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『ポンペイ』―金融業務の基本を作ったイタリアを再評価すべき時 宿輪純一のシネマ経済学(45)

2014年06月09日 17時45分 JST | 更新 2014年08月08日 18時12分 JST

 誰もが学校の授業で習ったりして知っている、火山の噴火によって"一瞬"で埋没したイタリアの町「ポンペイ」をテーマにした歴史大作。歴史に興味がある方は必見であろう。また、いわゆるディザスター映画で、『グラディエーター』のような古代奴隷戦闘も多い。しかも、恋愛映画でもある。

 西暦79年の、ナポリに程近い古代都市ポンペイ。連れてこられたケルト人の奴隷戦士マイロは、富裕層の商人の令嬢カッシアと恋仲になってしまう。彼女にはすでに身分の高いかつ婚約者がいた。またその婚約者は彼の復讐の対象でもあった。このような映画に"お約束"の身分違いの恋に悩んだ彼は、自由を得るために街を去ろうとする。すると"まさにちょうどその時"ヴェスヴィオ火山が"劇的に"噴火を始め、マイロは愛する女性を救うために街に舞い戻ることになる・・・・・。後半の一瞬で全てを奪い尽くす火山の自然災害の描写は目を見張る。

 そのイタリアであるが、ローマをはじめ世界の歴史を作ってきた。個人的な見解でもあるが、実は金融業務の基本もイタリアで作られてきたのである。

 もともと銀行の英語Bankはイタリア語のBanco(机)から来ている。緑色の布を引いた机で取引を行っていたのがその語源といわれている。12世紀ぐらいのイタリアはヴェネツィア、ジェノヴァ、フィレンツェを中心に貿易などの金融取引が盛んになってきた。そのころ貿易の仕組み、いわゆる信用状(L/C)を中心とする貿易決済の仕組みの基礎ができ上がっていった。海外との取引も多いことから、外国通貨との両替は必要不可欠であった。

 さらに、金融制度を発達させたのは「十字軍」である。エルサレムを目指し、多数の軍勢が送り込まれた。当然、ロジスティックスも進歩するし、なによりも、遠距離の送金(為替)が発達し、現在の銀行間の約束(コルレス契約)の基本もここでできたといわれている。

 金融の世界で、そのような兆候は残っている。欧州中央銀行や日本銀行などが導入している「限界貸出金利(補完貸付制度)」は「ロンバード型貸出」と言われているが、この「ロンバード」はイタリアのロンバルディア(Lombarda)地方から来ている。また「リスク」という言葉も、そもそもはイタリア語のRisicare (勇気をもって試みる)から来ている。(日本ではやや危険度を高くとらえてHazardの様な意味にとられて、個人的には残念であるが)

 イタリアと日本は、地理的な環境が似ている。海と山の幸に恵まれているせいもあり、食事もおいしい。また日本人でイタリア料理を嫌いな人に会ったことがない。

またイタリア人は、「マンジャーレ、カンターレ、アモーレ」(食べて、歌って、恋をする)ということで、仕事に生きるというよりは、人生を謳歌している印象が強く、日本人にしてみると、羨ましい感じがするのではないか。イタリア人の友人も楽しく愉快な方が多い。しかし、最近、経済を見ていると結構優れているのである。

 政府総債務残高(対GDP比/2013年)を見てみると、日本はダントツの1位で243%、2位がギリシャで174%、そしてイタリアも133%と日本よりもかなり財政状態が良い。また、豊かさを示すといわれる一人当たりGDPも日本は24位で3万8千ドル、イタリアは27位で3万5千ドルと対して変わらない。

 イタリア人の生き方や経済を、もう再評価しても良いかもしれない。

「宿輪ゼミ」

経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かり易い講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。この2014年4月2日の第155回のゼミで"9年目"に突入しました。

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