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宇宙船地球号――『ゼロ・グラビティ』―宿輪純一のシネマ経済学(22)

2013年12月29日 20時39分 JST | 更新 2014年02月28日 19時12分 JST

『ゼロ・グラビティ』(『Gravity』/2013年アメリカ)

原題は『Gravity』ですばり「重力」であったが、邦題を付けるときに「ゼロ」をつけた。ということで、宇宙ものである。

地球から600キロ離れた宇宙では、空気はもちろん、地球の重力もないので、物理で習った「慣性の法則」の世界になる。専門家としてミッションを遂行していたメディカル・エンジニア(臨床技師)のライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)とベテランの宇宙飛行士マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)。お約束であるが、スペースシャトルが大破するという致命的な事故が発生する。二人は一本のロープでつながれたまま漆黒の無重力(ゼロ・グラビティ)空間へと放り出されるが、これを切ってしまい。二人もバラバラになってしまう。地球に戻る交通手段であったスペースシャトルを失い、残された酸素も2時間分しかない絶望的な状況になってしまう(2時間とは大体、映画一本の時間であるのも意識しているような)。宇宙の世界は現在でも各国共同で活動しているが、本作でもなぜか中国の船で着水する。その後ももう少し話が続くが。

この作品の特徴はとにかく出演者がこのサンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーの殆ど二人しか登場しないのである。しかも、特にサンドラ・ブロックが沈黙の宇宙空間に一人でいる時間が長い。ある意味、宇宙飛行士になりたいとか、宇宙で仕事がしたい人にはその疑似体験ができる。宇宙ものであるので、ツッコミどころはもちろんあるが・・・。

監督はハリーポッターシリーズの第3作目『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』や『 トゥモロー・ワールド 』のメキシコ人のアルフォンソ・キュアロンである。サンドラ・ブロックはドイツ系で64年生まれであるから、筆者より一つ下の49歳になった。94年の『スピード』の印象は今でも強い。ジョージ・クルーニーは映画一家の出身で『ホワイト・クリスマス』のローズマリー・クルーニーは叔母である。彼は61年生まれなので、52歳であろうか。同じく94年から始まったテレビドラマ『ER』のダグラス・ロス先生の印象が(同様に)今でも強い。二人ともアカデミー賞俳優である。

少し前に「環境問題」の観点で「宇宙船地球号」という言葉が流行った。宇宙船や宇宙ステーションの中では密閉されているのである。そのなかで、人間は環境を悪化させる存在である。現在の日本でも核廃棄物をどこに処理するのかが結論が出ない。

いろいろ議論もあるが『不都合な真実』でも語られている二酸化炭素等が温暖化の原因とされている。これは実感としてじわじわと効いているような気がしており、夏がものすごく暑くなっているのではないか。筆者の小さいころ、気温が30度になったら大騒ぎだった。筆者は環境経済も専門の一つだったので、かつては政府系の排出権取引の研究会などにも参加してきたが、とにかく排出量を減らさなくてはならず、長期的に対応しなければならない問題である。ちなみに日本では現在、原子力発電が止まっているために、火力発電に頼らざるを得ず、減らすはずの日本の排出量を減らすことができない。

シンガポールでは、もともと水問題を抱えており、下水処理水を貯水池にいれて製造した「ニューウオーター(NEWater)」は飲料としている。筆者に見学に行ったことがあるが日本の高度な浄水技術によるものであった。当然、宇宙船の中でも様々な水(水分)を同じように再利用している。すでに「宇宙船地球号」なのである。

どれだけ先を見据えるかとか、致命的な問題とか、いろいろ優先順位的な考え方はあるものの、やはり「持続可能性(サスティナビリティ:sustainability)」が重要なひとつの軸とならなければならない。もちろん、現在や将来の"最適なバランス"を考える手立ての一つが経済学なのであるが。

今年もお世話になりました。来年も宜しくお願い申し上げます。

宿輪ゼミ
経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の時の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたにも分かり易い講義は定評。まもなく8年目になり「日本経済新聞」や「アエラ」にも取り上げられました。「シネマ経済学」のコーナーも。
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