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『オール・ユー・ニード・イズ・キル』―経済や人生にリセットはない 宿輪純一のシネマ経済学(49)

2014年07月08日 17時09分 JST | 更新 2014年09月06日 18時12分 JST

(2014年アメリカ/Edge of Tomorrow)

ライトノベル『All You Need Is Kill』がベースとなって映画化されたもの。なんと原作は日本人。本作のタイトルは『Edge of Tomorrow』だが、邦題はライトノベルと同じ『オール・ユー・ニード・イズ・キル』である。ちなみに、英文法を徹底的に教え込まれた世代である筆者には、この邦題というか、もともとの題名の文法が気になってならない。

本作は、トム・クルーズ・アクション作品のイメージが強い。彼も筆者と同世代で52歳、理由もあるが、この歳であのアクションには頭が下がる。ふっとばされたり、飛び降りたりしたくない。同世代のヒーローとしてご支援したい。助演はエミリー・ブラント。『サンシャイン・クリーニング』でひそかにブレイク。ふつうっぽいところが人気のベースか。監督は、『ボーン・アイデンティティー』『Mr.&Mrs. スミス』などのダグ・リーマン。

いわゆる『恋はデジャ・ブ』(1993年)のような「ループもの」で、何回も生まれ変わる。SF映画で、近未来。地球は謎の怪獣型の侵略者「ギタイ」の激しい攻撃により、人類はその存亡がかかっていた。戦闘訓練を受けないまま対侵略者の任務に就いたウィリアム・ケイジ少佐(トム・クルーズ)は、戦闘によってあっさり死亡する。しかし、タイムループに入っていき、何回も何回も戦闘と死を繰り返す。しかし埒が明かない。そんなとき、すでにスーパーヒロインであった軍人リタ・ヴラタスキ(エミリー・ブラント)と偶然出会い、彼女も同じ能力を持つことを知り、戦闘を繰り返し、反撃の糸口を探るが・・・・。

この「ループもの」とは、要はリセットできるということである。ゼロ新規で再スタートできる。テレビゲームに熱中している方にもそのような傾向を持つ人がいるが、失敗すると最初からやり直せばいいという感覚がついてくるようである。これに馴れると実は大変怖い。いい加減に対応することになるからである。さらには残念なことに、このような、安易にリセットすればいいとういう考えが、残虐な犯罪にもつながったこともあったようである。

そもそも、経済や人生はリセットできない。経済危機が起こってしまってももとには戻せない。そして、一度起こると用心する。筆者はバブル崩壊などの経済危機は、行動経済学的にも「二日酔い」のようなものだと考えている。もっと行ける、もっと行けると考えてしまう。たとえば、ブラックマンデー(1987年)、アジア通貨危機(1997年)、 リーマンショック(2008年)などの世界的な経済危機は約10年に一回の割合で発生してきた。これは、人が10年ぐらいで忘れてしまうからではないか。

現在、最近の先進国が足をそろえた量的緩和によって、意図せざる政策協定状態となって、相互の為替レートも動かなくなった。また、量的緩和が継続しているだけに株価をはじめ下値リスクも感じられない。米国株は5年上昇して最高値を更新している。日々発表される経済指標にも反応が鈍くなっている。

しかも、新興国や格付けの低い金融商品へマネーが流れ込んでいる。つまり、一時的にリスクに対する感覚がマヒし始めており、市場全体のリスクが高まっているともいえる。量的緩和は本来、マネーが実体経済に流れ込まず、金融市場で回っているということである。この傾向はバブルの前兆でなければよいのだか。

いずれにせよ、経済でも人生でも、一度トラブルが発生すると、その前に本作やテレビゲームのようにリセットはできないのである。過去は引きずらなければならない。でも、リセットできないから、ある意味、面白いのではないかともたまに感じる。

「宿輪ゼミ」
経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かり易い講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。この2014年4月2日の第155回のゼミで"9年目"に突入しました。
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