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ジャンルを超えて北海道の酒造メーカーがひとつになったプロジェクト「パ酒ポート」に、地域活性化の未来を見た

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日本酒蔵、ワイナリー、ブルワリーなど、北海道各地にある酒蔵巡りを楽しめるスタンプラリー帳「パ酒ポート」。酒造メーカーの利害を超え、北海道のお酒を通じて地域を活性化し社会に貢献したいという思いが結実したプロジェクトが成功した裏には、道内のお酒業界全体を底上げしたいという参画企業の情熱がありました。

北海道酒造組合の副会長を務める田中酒造社長の田中一良さんに「パ酒ポート」にかけた地域活性化の思いを、そしてプロジェクト実現のために奔走し、参画企業を『チーム北海道』としてまとめ上げたJTB北海道法人営業部の田村千裕にプロジェクトの舞台裏を聞きました。

■ 「お酒を通じて地域を活性化し社会に貢献したい」田中酒造 社長 田中一良さん


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※肩書きは取材当時のものです。

田中酒造の代表であり、北海道酒造組合の副会長を務める田中さんは、「パ酒ポート」が生まれるきっかけをつくった人物です。かねてから道産酒の道内消費低迷を課題としてきた田中さんは、ある商談会のツアーに添乗していたJTBの田村千裕に何気なく相談しました。

「もともと日本酒の認知向上や消費拡大のために、なにか観光とからめた施策ができないかと考えていました。JTBさんはツーリズムに関するノウハウやネットワークをお持ちなのはもちろんのこと、私のなかでは旅行会社というより総合エンタテインメント企業というイメージでしたので、なにかおもしろいアイデアが得られるのではないかという期待もありましたね」

日本酒・ワイン・ビールなど酒類の垣根を越えて道産酒のブランド価値を向上させられないか、道産酒の消費拡大によって地域を活性化できないかーー。田中さんと田村のそんな思いは、酒蔵スタンプラリーというユニークなアイデアに結実します。

「道内のお酒業界全体を底上げするという目的を、酒蔵スタンプラリーで実現しようと動き出したとき、JTBさんの実行力の高さには正直びっくりしました。田村さんが提案してきた冊子はすでに〝道産酒×食×旅〟というコンセプトが確立されていて、購入者を楽しませるための工夫がいっぱいに詰まっていました。女性の視点や感性が盛り込まれている点も新鮮でしたね。たとえば、ワンコインで入浴できる施設を集めたり、スタンプの数によって応募できるプレゼントを設定したり、アイデアの豊富さには驚かされます。プレゼントの内容も、さっぽろテレビ塔展望台30分貸切権やビール1年分2人で山分け権とか。発想が斬新で遊び心にあふれていますよね」

JTBが提案した「パ酒ポート」という名称に、田中さんは最初、違和感を感じたといいます。

「初めて見たときは『おい、冗談だろ』と思いましたけど、誰かが〝ぱしゅぽーと〟と言うのを聞くと、あれ、意外といいなとなって(笑)。響きもいいし、企画をよく表現できているネーミングだと思います。このネーミングもそうですが、コンパクトに持ち歩けて必要なときはパッと広げられるZ折の判型やオリジナルのキャラクターで楽しい世界観を構築しているところなど、全体的な完成度の高さはさすがJTBさんは蓄積しているノウハウが違うな、と感心するばかりでした。もし北海道酒造組合がつくっていたら、特典もこれほどまで充実させられなかったでしょうし、デザインも堅苦しくて味気ないものになっていたでしょうね」

■ 「日本酒業界は非常に頭が固く、プライドばかり高い(笑)」業界の壁を崩したJTB

北海道酒造組合での経験から同業者が連携するむずかしさを痛いほど知っていた田中さんは、いかに参画企業が足並みを揃え、目的を共有できるかが「パ酒ポート」成功のカギだと考えていました。

「参画企業と競合しないJTBさんが音頭をとれば可能性はあると見ていました。介在するJTBさんが信頼感と期待感の大きな企業であるという点もプロジェクトの推進力になるはずだと。とはいえ、田村さんは大変な努力をされたと思います。ワイナリーが集まるワイン懇談会に熱心に顔を出したり、遠方の酒造所まで口説きに行ったり、いちばん汗をかいたのは間違いなく田村さんです。そのおかげで、お酒を通じて地域を活性化し社会に貢献したいという思いを参画企業が『チーム北海道』として共有できたと思います」

道産酒の消費拡大を目的にした施策は、かつて行政や各種組合が主導して実施されたこともありました。その経験を踏まえて、田中さんには道産酒活性化の課題が見えていました。

