもと接する中でのコミュニケーションの壁もその一つです。

学生は、決してベビーシッターをやるのではないので、子どもを自分たちの兄弟のように考えて、一緒にやってみたいことをどんどん提案してもらっています。例えば、クリスマスパーティーをしたり、動物園へお出かけに行ったり、自分たちでおもちゃを作ったりと様々です。

洋服を自分で着ることがきるのに着ない子どもに対しては、すごろくを作って、「お洋服を着る。」のマスを作ってみる工夫している学生もいました。どうやったら、子どもたちが楽しく遊びながら、色々なことができるようになっていくのかを考えて実践できる仕掛けを作っています。

学生はインターンを行う中で、ペアと協力しながら子どもにしっかりと向き合っていきます。その中で、子どもとの接し方や、ペアとの意見の相違などを経て、自分のコミュニケーションの癖(叱ることができない、人に素直な意見が言えない)に気づいていきます。

インターンを行った上でのコミュニケーションの壁を、メンターさんや受け入れ家庭の親御さん、同期の仲間とともに解決し、自分らしく人と向き合っていくことができ、子ども達も自分たちに向き合ってくれる大学生を信頼していきます。

たくさんの壁にぶつかって、誰かに相談して選択していく、このPDCAサイクルを通して「自律的な人」をつくっていくことが私たちのミッションです。それを支えるために、タテ(受け入れ家庭)・ヨコ(同期)・ナナメ(メンター)の存在を設けています。

■インターン参加後の学生はどんな変化をしていますか。

~なんだ、自分にもできるかも。~

色々な社会人と出会い、自分で行動するようになると、キャリア観が変わっています。事前と事後で同様のアンケートを取りますが、参加前は「社会人って辛そう。」「会社って辛い、ブラックだ。」「社会人になりたくない!」という意見を持っている人が多いのですが、「社会人になるのが楽しみだ。」と答える人が増えます。

「仕事と子育ての両立をしたいですか。」という質問に関しては、「したい」と答える人は約80%いるのですが、「できる自信がありますか。」と聞くと、13%の人しか自信があるとは答えられないんですね。4カ月の活動が終わった後は、「制度が整っていない会社でも自分次第で子育てと仕事が両立できると思いますか。」と聞いて、60%の人が「できる」と答えています。

なんとなく「自分にもできるかも。」と思えるようになっているようです。

それまでは、働いたら子どもがかわいそう、という固定概念を持っていた人も、インターンを通して、子どもが保育園を楽しんでいて、お母さんのことを大好きでいる様子、子ども自身がお母さんが働いていることを楽しそうに自慢している姿を見て、自分も我が子からこんな風に思ってもらいたいと感じるようです。

完璧じゃないけど、それでも良い。お部屋がぐちゃぐちゃな日があっても良いと思えるようになるんですね。人に頼りながらであれば、子育てと仕事の両立が「なんだ、自分にもできるかも。」と安心につながるみたいです。

それに、これまでの550人以上の参加者は、6年経って現在子育て真っ最中の人もいます。自分の結婚式に受け入れ家族だった子どもたちを呼んで、リングガールをやってもらったり、出産後に赤ちゃんを受け入れ家庭のお子さんに見せに行くなど、まるで第二の家族のように関係はずっと続いていきます。

■ワーク&ライフ・インターン、拡大中。

最近では企業、行政、大学まで拡大させています。女性は、第一子を機に退職してしまう人が6割以上いたり、仕事に対しての気持ちが控えめになってしまい、企業にとっても損失となっています。また、子育てだけではない多様な生き方をしている人を理解し、働き方やマネジメントに活かしていくことが、会社に求められています。

その為、企業向けとしては育休後の女性を対象にセミナーを開催したり、マネージャーを対象に「イクボスブートキャンプ」と称し、管理職の人たちに夕方5時に帰って子育て体験をしてもらうことで、時間に制限がある中で仕事をするとはどんな生活なのかを実体験してもらっています。この経験から「ライフ」の中にこそ「ワーク」があることを知った上で部下に接してもらえるように管理職へのアプローチを大切にしています。

大学向けとしては、4つの大学へプログラムを導入し、企業へも7社導入しました。なかなか大学は新しいことを積極的に導入してくれないため、千葉大学が興味を持ってくれたのをきっかけに広げていきました。行政向けでは、文京区にて6日間のプログラムとして導入をして、今年は3つの地方行政にて実施することができそうです。

■子育てインターンの効果は仕事でもしっかり発揮されています。

~仕事の面で、アクセルが踏めるようです。~

参加学生の就職先は、企業、行政、教師など様々です。色々な人の生き方を見て、自分はこれをやりたいと見つけて進んでいきます。インターンでワーママ(働くお母さん)を見ていて企業では3年間でスキルをつけることが大切だと学び、会社から求められる人材になれば社内でもやりたいことができるようになると気づけるんです。

