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『天国は、ほんとうにある』― 豊かで貧しい経済 /宿輪純一のシネマ経済学(66)

2014年12月09日 16時07分 JST | 更新 2015年02月07日 19時12分 JST

(HEAVEN IS FOR REAL /2014)<12月13日公開>

 

アメリカのネブラスカ州の田舎町の話。アメリカの映画では田舎は良くその舞台となる。中西部のネブラスカ州は、本当に田舎で農業が主産業である。筆者も長くアメリカに住んだ(駐在した)が、ネブラスカ州に行ったことがない。映画ではネブラスカ州は『マルコムX』に彼の生誕地として出てきた。また、投資に興味がある方は、著名な投資家・経営者ウォーレン・バフェットが住み、彼の会社である世界最大の投資持株会社であるバークシャー ・ハサウェイがあるのも、ネブラスカ州(オマハ)である。

さて、その田舎町に暮らすアメリカ的な家族が本当に経験した奇跡の実話(臨死体験)を綴ったベストセラーを映画化したもの。

牧師を務める傍ら小さな修理工場を経営しているトッド(グレッグ・キニア)は、3人の子どもに恵まれアメリカ的に幸せな人生を送っていた。ところが、ある日、3歳の長男コルトン(コナー・コラム)が穿孔(穴が開く)虫垂炎で生きるか瀕死の状態に。しかし、奇跡的に回復する。やがてコルトンは、両親に天国に行ってきたといい始め、彼が生まれる前に死んだ人さらには、さらには生まれる前に死んだ彼の前の子供のことも話す。当然だが、体験が周囲に巻き起こす波紋は大きく軋轢も生まれるし、彼と彼の家族にもストレスが掛る。しかし、やがて彼が語る天国の話に人々が"癒やされていく"。この手の映画って、宗教色が強くなり、説教臭くなることが多いが、そうなっていないところもすごい。

監督は『仮面の男』など数作の監督で、『ブレイブハート』の脚本家でもあったランドール・ウォレス。出演者は『恋愛小説家』などのグレッグ・キニア、『ロシアン・ドールズ』などのケリー・ライリーが両親で、子役コナー・コラムも素晴らしい。

筆者は経済学者で宗教家ではないが、ここに出てくる"癒し"や心の平安は非常に大事ではないかと考えている。筆者が考えるに、少し前の経済学は、モノが無い時代に出来上がってきたので、モノが有ること、出回っていくことが"幸せ(良いこと)"と前提として置き、易しくいうと、そのモノが売買されている量をGDP(国内総生産)と定義した。そして売買が継続している状況を「景気」が良いとして、「物価」とセットで最大の経済目標とした。そして、日本もそうであるが、一人当たりGDPが伸びることが、国民の幸せと仮定して推進した。

しかし、一人当たりGDPが伸びたとしても、大量に頭痛薬を消費するアメリカや、自殺者が約3万人もでる日本は、国民が本当に幸せなのだろうか。という疑問に当たることになる。物欲的なものは幸せになるのかとも考える。物欲に限りはない。しかも、目標というか、欲とのギャップに苦しむのではないか。まさに豊かで貧しい経済なっているのではないか。欲は努力の原動力ともなるが、出来ない欲(ギャップ)はストレスとなって苦しめる。その辺のところは「主観的幸福」として最近、研究されているが。

また、アジアのブータンがいわゆる「幸せ指数(GNH)」を政策の目標としていること、またその数字が極めて高いことはよく知られているが、これはすこし違う。ブータンは宗教国(チベット仏教)なので、それに沿った政策をおこなうと、幸せ度合いは上がるのである。したがって、日本に応用しにくいであろう。

ちなみに、チベット仏教の最高指導者である現在のダライラマ14世は、失礼はお許し願うが、着物も日本的だし、東京の下町の横丁にいそうな感じがして、筆者は大変親しみをもっている。

 

「宿輪ゼミ」

経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生達がもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かり易い講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。この2014年4月で"9年目"に突入し、来年4月に10年目に。開催は"170回"を超えております。

Facebook経由の活動が中心となっており、以下からご参加下さい。会員は6600人を超えております。https://www.facebook.com/groups/shukuwaseminar/

次回は第172回の宿輪ゼミは12月17日(水)開催です。