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『ノア 約束の舟』―"トルコ"は世界経済の要所 宿輪純一のシネマ経済学(46)

2014年06月16日 14時34分 JST | 更新 2014年08月15日 18時12分 JST

 本作も歴史もの。誰でも知っている、キリスト教旧約聖書の「創世記」に登場する「ノアの箱舟(方舟)」の物語を映画化。("方"は四角の意味)

 原因は諸説あるが、超大洪水による世界滅亡を知らされた(預言を受けた)男ノア(ラッセル・クロウ)とその家族が、重大な使命を実行しようと巨大な箱舟を建造することになる。さらに、生き物の生命を絶やさぬように、この世の全ての種類の動物をつがいで次々と箱舟に乗せていく。だが、だんだんに異常に気が付いてきた、生き延びようとする悪人と一般人がノア一家と箱舟を襲ってくる。遠目トランスフォーマーのようでもあるウォッチャーズ(堕天使)が味方となり、蹴散らしていくが・・・。この「ノアの箱舟」に従えば、結果的に人間は皆ノアの子孫ということになる。壮大な物語はもちろん、CGによる大洪水の描写には、皆、興味があるのではないか。

ノアにふんするラッセル・クロウを筆頭に、ジェニファー・コネリー、アンソニー・ホプキンスなどそうそうたるメンバーが出演する。

 聖書のエリアは中東を中心としているが、このノアの箱舟が辿りすいたのが、"トルコ"のアララット山とされている。このトルコは現在ではイスラム教の国であるが、いま世界経済で重要になっている。

一つはその成長性である。トルコは新興国でも"中進国"であり、人口は約8000万人で、首都アンカラは約4百万人の人口であるが、イスタンブールは約1千4百万人で、バルカンエリアにおいて最大の都市となっている。日本と関連の深い海底トンネルの開通は記憶に新しいところ。国民性もまじめで勤勉とされており、日本から進出しているトヨタの工場の品質も良いといわれている。個人的に驚いたのは、ベルギーの高級チョコレートメーカー・ゴディバがトルコのお菓子メーカーに買収されたことである。それほど勢いもあるのである。発展している国にありがちな経常赤字であるが、その額が大きい新興国フラジャイル5(脆弱な5カ国)となっていた。最近では、政治リスクも低下し経済成長率も戻り、株価も上昇している。トルコ政府は共和国建国100年に当たる2023年までに世界第10位の経済規模にすると目標を上げている。

 もう一つはその位置である。古代より「東西文明の十字路」と要地とされていた。地政学的な意義も大きい。トルコ人はトルコを越えて広がっている。カザフスタン、アゼルバイジャン、ウズベキスタンなどの国々を合計すると約2.5億人ともいわれている。これがトルコ人市場となる。さらに欧州・北アフリカ・中東を含めると約15億の市場となる。この地理的な重要性は大きい。

 筆者もイスタンブールは何回か国際会議で訪問したが、世界遺産でもあり素敵な街であった。映画でも良く使われ、古くは『007/ロシアより愛をこめて』(1963年)、『オリエント急行殺人事件』(1974年)、最近でも街のベースとした『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999年)もある。

  トルコ料理もフランス料理と中国料理と一緒に「世界3大料理」といわれている。広大な領土から集め高度化させた特徴があるとのことである。欧州にコーヒーを持ち込んだものトルコ料理経由である。また、イスタンブールの町では、伸びるトルコアイスを売っている。ゴディバの新作も伸びるものだと楽しいが。

「宿輪ゼミ」
経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かり易い講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。この2014年4月2日の第155回のゼミで"9年目"に突入しました。

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