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『LUCY/ルーシー』― 神経経済学で"脳"に迫れ /宿輪純一のシネマ経済学(56)

2014年08月28日 22時35分 JST | 更新 2014年10月26日 18時12分 JST
AFP via Getty Images
French director Luc Besson (R) speaks as his wife French producer Virginie Silla (L) listens during a press conference in Taipei on November 1, 2013. French director Luc Besson on November 1 rejected reports that his new movie 'Lucy' was about a drug mule and that he was ready to end shooting in Taipei after being harassed by paparazzi. AFP PHOTO / Mandy CHENG (Photo credit should read Mandy Cheng/AFP/Getty Images)

(2014年/LUCY)

 "激しく、素敵な女性の映画"が得意のリュック・ベッソン監督(フランス人)の新作。彼の歴代ヒットNo1の兆しがある。その"激しく、素敵な女性の映画"では、『ニキータ』や『アンジェラ』もそうであるし、『ジャンヌダルク』と『フィフス・エレメント』でミラ・ジョボビッチ(ウクライナ出身)(その後、彼女とは一時的意結婚)を登用し、また『レオン』で幼いナタリー・ポートマン(イスラエル出身)を発掘した。本作品では、セクシー系のスカーレット・ヨハンソンと組んだ。ちなみに、彼女の名前のスカーレットは『風と共に去りぬ』(1939年)のスカーレット・オハラから。

主人公ルーシー(スカーレット・ヨハンソン)は、アジア・マフィアの危険な取引に巻き込まれ、なんと特殊な"ドラッグ"を体に埋め込まれて運び屋とされてしまう。しかし、アクシデントで、ドラッグが体内で漏れ、ルーシーの体に異変が起こる。特に"脳"の機能が覚醒していく。"脳"は通常10パーセントしか機能していないそうであるが、100パーセント機能していくのである。

脳が覚醒していく中、超人的な能力を発揮していくが、同時に人間性が喪失し、自らを制御できなっていき、まさに殺人破壊兵器になっていく・・・。

本作では台北のはずだか、韓国マフィアが暗躍している。そのボスに『シュリ』、『ブラザーフッド』『オールド・ボーイ』のチェ・ミンシク。また、彼女を見守る脳科学者には、アカデミー賞俳優のモーガン・フリーマンと、脇を固めている。

筆者が大学で勉強していたときの経済学では、前提として、人間をいつも合理的な判断を下せる「経済人」とした。しかし、人間は完全に合理的な人はいない。経済学に、実践的により心理的な要素を加えたのが『行動経済学』である。もともと、近代経済学の父アダム・スミスも合理性と心理面の関係について研究していたが。

たとえば『行動経済学』では"時間"が重要な概念のひとつである。"今"と"将来"の時間選好の問題である。今の美味しい食事と、将来の健康とどっちをとりますか、という話に近い。ほとんどの人間は、目の前の"今"にバイアスがかかっている。

さらに"脳"の機能まで踏み込んだのが『神経経済学』である。これは『行動経済学』に「脳科学」も組み込んでいく。たとえば、脳がどのように働いているか見ることができる「fMRI」という装置で、それぞれ脳自体の特性がわかるようになった。つまり、脳によって、たとえば時間選好の度合いが違うようである。このような分析は、借金や肥満の問題など、様々な社会現象に応用がきく。

以前は、単に「だめなやつ」といわれていたが、その人間自身の問題点がわかれば、その解決に向かっていくことが可能になる。経済学は社会全般の活動をカバーする有効な学問であると筆者は信じる。

「宿輪ゼミ」

経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かり易い講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。この2014年4月2日の第155回のゼミで"9年目"に突入しました。

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