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経済政策の前に必要なもの――『ブリングリング』―宿輪純一のシネマ経済学(20)

2013年12月16日 15時38分 JST | 更新 2014年02月14日 19時12分 JST

『ブリングリング』(原題:The Bling Ring)2013年

無軌道な若者達が、実際に起こした被害総額3億円にもなる窃盗事件の映画化(最近、実話の映画化が多い)。被害にあったのは、パリス・ヒルトン、リンジー・ローハン、ミランダ・カー、オーランド・ブルームなどなどいわゆるセレブ。Bling Ringとは「ギラギラの指輪」のことであるが、窃盗チームの名前でもあった。発生したのは2008~9年で、彼らが逮捕されたときは大変に驚かれて、社会問題化した。

セレブの豪邸が立ち並ぶロサンゼルス郊外の高級住宅街カラバサスがその舞台。派手で華やかな生活に強い憧れを抱くニッキー(エマ・ワトソン)ら5人の少年少女たちは、パリス・ヒルトンを始めとしたセレブの豪邸をネットで調べ、留守宅への侵入し窃盗するという犯罪を繰り返していた。最初は、軽い気持ちでおこなったが、被害総額が3億円にもなっていく。しかも、逮捕されてからも罪の意識がないのである。そんな姿がストレートに描かれている。

監督はフランシス・フォード・コッポラの娘のソフィア・コッポラ。『ヴァージン・スーサイズ』(99年)、『ロスト・イン・トランスレーション』(03年)、『マリー・アントワネット』(06年)、『SOMEWHERE』 (10年)と3年に1本の割合で作り出している。監督になる前は、『ゴッドファーザーPARTⅢ』(90年)や『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(99年)では侍女役で出演していた。ちなみに、フランシス・フォード・コッポラ監督の親戚は映画人が多く、妹がタリア・シャイアで、甥っ子がニコラス・ケイジである。

また『ハリー・ポッター』シリーズのエマ・ワトソンを主演の一人にしたほか、本作品が初めてという若手俳優が出演している。映画業界関係者のご子息が多い。また、実際に被害に遭ったパリス・ヒルトンが自宅を撮影場所に提供しているところは驚き。ソフィア・コッポラらしい、リアルでスタイリッシュな映像も魅力的である。

この作品がいままでの若手犯罪映画と違うのは、この窃盗グループは貧しい家ではなく、裕福な家の生まれであり、罪の意識がないどころか、さらに開き直おるところが怖い。自分で努力してお金持ちというかセレブになろうとはしない。

最近、モラルというか、常識といわれる部分が欠落してきて、社会が乱れてきているように感じているのは筆者だけではないと思う。このような点が、本当は経済のベースとなるところである。戦争に向かってという形は良くないが、道徳的な教育はやはり必要だと思う。

この作品にもある「モラル」といった善悪の判断は必須であり、犯罪的なものは当然取り締まっていただきたい。ちなみに、忘年会のこの時期、酔って駅員さんを殴るのも犯罪である。なんでそんなことをするのか理解できない。電車関係では、特に、最近、割り込みをしたり、足を邪魔なぐらい足を出して座ったり、車中や駅におけるおじさんのモラルが悪化していると感じることが多い。一方、ダッシュして乗り込み、シルバーシートで、早々に寝てしまう学生さんなども疑問に思う。モラルの先には「礼節」があると考える。

その上で、経済に最も必要な気質は、「前向きさ」。つまり辛くても頑張る気持ちであると考える。少しでも良くしていこうという向上心である。そのような気持ちが経済のベースを支える。このような点を、経済理論を教える前に、初等教育から教えることが、経済をより強くすると筆者は信じる。

量的緩和といい、一時的な公共投資では、経済の"量"の拡大はできていても、"質"の向上はできない。しかも、国の借金はどんどん増えていく。痛みの「先送り」にほかならない。経済を強くするのは成長戦略(構造改革)であり、それはそもそも辛いものである。最後にそれをささえるのは、向上するために頑張る気持ちだと信じている。その気持ちこそが、最後は、自分や経済も支える尊いものであると信じている。政策議論ではなく、生き方が問題なのである。

宿輪ゼミ

経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の時の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたにも分かり易い講義は定評。まもなく8年目になり「日本経済新聞」や「アエラ」にも取り上げられました。「シネマ経済学」のコーナーも。

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