「行政や組合が事業の主体になる場合は、関係する全企業を網羅することが前提となることが多い。また、もたらされる利益の偏りを問題視するあまり、商業的な広がりを抑える傾向も見られます。その点、一企業であり、中立な立場であるJTBさんが中心的役割を果たすことで参画企業の選定の自由度は上がりますし、もたらされる利益はできるだけ広く厚いほうがいいと、まったく逆の発想で物事を考えることができます。道産酒が盛り上がる。それこそが地域の活性化につながるという信念のもと、地域の利益につながる効果的な一手を打ちやすいのです」

「パ酒ポート」のような施策を実施するにあたって、田中さんが重視した点がもう1つあるといいます。

「重要なのは継続性です。1回限りのイベントではなく、継続することでムーブメントにまで成長させることができます。施策を継続するためにはお金が続く事業性が不可欠ですし、常にフレキシブルなアイデアが必要です。我々のような日本酒業界は非常に頭が固く、プライドばかり高い(笑)。事業性を突き詰めて考えることができ、また、継続に不可欠な様々なアイデアを提供してくれるJTBさんのような存在とうまく組む。これは有力なソリューションだと思います」

■ 予想外の波及効果 「パ酒ポート」の購入者同士がSNSでつながる

「パ酒ポート」の発行後、各参画企業で訪れる人などに変化はあったでしょうか。田中酒造では「パ酒ポート」を持って訪れる方が顕著に増えたそうです。

「これまで来店していただいていたのは、どちらかというとお酒に関心の高いお客様です。『パ酒ポート』発行後は、そのようなお酒のファンがスタンプラリーを楽しむ姿も当然多く目にしましたが、印象的だったのはお酒への興味が薄い方々にもお越しいただくようになったことです。ご夫婦での来店も増えました。あるご夫妻に話をうかがうと、『これまでお酒に興味がなかったけど日本酒やワインの世界って面白い』と、飲み比べのためにお酒を購入していかれました」

「パ酒ポート」による利用者の変化を田中さんはこう分析しています。

「お酒のファンだけでなく、スタンプラリー自体のファンにも『パ酒ポート』は関心を引いたようです。また、休日のお手軽な過ごし方としてこのスタンプラリーに着目した人もいて、夫婦や家族連れのお客様が増えたことはその恩恵かと考えています。つまり、食やイベントなどに関係が深く受け皿として大きなお酒というテーマとスタンプラリーの手法が結びつくことによって、潜在的なお酒ファンを掘り起し、行動を喚起している。北海道に新たな人の流れが生まれ、各地に人と人との交流が生まれ、地域に経済効果が出ている。そう実感しています」

もうひとつ予想外だったのは、「パ酒ポート」の購入者同士がSNSで自発的につながり始めたことでした。

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「FacebookやTwitterなどのSNSで『パ酒ポート』のコミュニティが生まれています。お客様同士がつながって楽しんでいただけるということは、ムーブメントとして影響力の大きさの証でしょう。道産酒ってこんなに多様性があって奥が深かったんだと強く再認識できるのが酒蔵巡りの価値であり、醍醐味だと思っています。予想を超えたさまざまなお客様に、予想を超えた楽しみ方でその醍醐味を堪能していただけていることを心から光栄に思います。このような地域を活性化するコンテンツが定着すれば、かけがえのない地域の財産になっていくことでしょう」

「パ酒ポート」とは

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「パ酒ポート」表面


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「パ酒ポート」裏面


「パ酒ポート」とは北海道で市販されている冊子で、北海道にある日本酒・ワイン・ビール・ウイスキー計23の酒蔵所を巡るスタンプラリー帳です。およそ8カ月間の期間内に押したスタンプの数によりさまざまなプレゼントに応募でき、すべてのスタンプを集めると「全酒造所制覇認定書」が授与されます。各酒造所、そして近隣の観光施設やガソリンスタンドなどではお得な特典を受けられます。

第1回目の2012年版は8000部を発行。2013年版は1万部を発行しました。

◇入手法
スタンプラリー参加酒造所、JTB北海道の店舗、温泉施設、宇佐美のサービスステーションなどで購入。1部500円。

◇特典例
・酒造所:買い物5〜10%割引、お猪口やアイスなどのプレゼント、くじ引きなど
・ガソリン:1Lにつき5円引き
・入浴施設:ワンコイン入浴
・スポンサー施設:入場料割引、飲食代5〜10%割引など

「パ酒ポート」Webサイトへ

■ 「参画企業をひとつに。私ができるサポートは、これに尽きます」JTB北海道 田村千裕

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JTB北海道 法人営業部 田村千裕
「多くの方のお知恵を借り、私はとにかくフットワークでプロジェクトを進めました」と話す。
※肩書きは取材当時のものです。

田中酒造の田中一良社長との出会いは2011年秋。香港での商談会に添乗した際に、参加されていた田中社長と雑談するなかで、「道産酒を盛り上げられないか」という話題になりました。北海道酒造組合の代表を務める社長は、日本酒の道内消費の伸び悩みに高い問題意識をお持ちでした。北海道全体で日本酒を盛り上げたい、ワインも含めたお酒の業界が一丸となった「チーム北海道」で道産酒の認知向上、消費拡大を図りたいという社長の思いに、私は強く共感しました。

