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『新宿スワン』―日本経済を活性化するかもしれないスカウト/宿輪純一のシネマ経済学(77)

2015年05月29日 01時51分 JST | 更新 2016年05月24日 18時12分 JST

(2015)<5月30日公開>

最近、コミックの映画化が続いている。本作も「ヤングマガジン」で連載が8年続いて、全38巻の超人気コミック「新宿スワン」(原作:和久井健)の映画化。最近、話題作を作り続けている園子温(その しおん)監督の最新作であり、俳優も、綾野剛、山田孝之、沢尻エリカ、山田優、伊勢谷友介など豪華な面々となっている。まさに日本映画界の旬な布陣である。

アジア最大の"繁華街"ではなく、"歓楽街"である"新宿・歌舞伎町"が舞台。お披露目も、コマ劇場跡のTOHOシネマズ新宿(ゴジラの頭が付いてる映画館)で行われた。

女性たちに水商売などを斡旋する「スカウト」たちの熾烈な抗争と、成り上がろうとする熱き男たちのロマンを描く。もちろん荒っぽい暴力シーンもふんだんにある。主人公が「白鳥」だから、題名もスワンということ。

この手の裏社会の話によくあるが、一文なしだが野心だけは人一倍ある白鳥龍彦(綾野剛)が主人公で、新宿・歌舞伎町に乗り込んで一旗揚げようと決意する。パチンコで負けて、ひょんなことから、彼はスカウトマンとして数々の伝説を持つ真虎(伊勢谷友介)に誘われてスカウト会社バーストの社員になる。迷惑防止条例が施行される中、龍彦は新宿・歌舞伎町を歩く女性たちに声を掛けては、水商売・風俗・AVの仕事を斡旋し、のし上がっていく。当然、裏社会の犯罪や暴力と絡み合いながら、綺麗な気持ちは持ち続ける。

このスカウトという仕事は、経済にとって大変大事な仕事である。この龍彦のように水商売の人材を斡旋する専門もいるが、芸能・スポーツはもちろん、今や企業間の人材あっせんは企業の成長にとって非常に大事である。成長期の日本では、まさに終身雇用で定年まで一社に勤務することが一般的だった。このころは人材が不足していて、人材の囲い込みが主たる目的として、転職ができにくい制度となっていた。年金や退職金の制度もそうである。途中で退職するとやめると、かなり不利な条件となる。筆者も一回転職したので、身をもって知っている。

しかし、最近は経済が成熟期となってきて、企業も順調に成長ができるわけではなくなってきた。その時に、優秀な人材がいたとても、企業間の転職ができにくくなる。このような転職が出来にくいことが、日本経済全体ではマイナスの要素となる。

長期的経済成長において、人口はもっとも重要な要素の一つである。所謂、少子高齢化の問題ともいわれている。もちろん、人口を増やすという点において、出生率を上げるということは大事であるが、さらに、経済成長にとって大事なのは、生産などの経済活動を行う労働力人口を増やすである。労働力人口の議論では、即、移民の話になりがちであるが、筆者は、人材の移動の円滑化により、経済全体で適材適所の配置となることが大事と考える。能力のある方を生かさないで、社内に無意味に囲い込むのを「人材の墓場」ともいわれている。このような問題に対応するには、当然、制度や組織が変わらなければならないが、そこで活躍するのがスカウトである。彼らの働きによって、日本経済が活性化する可能性もあるのである。

基本的なスカウトの動きは新宿だろうが、丸の内であろうが変わらない。それは、人のことを人材ともいうが、人もモノであり、商社機能なのである。筆者も、最近、銀行マンから職業を変えたところである。

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