子育てと仕事が両立できることを体験しているので、むしろ仕事に対してアクセルが踏めるようです。

参加学生の中には、営業成績トップで表彰される人がいたり、2・3年目でリーダー職になったり、社内で子ども向けの職業体験を提案して雑誌で取り上げられた人もいます。

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■受け入れ家庭からはどんな声がありますか。

「子どもにとって兄弟が増えました。」といった、インターン生を第二の家族として歓迎してくれる言葉をいただきます。

親も1人の人間なので、完璧ではないので何でもできる訳ではないですよね。ピアノが弾ける学生が来てくれて、色々な価値観を子どもたちに与えることに繋がるように、多くの人を子育てに巻き込むことは、「悪いこと」ではなくで、逆に子どもの成長に繋がっていくんです。子どもと一緒にご飯を作ることで、子どもの家事力が上がるなんてこともあります。

また親自身も、学生さんと話すことで、自身のキャリア観を見直すきっかけにもなっています。「家族の会話が増えた。」という声も多いです。夫婦ではつい子育てのタスクの話になりがちですが、学生が入ることで今の教育の話題など、新鮮な話題が増えていくとおっしゃってくれます。

■大学での「キャリア教育」で、女子と男子の反応の違いはありますか。

~反応はだいぶ違います!~

女子学生は、「仕事も子育ても全部しっかりやらなきゃいけない。」と考えている人が多いので、「なんだ、完璧じゃなくても良いのかあ。」とすっきりしていくようです。

一方、男子学生は、「まずは一社目に良い会社に入ろう。」とか、とにかく仕事のことしか考えていない人が多いです。受け入れ家庭の方の生活や人生を見て、「多くの選択肢がある中で、自分はどうしようか」考えるようになり、急にモヤモヤし始めていますね。それに、「女子ってめっちゃ考えてるな。」と驚いている男子も多いです。

■堀江さんは、25歳で起業されていますが、「若い」「女性」としての起業はいかがでしたか。

「若い」と「女性」はどちらかというと良い事も多かったので苦しかったことはなかったです。起業をしたきっかけは、元々起業をしようと思っていた訳ではなく、社会課題を感じ、解決していきたいと思った時に、起業という選択肢があったという感じです。

ただ、大学時代に女性起業家のベビーカー持ちをやっていて、その人の「ワーク」の部分だけでなく、家の中の様子も近くで見ていました。このように身近に起業をしている人、その上で両立している人を見たので、女性の生き方の選択肢の1つとして、起業があったのが自分の後押しになったとは思っています。社会人になってからも同世代の仲間で起業していた人もいたので、自分の中で起業が「遠い世界の話」では無かったと思います。

■堀江さんの、究極のミッションを教えて下さい。

~「前向きに自分らしい人生を生きる人が増えて欲しい」 これが究極の願いです。~

私の生きてきた人生の中で、その願いを支える3つの要素があります。この3つの要素が叶えられるプログラムとして、ワーク&ライフ・インターンができました。

私の願いが、プログラムに詰まっているんです。

「こんなはずじゃなかったと、自分の人生選択を悔やむ人を減らしたい」

色んな人生の選択肢を知らずに、後から「こんなはずじゃなかった」と後悔してしまうのは、他責になってしまうし、とても悲しい事だと思います。

特に日本では、仕事と子育ての両立についての学びが少ないことで、自分の本意ではなくどちらかを諦めてしまうことが多いです。事前に未来はわからないけれど、納得して選択をする人が増えていけばと思っています。

「親育てをしたい・子どもを見守る大人を増やしたい」

親になることって実は誰も教えてくれないんですよね。子どもに対して愛を注げるようになるためには、まずは自分自分にOKを出せるようになること。そして、一人でみるのではなく、多くの大人が子どもに関われるようにすること。200名以上の子どもと家庭に関わって、子育ては1人や2人ではできないと痛感しています。

そして子どもは様々な人たちとの関係性の中で育っていくので、子どもを見守る大人を増やすことで、子どもにとって良い環境を作っていきたいんです。

「自分の先のことを考えて行動する人を増やしたい」

社会課題に当事者意識をもって行動する人が増えないと、社会は変わらないと思っています。日本では、多くのものが「健常者の大人の視点」で創られていて、そこから外れた人は自立ではなく「サポートされる存在(弱者)」になる。そして、課題の当事者になった瞬間に、その弱者の声は聞き入れられなくなるという構造があると考えます。

だからこそ、子育てをする前・高齢者になる前・障害者になる前に、どんな状態でも自立して楽しく生きられる状態を考え、創り上げる人が増えていくことで、社会が変わると思っています。これが私にとっての人生のミッションだと感じています。

