欧米中心に強化される金融規制――『ウルフ・オブ・ウォールストリート』―宿輪純一のシネマ経済学(25)

なんと、実在した証券ブローカー:ジョーダン・ベルフォートの回想録(『ウォール街狂乱日記 - 「狼」と呼ばれた私のヤバすぎる人生』)の映画化。筆者も本作の舞台となった時期にウォール街には一時勤務した。『ウォール街』(87年)、『マネー・ゲーム』(2000年)などなど、この時期のウォール街を舞台とした、同様の証券系のテーマを描いた映画は多い。

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013年米国:『The Wolf of Wall Street』)

なんと、実在した証券ブローカー:ジョーダン・ベルフォートの回想録(『ウォール街狂乱日記 - 「狼」と呼ばれた私のヤバすぎる人生』)の映画化。筆者も本作の舞台となった時期にウォール街には一時勤務した。『ウォール街』(87年)、『マネー・ゲーム』(2000年)などなど、この時期のウォール街を舞台とした、同様の証券系のテーマを描いた映画は多い。

彼は筆者よりも一つ年上の62年生まれ。筆者が社会人となった同じ年の1987年に投資銀行に入行するも、同年11月にブラックマンデーが発生し会社は破綻。潜りの株屋で働いた後、証券会社を設立し、26歳で年収49億円(!)と億万長者になった。その後、株価操作などの証券詐欺と資金洗浄(マネーロンダリング)の容疑で逮捕される。コールガールも含めた豪遊など、金という金を使いまくる。巨大ヨットを簡単にプレゼントしたり、100ドル札も丸めてゴミ箱に捨てたりする。麻薬に手を出したり、暴力的なシーンも出てきたり、ある意味、不道徳的な映画である。その後、彼は22ヶ月の服役後、現在は自己啓発セミナー講師や経営コンサルタントとして活動し、被害者への返済を続けている。なんかこの辺も米国らしい。

監督と主演はともにイタリア系のマーティン・スコセッシとレオナルド・ディカプリオで『ギャング・オブ・ニューヨーク』『アビエイター』『ディパーテッド』『シャッター アイランド』などでコンビを組んできて、これで5本目!

スコセッシ監督はイタリア・シチリア系で、42年ニューヨーク生まれの71歳。76年の『タクシードライバー』が大ヒット。以降、やはりイタリア系のロバート・デ・ニーロとのコンビが続いた。2001年の『ギャング・オブ・ニューヨーク』以降はディカプリオとコンビが続く。ニューヨークを舞台とした映画も多い。アカデミー賞は、ある程度、年齢が必要となるといわれているが、ノミネートが続いたが『ディパーテッド』で悲願の監督賞受賞。

ディカプリオは74年ロサンゼルス生まれの39歳。『ギルバート・グレイプ』でブレイク。1997年『タイタニック』は空前の大ヒットで、『アバター』に抜かれるまで史上最高の映画興行収入を記録。出演作を挙げると、他にも『ロミオ+ジュリエット』『ザ・ビーチ』『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』『アビエイター』『ブラッド・ダイヤモンド』『シャッター アイランド』『インセプション』『ジャンゴ 繋がれざる者』『華麗なるギャツビー』とキラ星のように大作に出演するハリウッドのトップスターの一人。本作で今年の「ゴールデングローブ賞」を受賞。日本でもレオ様として人気。実際に会っても礼儀正しく格好良かった。ちなみに、ディ カプリオは"カプリ島の(出身)"の意味。レオナルドの名前は、母親が妊娠中で、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵を見ている時にお腹をけったからとか。

金融系の映画、特に証券系の映画は先に上げた『ウォール街』をはじめとして、犯罪をして逮捕されるような展開が多い。今回も逮捕される。詳しいことはいえないが、本作でも証券詐欺と資金洗浄などで逮捕される。

現在、欧米を中心として金融規制の強化が続いている。本人確認の強化もその一環である。欧米では莫大な金額の制裁金も金融機関に課せされている。テロ防止や経済制裁などのマネーロンダリング対策に大変なコストが必要となっている。確かに犯罪に対しては厳格に対応すべきであるが、そのレベルが難しい。それは金融危機防止と相まって、特に欧米の金融機関の成長に対しては負担となっており、社会的なコストとして国全体で一体化して行うべきものかもしれない。また、厳格すぎると犯罪資金が沈んで見えなくなることも懸念される。今後、新興国との取引が広がるに従って、そういった問題も継続することになろうか。

ちなみに、スコセッシ監督の作品は長いもの多い。『ギャング・オブ・ニューヨーク』も約160分、『ディパーテッド』も約150分、『アビエイター』も約170分であるが、本作は約180分と、なんと3時間と長いが、それには十分耐えうる内容と思う。

「宿輪ゼミ」

経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたにも分かり易い講義は定評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。22日で記念すべき150回を迎え、2014年4月で9年目になります。

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