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『アメイジング・スパイダーマン2』(その2)―イノベーションではなくてモチベーション 宿輪純一のシネマ経済学(38)

2014年04月21日 14時34分 JST | 更新 2014年04月21日 14時42分 JST

『スパイダーマン』シリーズは、マーベル・コミックス(アメコミ)のヒーローの中でも、比較的メジャー映画化が遅い。『スパイダーマン』(2002年)、『スパイダーマン2』(04年)、『スパイダーマン3』(06年)となっていた。これは、スパイダーマンの動きの映像(イメージ)を実現するのに、3Dも含めたCG(コンピュータ・グラフィック)の技術の進歩が必要であったからと考えている。これは『スター・ウォーズ』でも同様な状況にあった。『スター・ウォーズ』は9部作で、最初に4・5・6を製作し、その後1・2・3となって、これから7・8・9となっていく。具体的には『エピソード4/新たなる希望』(77年)、『エピソード5/帝国の逆襲』(80年)、『エピソード6/ジェダイの帰還』(83年)、そして、最初に戻り『エピソード1/ファントム・メナス』(99年)、『エピソード2/クローンの攻撃』(02年)、『エピソード3/シスの復讐』(05年)。この順番も映像技術の進歩が規定したのである。1・2・3のイメージの映像化は77年には無理だったとのことである。(このあと、エピソード7(15年予定)、エピソード8 (17年予定)、エピソード9/未定(19年予定)と続いていく)。

さらに、今回の『アメイジング・スパイダーマン』3部作は、リブート(物語も最初からやり直し)の内容となっており、現在2作目までであるが『アメイジング・スパイダーマン』(12年)、『アメイジング・スパイダーマン2』(14年)となっている。つまり、ストーリーというよりは、日進月歩の映像技術を活用した映像を重視しているのではないか。確かに、本作の今までにない迫力あるイメージは目を奪われる。今回のシリーズは、2002年からのシリーズと比べてもはるかにすごい。最新の革新的な技術が映像を増強していくのである。

「イノベーション(Innovation)」という言葉を「技術改革」と訳すことが多いが、“本来の意味”はそうではない。イノベーションを定義したオーストリア人の経済学者ヨーゼフ・シュンペーターは「新結合」、すなわち違ったものを結合することによって“新しい価値”を生み出していくという意味であった。○○細胞といったような発明・発見の類ではない。たとえば、ミクロのレベルでは、電線のネットワークとガラスとを結合させた光ファイバーなどはそれに当たる。

さらに、ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン先生は、イノベーションにも継続的イノベーションと破壊的イノベーションがあって、後者の方こそ影響力が大きい。しかし、伝統的大企業は破壊的イノベーションについては組織を守るためにしない。その結果として衰弱していくというものである。これを「イノベーションのジレンマ」という。最近では伝統的なフィルム分野を持ったコダックがそうだったのかもしれない。日本全体がイノベーションのジレンマに陥っている可能性もあるのではないか。

日本のアベノミクスの「第3の矢」は成長戦略であるが、先進国の成長戦略は実質的にはイノベーションを梃子にした「構造改革」のことである。しかし、日本はやる気もなく出来ないと海外の投資家などは見ているようである。個人的には、オバマ来日時に締結する可能性がある“TPP”こそ「第4の矢」として構造改革の起爆剤になるとして期待しているが。

最近では、日本はイノベーションというような方法論ではなくて、努力して改革しようとする“やる気”も落ちてきているような気がしているのは筆者だけであろうか。この連載でもたびたび言っているが“気持ち”が大事なのである。

そう、現在の日本に必要なのは「イノベーションではなくて、まず、モチベ-ション(Motivation)」なのではないか。

「宿輪ゼミ」

経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かり易い講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。この2014年4月2日の第155回のゼミで“9年目”に突入しました。
Facebookが活動の中心となっており、以下を確認、ご参加下さい。会員は間もなく6000人になります。
https://www.facebook.com/groups/shukuwaseminar/

Spider-Man Guests UK Premiere