ソニーを救う、すべてが新しい『スパイダーマン ホームカミング』―宿輪純一のシネマ経済学®(124)

「スパイダーマン ホームカミング」は先に公開された米国で大ヒットした。ソニー本体の株価も上げたほどである。

(SPIDER-MAN: HOMECOMING /2017年)

最近のスパイダーマン映画の3シリーズ目。サム・ライミ監督とトビー・マグワイア主演の「スパイダーマン」(2002~07)、マーク・ウェブ監督とアンドリュー・ガーフィールド主演の 「アメイジング・スパイダーマン」(12~14)に続いた新シリーズの1作目。当然、続編も予定されている。

本作は先に公開された米国で大ヒットした。ソニー本体の株価も上げたほどである。

主人公スパイダーマン:ピーター・パーカー役には、あまり有名ではないトム・ホランドを抜てきし21歳ながら15歳の役を熱演。本作から「アベンジャーズ」シリーズをはじめとした、同じマーベルコミック原作の作品同士で世界観を共有している「マーベル・シネマティック・ユニバース」に参戦した。

スパイダーマンこと15歳の高校生ピーター・パーカーは、インターンでトニー・スターク(アイアンマン:ロバート・ダウニー・Jr)からもらった特製スパイダーマン・スーツを着用し、放課後の部活のノリで、トニーに認められアベンジャーズに入るため、街を救う活動に日々注力していた。

そこに、トニー・スタークに恨みを抱く謎の敵バルチャーとその武器を使う悪人が続々登場する。ピーターは評価されるため、トニーの忠告を無視してひとりで戦いに挑むのだが、当然、絶体絶命な危機になる。ちなみに、スパイダーマンは、生身の人間であるが、生きているはずがないほど大変な目に何回も何回もあう・・・・。

「マーベル」のスターを集めた「アベンジャーズ」にスパイダーマンも加わった。アベンジャーズとしての新作はすでに2018年に『2018 アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』が予定されている。米国映画界では、「マーベルコミック」とスーパーマン・バットマン・ワンダーウーマンの「DCコミック」の2大勢力が確立されてきた。(筆者もアメリカンコミックスが好きであるが、貧しい方々がターゲットなのか、なかなか辛く暗い物語が多い)

悪役のバルチャー(ハゲタカ)を演じるのは、アカデミー作品賞受賞の「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のマイケル・キートン。監督は、ミュージックビデオ出身で「クラウン」「COP CAR コップ・カー」で注目された新鋭ジョン・ワッツ。以前には2作しか作っておらず、有名ではない。ミュージックビデオ出身のためか、特に前半の映画の作りが独特である。

最近、3Dや4D等の上映も増えてきたが、映画、特に米国の映画が変わってきたと考えている。映画はケーブルテレビやネット配信によって家で見ることができる。そのため、映画に出かけるためには、単に映画を見るだけではなく、遊園地(アミューズメントパーク)としての役目を高めているようである。マーケティング戦略が変わってきたのである。

出演は、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』などのマイケル・キートンらが共演している。マイケル・キートンは、今回はメカのバードマン(バルチャー)であるが、以前はDCコミックの方で「バットマン」をやっていたから、移籍ということか。また、彼は"鳥"がテーマなのか。確かに顔も鳥っぽいが(笑)

今回の『スパイダーマン ホームカミング』も「マーベル・シネマティック・ユニバース」に入ったせいか、世界を意識している映画の作りとなっている。まず、出演者がワールドワイドで、西洋系はもちろん、インド系、黒人系、日本系、ヒスパニック系など世界での展開を意識している。しかも、主観的な問題かもしれないが、英語が格段に分かり易く(簡単に)なっている。世界戦略であり、これもマーケティングを変えてきたのであろう。

さらにいうと『スパイダーマン』シリーズでは米国の街を徹底的に破壊する。このインフラを構築することはまさに景気対策となる。それも、短期と長期の2つの時点で考える必要性がある。まず、短期であるが、その時点で、お金が建設業界等に回り景気が回復する。

長期的には、その後、そのインフラを使うことによって景気が回復し税収が増える。インフラ投資(公共投資)は日本では借金ですることが多い。税収が計画通り増えればよいのだが増えない。日本ではインフラがほぼ出来ていて、借金ばかり増加している。オリンピックがまさに典型で、借金が増え、施設もその後、使われないと予想されている。もうこういうお金の使い方をやめないといけない。いまや、巨額な世界一の財政赤字が、日本の景気回復に悪影響を与えている。

本作は特にネタバレは厳禁と念押しされているが、エンドロールが終わるまで絶対に立たないでください。

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博士(経済学)・帝京大学経済学部経済学科教授・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生達がもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かりやすいと、経済学博士の講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。いよいよ4月で11周年、開催回数は230回、そして会員は1.2万人を"超えて"、日本一の私塾とも言われています。原則、毎月第1と第3の水曜日に開催。今後の予定は8月23日(水)に開催。Facebook経由の活動が中心となっており、以下からご参加下さい。

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