25歳のある日、ワーク&ライフ・インターンの事業を思い浮かべた時、この3つの願いが実現できると確信しました。

将来の選択肢を知らない大学生が主人公で、その学生たちが親になる準備をしながら、子どもを見守る大人として活動し、自分たちもいろいろな大人に見守られて、子育て体験を通して、「働き方」「子育てサポート」「食事」「交通」などの社会問題に触れ、当事者意識を持った上で自分たちが解決していくためのアイディアを提案していく。

ワーク&ライフ・インターンは、ただの子育て体験プログラムではありません。

自らの人生を自律的に切り拓きながら、社会課題を解決する担い手を育てるプログラムなのです。

■挫けそうになったことはありませんでしたか。

~負け続けても、これだけは信じられる。~

ユニクロ代表の柳井氏の名言で「一勝九敗」という言葉があって、その意味をよく考えてみたんです。これは一勝する前に、九連敗している状況ですよね。つまり、先に一勝があるのではなくて、九連敗した後にもう一回チャレンジさせて下さいと言えた先にある「勝ち」なんですよね。「九連敗しても私はこれを信じてやり続けられるか。」

そう自分に問うた時、私の答えは「Yes」でした。これは自分が体験してきたことであり、何よりも自分が好きなことだから。

自分で「5年」という期限を定めて、挑戦しました。5年経って何の芽も出なかったら、別のことをしようと。だって仮に失敗しても、そのときまだ30歳なので、いくらでも転職できますし。もちろん、辞める気なんてなかったですが。(笑)

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■「子育て」や「働き方」への意識改革を起こすには、どの業界や世代へアプロ―チをすべきでしょうか。

~産業界、おじさま世代へアプローチ~

まさに、私たちが2017年に向き合う内容です。日本は、産業界から変えていかないといけないと考えています。そして、物事は上から下へ流れるということも大きなポイントです。

多くの会社には、管理職世代が培ってきた現代社会の歴史があって、それは間違っていなかったと思います。

ただ、今は時代が違うということを伝えて、「行動を変えていき、今の時代に乗せていきましょう。」ということを伝えていきたいです。そうでないと、ミスコミュニケーションが起きてしまうと思うんです。

■堀江さんご自身の今後の目標はなんでしょう。

まず、結婚と出産です!(笑)

2016年には、アメリカの日米会議で発表する機会をいただき、目標としていた「海外への発信」を実現しました。日本でも海外でも「女性が活躍できる社会」の発信をしていくことが2017年の私自身のキャリア目標です。

私は毎年、一年の目標として漢字を掲げています。2017年は「育」です!

ようやく基盤を固めてきたスリールという自分の会社をよりたくましく「育」んでいくことが目の前の目標です。

■「ワークライフバランス」改革の分野で活躍したいと考える後輩へのメッセージをお願いします。

~「本物」を作ってください。~

特に、ワークライフバランスやキャリア教育って、言葉が一人歩きしやすくて、絵に描いた餅になってしまうんです。でも、本当のキャリア教育って、人生を変えるものなんです。

今は、日本の転換期だと思います。まさに、働き方や生活文化がガラッと変わろうとしています。

そんな今、ワークライフバランスを座学だけの講座で訴えても、誰も変わらないと思います。

自分がやりたいと思うことを、職人意識を持って作り上げてほしいと思います。

今でも時々、スリールで子育てインターンを経験した人が遊びに来てくれるのですが、「やって良かった。」ではなくて、「スリールに出会えなかったらと思うと、怖い。」と言ってくれるんです。みんな人生が変わりすぎているようです。

そんな言葉を聞いて、私にとっては、この「本物」のインターンプログラムを作りあげたことが一番の価値だと確信しています。

どこまでも突き詰めて、「本物」を作ってこそ、生き抜けると思います。

ぜひ、本物を作ってください。

(聞き手:日本政策学校事務局 須藤やや)

★プロフィール★

堀江敦子(ほりえ・あつこ)

日本政策学校9期生。

日本女子大学社会福祉学科卒業

大手IT企業勤務を経て25歳で起業。 花王社会起業塾に参画。

「働くこと」、「家庭を築くこと」をリアルに学ぶ「ワーク&ライフ・インターン」の事業を展開。

経済産業省「第5回キャリア教育アワード優秀賞」を受賞。

両立支援や意識改革を得意とし、企業や大学、行政等多くの講演を行う。

2015年日経ビジネス「チェンジメーカー10」に選出される。

内閣府「男女共同参画 専門委員」や、厚生労働省「イクメンプロジェクト」、

「ぶんきょうハッピーベイビー応援団」など複数行政委員を兼任。

■スリール株式会社ホームページ

http://sourire-heart.com/