音楽ノリノリのリズミカル・カーチェイス『ベイビー・ドライバー』―宿輪純一のシネマ経済学®(126)

本作はアメリカのアトランタで撮影され、この主人公が乗るのはなんと「スバル」!

(BABY DRIVER /2017年)

吹っ飛んだ名作の『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』や『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』などの、イギリスが誇る鬼才の監督エドガー・ライトがハリウッド進出、第1段のクライム・アクション。

音楽に乗って天才的なドライビングテクニックを発揮する、主人公の犯罪組織の逃がし屋は、『キャリー』で映画役者デビューしたアンセル・エルゴート(23歳)。『L.A.コンフィデンシャル』・『アメリカン・ビューティー』などのケヴィン・スペイシー、『コラテラル』・『Ray/レイ』・『マイアミ・バイス』などのジェイミー・フォックスなど超豪華俳優陣が脇を固める。

"音楽が原動力"となり、まさにカーチェイス版『ラ・ラ・ランド』。常に革新的なライト監督の今回のチャレンジは、すべてのシーンと音楽がぴったり合わせたこと。雨、稲妻、ワイパー、歩行者、犬、、、すべてのみごとにリズムに乗っていくのは脅威。曲も、様々なジャンル、幅広い年代から30曲以上が選ばれた。

幼い時の事故の後遺症によって耳鳴りに悩まされながら、完璧な曲をセットしたiPodで音楽を聴くことによって、驚異のドライビングテクニックを発揮するベイビー(アンセル・エルゴート)。それを買われて犯罪組織の逃がし屋として活躍する。ある女性に落ちる。それを機に裏社会の仕事から手を引こうと考えるが、ベイビーを手放したくない組織のボス(ケヴィン・スペイシー)は、デボラを脅しの材料にして強盗に協力するように迫る、、というある意味、よくあるお約束の展開。

カーアクションの映画は今までも、『ブリット』・『ザ・ドライバー』・『TAXi』・『トランスポーター』・『ワイルドスピード』結構あった。本作はアメリカのアトランタで撮影され、この主人公が乗るのはなんと「スバル」!

最近、産業で考えて大きな動きの中にあるのが自動車産業である。環境問題対応の流れはことのほか早く、ガソリン車から、ハイブリット車、そして電気自動車へと大きく向かっている。さらに、AIによる自動運転技術が進歩している。自動車が自分で思考し運転する『ナイトライダー』の世界がまもなく来る。

さらに、欧州ではディーゼル車の大型不正も発覚し、産業転換の一因となろうとしている。米国では新車販売が8年ぶりに前年を割っている。日本では外車メーカーの撤退が相次ぎ、トヨタとマツダの大型提携が報道された。自動車産業にとって、大きな転換点を迎えつつあるのである。

クライム・アクションながらダークではなく、爽快。アニメやスーパーヒーローにない、気楽に没入できる映画として、夏休みの最後の1本でしょうか。

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博士(経済学)・帝京大学経済学部経済学科教授・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生達がもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かりやすいと、経済学博士の講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。いよいよ4月で11周年、開催回数は230回、そして会員は1.2万人を"超えて"、日本一の私塾とも言われています。原則、毎月第1と第3の水曜日に開催。今後の予定は、9月7日(木)変則、20日(水)に開催。Facebook経由の活動が中心となっており、以下からご参加下さい。

尚、2017年4月より文化放送「The News Masters TOKYO」に、火曜日朝7時から経済・金融担当でレギュラー出演中。

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