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『チャッピー』―機械と人間の新しい関係/宿輪純一のシネマ経済学(76)

2015年05月21日 15時33分 JST | 更新 2016年05月20日 18時12分 JST
Astrid Stawiarz via Getty Images
NEW YORK, NY - FEBRUARY 10: (L-R) Actors Hugh Jackman and Sharlto Copley attend the 'Chappie' Cast Photo Call at Crosby Street Hotel on February 10, 2015 in New York City. (Photo by Astrid Stawiarz/Getty Images)

(CHAPPIE:2015)<5月23日公開>

チャッピー(CHAPPIE)という名前に親しみを持った方は多いのではないか、筆者も動物が好きであるが、犬の名前にチャッピーが多かった気がする。それも西洋系の犬であったが。筆者はロンドンに随分長く居たが、もともとCHAPPIEはイギリス英語のCHAPの愛称である。CHAPとは親しい男の友人を指す言葉で、無理に訳すと「あんちゃん」ぐらいの印象か。いずれにしてもとても仲良しといった感じがある。(洋服のブランドラルフローレンにもCHAPSというラインがあった) 確かに、この作品は南アフリカ映画であり、英語もイギリスに関係の深いことからイギリス系の英語であろう。

最近、南アフリカの映画を見ることが多くなってきた。『インビクタス/負けざる者たち』(2009年)や『マンデラ 自由への長い道』(2013年)をはじめとしたネルソン・マンデラ系の映画もあるが、最近では、この南アフリカ出身(現在はカナダ在住)の『第9地区』(2009年)の鬼才ニール・ブロムカンプの作品が注目されている。本作品も彼が手掛けたSFアクションである。

南アフリカを舞台とした『ケープタウン』(2013年)でも描かれていたが、南アフリカはとにかく治安は悪い。その治安の悪さが本作品のベースとなっている。舞台は2016年(来年)の南アフリカ。自身で感じ、考え、成長することができるという人工知能搭載ロボットのチャッピーが開発される。しかし、危険なヨハネスブルクであり、ストリートギャングにチャッピーと開発者は一緒に誘拐される。人工知能が起動したばかりで、純粋無垢なチャッピーは、ストリートギャングのメンバーたちと微妙な絆を育みながら、暴力も含め生き抜くためのスキルを学んでいく。圧倒的なスピードで知識を吸収して身に付けていくが、バッテリー残量が5日分。そして、壮絶な暴力的な凄まじい戦いに巻き込まれていく。

『第9地区』にも出演したブロムカンプ作品の常連シャールト・コプリーであるが、今回はモーション・キャプチャーを使って"チャッピー"の動きを演じている。『X-MEN』のヒュー・ジャックマン、『エイリアン』のシガーニー・ウィーヴァーなどの実力者が脇を固める。

この機械と人間との関係は、映画にも良く登場する永遠のテーマである。このように協力関係であるものもあるが、やはり機械(ロボット)が反乱するのが"お約束"である。古くは『2001年宇宙の旅』(1968年)、『ウエストワールド』(1973年)など、最近でも『ターミネーター』(1984年)シリーズや『マトリックス』(1999年)シリーズなどはそれに当たる。

最近、不況の欧州の中で、一人気を吐いているドイツであるが、特徴は先進国でありながら製造業を、海外に誘導することなんてことは決してしなかった。国内で製造を続けており、欧州の主力工場となっている。そのため、国内の景気もそもそもの経済の強さも欧州の中ではダントツである。

さて、そのドイツが現在「インダストリー4.0」として第4次産業革命を行っている。その特徴は「IoT(Internet of Things)」で、機会同士がつながって自動的にコントロールしていくもの。そもそものコンセプトは、トヨタの関係会社との関係がネットワーク化したようなものである。さまざまな経営的・事務的なムダを自動的に省いていくのである。それも会社を超えて、産業・地域で結ばれていくのである。

このように自動的な制御で動いていくものに、いままでの映画の様に、人は怖さを感じるのではないか。そして、人が必要ではなくなっていく。今後は、やはり人は新しいものを作り出すというクリエイティブなことを行うことに向かっていくべきで、それは機械にはできないことである。それはそもそも官僚的・硬直的な組織では無理であるが。

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