考えてみれば、沖縄に行けば沖縄料理と一緒に地元のビールや泡盛を味わうのが一般的ですし、九州では特産の焼酎を楽しみたいという方が多いでしょう。ところが、北海道はこれだけ食べ物の魅力が語られる場所であるにもかかわらず、食の延長上のお酒には目が向けられていません。たとえば、すすきのの飲食店でも道産酒を扱う店はわずか3割程度ともいわれています。道産酒を積極的に味わいたいと思ってもらえるようにしなければ。その思いが募っていきました。

田中社長とブレストするなかで、お酒と道内観光をからめた酒蔵巡りツアーというアイデアが生まれ、そこからお客様に自分で酒蔵巡りをしていただくスタンプラリーという発想が生まれました。そして、日本酒・ワイン・ビールという酒類の垣根を越えた「チーム北海道」で、お酒に関連する業界全体を底上げしようというビジョンが明確になり、現在の「パ酒ポート」の原型ができました。JTBグループには地域活性に詳しい社員が多くいますので、企画についての意見を聞くなど試行錯誤しながら事業スキームを固めていきました。

「パ酒ポート」を広げると、大きな紙面で一覧性が高くなっています。広げて見ている姿が目立つことによる広告効果も狙いました。Z折の体裁にしたのは、必要なときには広げて全体を見ることができ、コンパクトに携帯できるという利点もあるからです。掲載スペースの関係から酒造所を23と決めましたが、参画企業を集め、ひとつにまとめるのには本当に苦労しましたね。これは想像以上に大変でした。特に初回は「このようなツールです」と見せられるものもありませんでしたから。ある業界団体に相談した際は『JTBはとんでもないところに足を踏み入れてしまいましたね』と同情されるほど。お酒、特に日本酒の蔵人は昔ながらの職人気質で、みなさん我が道を行くという個性派揃いだそうで(笑)。競合他社と足並みを揃えることに抵抗を感じるのは、お酒の業界に限らず当然のこと。私にできることといえば、とにかく思いを伝えるだけです。お酒を通じて地域の交流を創造し、地域を活性化する。それが「パ酒ポート」の目的なんです!と。初めから業界内で協力してもらうお願いをするのではなく、同じ目的を共有してもらえれば結果的に業界がまとまっていくと信じてがんばりました。

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まだコンセプトしかない初期段階に、サッポロビール様が協賛を決断してくださったのは本当にうれしかったですね。「パ酒ポート」が地域の活性化という社会貢献につながる側面を即座に理解していただけた。目指す方向性は間違っていないと勇気づけられました。最終的には無事に23の酒造所に参画していただき、ほかの企業にも協賛していただくことができました。発売開始のタイミングでは、マスコミに情報提供して新聞などのメディアでの露出を仕掛け、大きな注目を集めたことも好調なスタートに弾みをつけました。発売後は口コミによる堅調な売れ行きを見せ、プレゼントの応募数は事前の予想をはるかに超える数字を記録。確かな手ごたえを感じた瞬間です。

■ 北海道発の「パ酒ポート」を日本各地、ひいてはグローバルに展開したい

「パ酒ポート」の発行数8000部のうち、プレゼント応募総数は550通。コンプリートした完走者はなんと60名もいました。「パ酒ポート」のスタンプラリーをテーマにしたバスツアーも好評です。ツアーは地元の旅行会社である、北海道中央バスグループのCBツアーズ様に主催していただいています。より多くの地域企業に参画いただくことで、交流人口を増やし、地域経済の活性化につなげていきたいと考えています。

2回目となる2013年版は、参画企業にウイスキーの醸造所が加わってより広がりが生まれましたし、ほかのビール会社など多くのナショナルブランドにも協賛していただいています。2年目にしてプロジェクトが広く、厚くなっていることを心からうれしく思います。売れ行きも好調で、Facebookのみの告知で実施した即売会では、用意した250冊がわずか45分で売り切れるという盛況ぶりでした。ガソリンの割引で協賛していただいている宇佐美様では、発売後まもなく50冊を完売した店舗が続出したそうですから、2年目になって勢いは確実に増しています。2013年版は、各地のガーデンやイベント情報なども追加されており、内容がさらに濃くなったと好評です。

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「パ酒ポート」で地域の活性化に貢献したい

今後は、飲食店との連携を強化し、業界を超えて「パ酒ポート」の輪を広げていきたいと思っています。また、ありがたいことに、各方面から「パ酒ポート」についてのお問い合わせを多くいただいており、他の地方で同じような形態での実施に向けた動きも出ています。北海道発の「パ酒ポート」を日本各地、ひいてはグローバルに展開し、新たな交流機会を生み出し、地域の活性化に貢献していくことができれば、こんなにうれしいことはありません。

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